策束静巡 陸 その3
橋本警察署から徒歩で20分弱、高野山の西側、西南院に着いた。
ここに西の防衛ラインが敷かれている。
待ち受ける他の三ヶ所よりも、ここが一番人数が多い。
わざわざ予告してくるようなEG使いは前回と同じように、また西南院側から来るんじゃないかと言う意見が多かったので人数的に多く配置されている。
到着して現場を仕切ってる唱僧に、波働は挨拶をしに行った。
貫禄ある唱僧。
なんか笑いながら、2人が握手をしている。
――大人挨拶、、、
つまらなそうに聖がそれを見ていた、、、が、視線をスグに変える。
一番後ろから付いて来ていた、まゆらへ、、、。
安倍まゆら。
数々の噂が、彼女を取り巻いて巻いて巻いて~~ってなってる。
聖はその噂と、眼の前の安倍まゆらを比べ始めた。
私服なので百舌鳥ヶ丘の制服はもちろん、神戸っ娘御用達の、踝まであるロングスカートは穿いてない。
――まぁ、そりゃそうやわな
穿いているのは、黒のサルエルパンツ。
アウターの黒いアーミージャケットはジッパーだらけのデザインで、無地のサルエルパンツとの対比がオシャレ。
そして足元にはしっかりやっぱりジャングルブーツ。
――ジャングルブーツは履いとるんやけどなぁ、、、
今は夏でも滅多と外さない、普通の白いマスクも無い。
代りに大きなネックウォーマーを『キシリアかっ!』ってくらいに上げてるので、ほとんど眼しか見えない。
――どんな格好かは噂で知ってるけど、実際顔は知らんからな~
まゆらを表す表現、ボサボサ頭も今日はなんだか後ろでゴム留めして纏まっている。
――エラい小綺麗やん、、、
これはルネが勝手にやったので急にまゆらがオシャレになった訳では無いのだが、後頭部で縦に3つ並んだ団子は結い方も含めて似合っていた。
――う~ん、噂とちゃうやん、、、
“術ヲタ”というイメージと違って、全然もっさ無い。
少し上げた前髪から見えるおでこと、ナチュラルな眉毛のバランスも良いではないかっ!
その下にある綺麗な二重の瞳は、半眼でエモい。
総てを見透かすような雰囲気。
――メチャクチャ綺麗な二重やん? 何やねん、モテ女か?
勝手にまゆらの事を、『コイツはモテ女だ』と決めつけてプンスカし出す。
同い年だけに、無意識ながらも対抗心が出て来たか?
聖、まゆらを見る。
そしたらやっぱりムカつき、何でか、まゆらの事が嫌いになった。
――こんなモテ女が、NG使いでEG使い? ナメんなよ!
とかなんとか、勝手にハラを立てる。
悔しいから、悪口を思い出す。
――そういやぁ、こんなデンタイの噂もあったなぁ、、、
頭の悪そうなおっぱい女と、頭のオカシイ乱射魔と、頭ボサボサの女子高生。
結界内でデンタイの3人娘を揶揄して表す時に、よく使われる表現。
そんな侮辱的容姿批判を浮かべて、、、
楓を見る。
――金髪くるくるパーマは頭悪いかどうかは解らんけど、上着を着てても解かる。確かにパイオツカイデーや
次にルネ。
――あのゴスロリファッションやからって頭オカシイって決めつけるんはどうかと思うけど、色気があり過ぎて吐きそうやわ、、、
最後にまゆら。
――噂と一致するんは、ジャングルブーツしかあらへんなぁ、、、
SNSと同じで、広まった事柄が本当かどうかは疑問の残るところ。
まぁ、でも、、、と、思う。
――術師の匂いは、プンプンしてんなぁ
ヤバい術師だという事は、間違い無いようだ。
考察する聖の前に、湯気が立つ飲み物が差し出された。
「?」
「寒いやろ? 飲み」
鈴木だった。
聖が本気で驚いていた。
驚き過ぎて拒否する事も忘れ、年寄り臭いお節介で差し出されたサーモスの内蓋に注がれた飲み物を受け取っていた。
「コーヒーちゃうで、紅茶。しかもロイヤルミルクティーや。温まるでぇ」
ナゼか自慢気に言ってきた。
――みっちゃんて、肚坐っとんのかアホなんかどっちなんやろ、、、
鈴木の顔を見て固まる聖に、大丈夫やと声かける。
「ノンシュガーや。太らへん」
自慢気にウィンクしてきた。
鈴木、誰もそんなコト気にしてないって、、、。
――、、、みっちゃんwww
今から殺し合いが始まるって言うのに、呑気にロイヤルミルクティーを勧めてくるあたり、、、笑けてくる。
マジなんか天然なんか解らへんトコが、聖に不思議な安堵感を与えていた。
「ようこんなん持ってたな」
言って、口を付けた。
温かいし、確かに美味い。
「外の現場には、水筒が必需品やからな」
「水筒ってw」
「え? 水筒って、水筒やろ?」
「そやなw いちいちカタカナで言うこと無いわなwww」
笑いながら鈴木自慢のロイヤルミルクティーを飲む聖を、今度は反対に用心深く見る楓が居た。




