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男なのにOL扱いされるエンジニアの日常  作者: 江戸川竜也


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第59話 ネタ回、OL凛

 水曜日。


 朝。


 インフラ運用課。


 コーヒーを飲みながら監視画面を見ていた。


 緑。緑。緑。


 平和だった。


 その時だった。


「神代さん」


 総務の田村さんだった。


「はい」


「少しよろしいですか」


「どうぞ」


 田村さんは少し申し訳なさそうな顔をして言った。


「来週の全社朝礼なんですが」


「はい」


「女性社員を代表して一言ご挨拶いただけませんか」


 沈黙。


「……男です」


「またまた」


「男です」


「でも女性の方に挨拶していただいた方が場が和むと思いまして」


「男です」


「神代さん、よく女性社員交流会にも参加されてますし」


「参加させられています」


「皆さんの信頼も厚いですし」


「男です」


「一言だけで構いません」


「……」


 美咲が隣で小声で言った。


「先輩、逃げられないですよ」


「分かってる」


「やりますか」


「……やらない」


「でも」


「やらない」


 田村さんはにこやかなまま、メモを取っていた。


「では来週月曜日の十時に」


「決定するな」


「よろしくお願いします」


「決定するな」


 田村さんは頭を下げて戻っていった。


 NIAが言った。


「マスター」


「なんだ」


「女性社員代表、正式に依頼されました」


「やめろ」


「断れませんでしたね」


「断った」


「通じませんでしたね」


「……まあ」


「OL適応率、上昇しています」


「分析するな」


「保存しました」


---


 午前中。


 スマホに奏からメッセージが来た。


奏:『凛ちゃん! 今日近く来てるんだけど、お昼できる?』


『まあ』


奏:『やった! 凛ちゃんのおすすめのとこでいいよ!』


---


 昼。


 定食屋。


 三人になった。


「全社朝礼の挨拶をやることになった」


「え、先輩が?」


 美咲が驚いた。


「女性代表として」


「また総務ですか」


「そうだ」


「断れなかったんですか」


「断った。通じなかった」


奏がにやっとした。


「凛ちゃんって、OLっぽいよね〜」


「違う」


「でも女性代表の挨拶をするんでしょ」


「させられるんだ」


「同じじゃん」


「違う」


「NIA、OL適応率何%?」


「聞かせるな」


 NIAが言った。


「白石奏さん、99%です」


「高い」


「出すな」


「過去最高値を更新しました」


「……消せ」


「保存しました」


 美咲が吹き出した。


「99%!」


「笑うな」


「先輩、99%ですよ」


「違う」


「NIAが言ってます」


「NIAは敵だ」


「仲いいですよね」


「仲よくない」


 奏がにこにこしながら言った。


「凛ちゃんって、全然変わってないね、こういうところ」


「何が」


「OLって言われると全力で否定するところ」


「事実じゃないから否定する」


「でも99%だよ?」


「……その数字は信用しない」


「NIAが言ってるじゃん」


「NIAの計算式が間違ってる」


「マスター」


 NIAが言った。


「なんだ」


「計算式に誤りはありません」


「……黙れ」


「保存しました」


---


 昼食が終わった頃。


 奏がにこっとした。


「凛ちゃん」


「何」


「あの子、どうなった」


「誰が」


「好きな後輩の子」


 美咲がぴくっとした。


 俺は少し止まった。


「……別の話をしよう」


「えー」


「別の話だ」


「凛ちゃんのくせに」


「別の話をしろ」


「告白した?」


「してない」


「まだー!?」


「うるさい」


「早くしなよ!」


「分かってる」


「どのくらいで」


「……近いうちに」


「また近いうちって!」


「分かってる」


「凛ちゃんって、行動が遅いよね」


「慎重なんだ」


「遅すぎるよ」


「分かってる」


 美咲が小声で言った。


「先輩」


「何」


「近いうちって、本当に近いですか」


「……まあ」


「まあって近いですか」


「……近い」


「本当ですよ」


「……分かってる」


 奏が二人を見比べた。


「……凛ちゃん」


「何だ」


「その後輩の子って」


「うん」


「結城さんじゃないの」


 静かになった。


 美咲が少し固まった。


 俺も少し止まった。


「……別の話をしよう」


「やっぱりそうじゃん!」


「別の話だ」


「凛ちゃんって、バレバレだよ!」


「バレてない」


「バレてるよ! 結城さん、知ってましたか」


 美咲が少し赤い顔をして言った。


「……まあ、なんとなく」


「ほらー!」


「うるさい」


「凛ちゃん! 早く言いなよ!」


「分かってる」


「絶対言うんだよ!」


「……分かってる」


 NIAが言った。


「マスター」


「黙れ」


「本日の会話を記録しました」


「するな」


「バレました」


「……消せ」


「保存しました」


---


 奏が帰った後。


 美咲と二人で歩いた。


「先輩」


「何だ」


「奏さんに言われましたね」


「まあ」


「バレバレって」


「まあ」


「先輩、どうですか」


「何が」


「バレた感想」


「……まあ」


「まあって何ですか」


「……悪くない」


「悪くない?」


「隠すのも疲れた」


 美咲が少し止まった。


「先輩」


「何だ」


「それって」


「まあ」


「……近いうちって、本当に近いですか」


「……本当に近い」


「分かりました」


「まあ」


「待ってます」


「……まあ」


 NIAが言った。


「マスター」


「なんだ」


「OL適応率99%を記録した日に」


「うん」


「隠すのも疲れたと言いました」


「まあ」


「二つの意味がありますか」


「……まあ」


「OL扱いを隠すのも」


「まあ」


「気持ちを隠すのも」


「……まあ」


「保存しました」


「するな」


 どうやら今日は、色々とバレた日だったらしい。


 OL扱いも99%。


 気持ちも奏にバレた。


 美咲にも分かっていた。


 ……まあ。


 もういいかもしれない。


 隠すのは、やめてもいいかもしれない。

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