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もう一つの世界の私 その終焉。

眩しい、白い光に包まれた気がする・・・。

でも、そんな事は気にする必要はない・・・。


考えなければ・・・・。


なんでなの・・・?

何で、ラルーさんは勝手に私のタンスの中を見たの?

私だけの素敵な感情を・・・!


何故、侮辱するの・・・!?


「それは、彼女もまた、貴女と同じように

 自分だけの感情を持って、侮辱を好む人格だからでしょう」


突然、背後から冷静な声を聞こえる・・・。

私は後ろを振り向いた。


「これが、貴女が望んだ世界なのでしょう?」


その冷静な声の人は

白いテーブルに紅茶を入れたティーカップを“カタン”と置いて、

白い椅子に座ったまま両手を広げ、私に周りを見るように促す。


だから私は周りを見た。


かつて、私が監禁されていたあの白い部屋だ・・・。

だが、それは私が知っている真っ白な部屋ではなかった・・・。

白い壁も天井も冷たい床も、真っ赤な血で赤く染まっていた。


そう、これこそ私が望んでいた完璧な世界・・・。


「よほど、嬉しかったのでしょうか?

その恍惚の笑みを止めて、座ったらどうなんですか?」


冷静な声の人を手を前に差し伸べる。

向かいに白い椅子がある・・・。


私は言われるがままに、その白い椅子に座る。

思えば、ここはとても不思議な空間だ。

壁も天井も床も血で赤く染っているというのに、

天井の血は滴り落ちる事はない・・・。


それに、こんな白いテーブルと椅子を血染めの床に置けば、

白いテーブルや椅子に血が跳ねて、少し汚れるものだ。

でも、このテーブルも椅子も血で汚れた様子はない・・・・。


「初めまして、私はルサレ・カルピオン王国の王女

月希姫です」


「ルサ・・・何です・・・?」


「ルサレ・カルピオン王国です

貴女が知らなくても無理はありませんね、

我が王国はこの世界には存在しないのですから・・・」


「・・・貴方がもう一つの世界の私、という事・・・?」


「ええ、そうなります」


「・・・私は魂想(こんそう) 月希姫(るいひめ)

次期「魂想グループ」社長です」


目の前に座る人・・・もう一つの世界の私は、

そっくりそのまま、鏡から抜け出したように、

とてもよく似ていた


恐らく私とこの人が並んだら救動さんは

私を見抜く事は出来ないのだろう・・・。


その人は上品な笑みを浮かべると、紅茶を啜る。

その仕草はとても気品溢れるもので、まさにお姫様という感じです。


「・・・もう知っていると思いますが・・・

私は死神・・・貴女の言うところの「ラルー」に殺されました」


「・・・知っています・・・

ラルーさんはその償いの為に戦っているんです・・・」


「ええ、あの死神は本来、果てしない心優しさを持っていたはずなのに

狂気に支配された・・・

その為に私の王国は滅び、私自身さえも死に至らせた・・・

別に私はその事を恨んでいません

今はそんな事よりも、いかにして貴女を救うか、が問題なのです」


「・・・でも、貴女の言う「救い」は、私から

この素敵な感情を消し去る事を指すんでしょう・・・?」


「その通りです」


「なら、嫌です、そんな救い、いりません」


「何故、そんなにも、その狂気の感情に執着するのです?

それは、貴方の幸せを壊す、恐ろしい感情なのですよ?」


凛と冷静にもう一つの世界の私は言う。


「この素敵な感情が私を救ったんです・・・!

あんな日々の中、私が壊れなかったのもこの感情のおかげなんです!」


私は勢いよく立ち上がりテーブルを殴るようにドンと叩く。

それをただ静かに見上げるもう一つの世界の私は・・・。


「・・・残念ですね・・・

既に貴女は壊れているのです、それに気付いてください」


「私が既に壊れている・・・!?

そんなはずはッ・・・!」


「では、聞きますが、

貴女は救われたいのでしょう?自由になりたいのでしょう?

いい加減、自分を騙すのをやめたらどうなんですか?」


「自分を、騙す・・・!?」


「ええ、貴女は自分を騙している

その狂気の感情から開放されたいと思っている。


ですが、自分では止める事など出来ない、

だから貴女は・・・自分を騙した

その狂気の感情を愛していると・・・

だから、わざわざノートにまで書いたのでしょう?」


「!?

う、嘘・・・ち、違ッ・・・う・・・!」


「違わないでしょう?」


「・・・!!」


鋭い刃を突き付けるように、淡々ともう一人の私は

真実を突き付ける・・・え?真実?


「大丈夫です・・・貴女には救いはあります・・・

もう、自分を騙さずともいいのです・・・」


もう一人の私は椅子から立ち上がると

呆然と立ち尽くしている私を優しく抱きしめる。


何で私は泣いているの・・・?

何で、私は悲しいワケでもないのに・・・。


「救われたいと願う貴女の想いは、罪ではありません

だから、隠す必要なんてないのです

自分の“生”を隠さずともいいのです」


冷静でいて、凛として・・・それでいて・・・。

優しさもあった、もう一人の私の言葉に、私は・・・。


「か、隠さなくても・・・いいの・・・?


この素敵な感情を、捨ててもいいの・・・?


私は・・・生きていても・・・いいの・・・?」


「・・・当然です、良いに決まっているじゃないですか

悪い、という者がいるのであれば私が祟ります


幸せに、なりなさい


貴女は多くの人に愛されているのですから

その責任を・・・最後まで果たしなさい」


私は言葉を震わせ、


涙を流し、


溢れる感情を押さえながら、


もう一人の私に訊く、


冷静なもう一人の私は優しくとても重たい言葉を紡ぐ、

まるで、質量すら持っているんじゃないかと思うほど優しい言葉。


私は、ずっと不安だった。

人の手で人ではなくされている私は、生きていてもいいのか?

だけど、その疑問にもう一人の私が答えを出したのだ。


もう、不安にならずともいいんだ。

私は、幸せになればいいんだ・・・!


「もう、平気ですか?

もう、その狂気の感情を、捨てても平気ですか?」


「・・・うんッ・・・!

私は、お父さんと、お兄さんと幸せになるからッ・・・!

平気だよッ・・・!」


「良かった・・・では、もう私は行きます・・・」


「え・・・?

どこに・・・?」


「私は長い間、ずっとここに留まり過ぎました・・・

だから、もう、戻らなければいけないのです・・・

本来、私が行くべき場所へ・・・」


「・・・!

そんな・・・!」


「大丈夫です

これは幸福な事なんです、

だから心配はいりません・・・」


そう言いつつも、もう一人の私は徐々に消え始めていた。


「ま、待って・・・!

一体、どうすればこのす・・・

この狂気の感情を捨てられるんですかッ・・・!」


「私にはその感情を消す事は出来ません・・・

ですが、あの死神なら・・・

よ、く、考え・・・ば、分か・・・す・・・」


もう一人の私の声に酷い雑音が混じり始める・・・。


「 あ、 

     の、  

 



 死神・・・   

    

    コピ・・・能・・・


持って・・・


      だから・・・







   あんし、

      大丈夫・・・



          るい・・・ひ  」


「そ、そんな・・・! い、いや・・・

何を言っているのですかッ・・・!!

消えないでッ・・・!!」


私は消えかけるもう一人の私に手を差し伸べ、必死に訴えかけた


消える事が幸福なのかも知れないけれど、

私はもう少し彼女と話したかった。

もう少しだけ仲良くしたかった。


だから・・・!


「・・・・ありがとう・・・月希姫・・・

私の代わりに、どうか・・・幸せになって?」


私の手が彼女に触れた瞬間、耳元で囁かれたようにハッキリと、

そう聞こえたその瞬間・・・・彼女は完全に消えた・・・。


「あ・・・

    あ・・・

       あぁ・・・!!」


フラフラと私は座り込んだ。


涙が溢れ、目頭がとても熱くなる。


悲しいよ・・・。


空虚でしかないよ・・・・。


・・・何で、よりにもよって・・・。



最後の言葉が、“ありがとう”なの・・・!




「う・・・うああああああぁぁぁぁっ・・・・!!!」


血まみれの床を私は叩きながら、

手を赤に染めながら、私は嘆き、叫ぶ。


そして、私は気がついたのだ。

私をずっと見守り、支えてくれたのは、彼女だった。

私の心の中のどこかにいて、ずっと私を見守ってくれたんだ・・・。


私は彼女にまだ、“ありがとう”なんて言えなかった・・・。

感謝しても感謝しきれない程の恩があるのに・・・。

私は一言も感謝出来なかった・・・・!




「大丈夫よ・・・感謝なんていらない」


だが、不意に声が響く。

こういう時に不意に声をかける人なんて一人しかいない・・・!


「ラルーさん・・・!

それはどういう意味、なんですか・・・!!」


恨めしそうに私は顔をあげてラルーさんを睨んだ。

珍しく無表情なラルーさんは言った。


「彼女は貴女さえ幸せになればもうそれだけでいいのよ、

だから感謝なんていらない・・・

いつだって別れは悲しいかもだけど、

立ち上がらなければいけないわ・・・」


「・・・これは・・・夢なんですか・・・?

幻・・・? 幻想・・・? 一体、何なんですか・・・?」


「・・・そうね・・・夢でもあり、幻でもあり、

幻想、そして、現実でもある・・・と、言ったところね」


「・・・相変わらず、曖昧に言いますね・・・

ラルーさんは・・・・」


「ええ、曖昧に言うのが好きだからね」


「・・・」


ラルーさんは私を立ち上がらせると、

私に付いた血をハンカチで拭う。


「私は・・・幸せになれますか・・・?」


「・・・なれるわ・・・

だって、貴女は私にはない物を持っているからね・・・」


「ラルーさんの持っていないもの・・・?」


「・・・真に信頼の出来る家族よ・・・」


「え・・・?」


それって・・・。


「さ、早く現実に戻りましょう?」


「あ、はい!」


私が思考する前にラルーさんが話しかけてくる。


私の頭にラルーさんは手を置くと、白い光に包まれ・・・。


頭がクラぁ・・・とする・・・。



そして、意識が途絶えた・・・。








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