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karma!! ~水の中のグラジオラス~  作者: 后 陸
水の中のグラジオラス 三の章
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策束静巡 陸 その2

 普段、結界内で暮らしている聖。

 そこで生活すれば、嫌でも耳にする噂がある。


 結界の創始者、速水颯太を倒した使い手。

 NG使いでありながら、EG使いでもある反則級の使い手。

 夏でもマスクと、ジャングルブーツを履いている使い手。


 ソイツが、安倍まゆら。


 ――マジでジャングルブーツや、、、


 ついこの間も、()()サイラーを“壊した”と噂になっている。


 「そして最後に、ソファに座ってらっしゃる2人が波付の術師、伊波(いは)さんご兄弟です」


 先程のひと悶着(もんちゃく)で、駿は大人しいものだ。

 兄の准は、なんとか頭を下げるくらいの挨拶は出来た。


 「へぇ~~。オールスター勢揃いって感じやん」


 両サイドのソファを見比べる楓。

 波働が続けた。


 「で、何よりも先にここで私たちが落ち合ったのは、高野山との取り決めを(かわ)したからです」

 「いつの間に?」

 「知りませんでした? 私、働き者ですよ」


 楓の問いに答えながら、自分の胸をトントン、と叩いた。

 無表情なのに自慢顔。


 「今回皆さんには先に、ミカドの(めい)()()()()依頼が重なったのをお詫びするのと、現場の指揮権、、、と言うか優先順位について伝えなければならない事がありまして」

 「あんたがそう言う物言(ものい)いの時は、大概(たいがい)メンドイ(とき)やんなぁ」


 良く解ってますよねって顔をしながら、楓を見る。


 「そうですね。“メンドイ”ですね」


 溜息(タメいき)、ひとつ。


 「ミカドとか術師協会とかナシで、現場レベルで言うと高野山(ここ)唱僧(ヴェイソン)以外の術師を入れるなんて考えられない事です。しかもオールスターw。言うまでも無く敵対視されてます。ノン歓迎です。でもミカドと協会が絡んでるので拒否できません。そんな現場、間違いなく混乱します」


 波働のセリフに緊張感が増すが、楓は全く気にしない。

 ホントにいつもの口調で聞き返す。


 「どんくらいの混乱、予想してんの?」

 「多分、油断したら()()()()()()()くらいです」


 衝撃的な、波働の言葉。

 なのに、あんまり誰も驚かなかった。

 この程度の話しは、協定を正式に結んでいない術師同士の共同戦線なら“あるある”なので、、、。


 「皆さんは私にとっても術師界に()いても貴重な人材なので、こんな事で失いたくないんですよ」


 ――私にとって皆さんは、平等に大切な“駒”なのでね、、、


 本音と建前(たてまえ)は、絶対に言い間違えない。

 それが、波働慶壱。


 「それで高野山上位(じょうい)の方とお話ししまして、ルールを決めました」

 「どんな?」

 「今から言います」

 「どぞ」


 そう言って、手を差し出す楓。

 波働は笑顔で頷き、話しを続ける。


 「まず襲って来るEG使いを迎え撃つのは、唱僧(ヴェイソン)であること。手出し無用との事ですが、攻撃が自分に向いたと判断した時は反撃してもらって大丈夫です。そこは各々(おのおの)で。でも“トドメ”は勿論(むろん)、唱僧に譲る事。その2つが条件です」

 「なんかオイシイとこだけ頂戴(ちょうだい)って感じやな」


 確かに、、、と同意しつつも、高野山側の心情も説明し出す。

 先日、EG使いに自慢の唱僧を2人も壊された事実を説明。


 「前回の怨みもあるんでしょうね。こちら側は手を貸しても良いし、見物だけして帰って貰っても良いです。ただ、、、これはこちら側だけの話しになりますが、誰がミカドの“密偵”か解らないので、指定された集合場所に一度顔を出してから、となります」


 ここで初めて、楓が驚いた表情(かお)を見せた。


 「おっと! 高野山(ここ)にも居てんの?」

 「居ると考えて動くのが無難(ぶなん)と言う事です」

 「確かに、時代は情報戦やからなぁ」


 敵はEG使いだけではないと、あらためて実感。


 「、、、ま、これが唱僧のエライさんと交わした約束です。高野山(おやま)にすればこれでミカドに対するメンツは立つし、約束を守れば我々も安全に帰れる。このあたりが“折り合い”ってやつじゃないかと」


 そこで一度、波働は全員の顔を見た。

 確認だ。

 ほぼ楓と2人で喋っていたが、内容は伝わってるハズ。

 反対意見は、出ないだろう。


 「イッコ聞いて()え?」


 波働に視線を送って来たのは、聖。


 「どうぞ」

 「見物は、どこで見てても()えんかなぁ?」

 「ええ、構いません。ただ、問題は起こさないでくださいね」


 波働の言葉を聞くと、聖が笑顔を作る。


 「ほんならそろそろ行かんとアカンのんちゃうか? なぁ?」


 横の鈴木に声を掛け、大袈裟に太い革バンドの腕時計を見る。

 波働も自分の腕時計を見た。


 「もうすぐ午前0時。確かに予告時間ですね。それでは(みんな)で、西南院の集合場所まで一緒に行きますか」


 波働の言葉に、ソファに座っていた4人が互いに油断なく立ち上がる。

 ふと、聖が視線を気になる方へ向けた。


 そこには、ルネ。


 入って来てからずっと同じ恰好(ポーズ)で腕組みして立ってるのだが、よく見るといつの間にか右手にベレッタを握っていた。


 ――いつ? 怖っ


 背後の2人には常に警戒していたつもりだが、どうやら()()()()()()()()()だ。


 「ささ、皆さん行きましょう行きましょう」

 「うん。行こ行こ」


 波働の言葉に、楓だけが笑顔で答えていた。



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