策束静巡 伍 その6
波付の3人がそう思った時、鈴木の後ろから小さな影が現れる。
――お、さすが
コッチが展開してる方だと気付いたのは波働だけ。
波付の3人は、鋲だらけの派手な革ジャンと革パンを着こなしたパンキッシュガールの登場に、単純に驚く。
鈴木に向けられていた念が、ブレる。
登場した少女を見て、もう一度驚く。
ピアスだらけの顔。
なのにどこか3人を睨む顔と服装が、とってもアンバランス。
ハードな格好をしているが、どう見ても幼い。
特に波川みたいに他人を小バカにするタイプには、子供が無理にツッパってる様にしか見えなかった。
幼さが溢れ出てるのに、精一杯のシカメっ面で3人を睨んで来る。
それが反対に、園児が大人を睨みつけているようで笑ってしまう。
いくら睨んでも、どんなに顔中のピアスが揺れようと、その可愛い過ぎる元の顔を隠しきれてない。
そんな少女の登場に、本気で相手にしてよいのかどうか迷う。
動いたのは波川。
ニヤ付いてソファから立ち上がり、歩み寄る。
扉の前に並び立つ、鈴木と少女を威嚇するように、、、。
――あ、コレまずいな、、、
止めようかどうしようか、迷う波働。
立ち上がった波川の頭には、先程の会話の中に出てきた『女子高生』と言うワードが残ってしまい、眼の前の少女にリンク。
見た目から波川の脳内で起った思考は、『幼いのに大人に見せようと頑張ってる子供』となり、『術師』という概念が失念してしまった。
要は、小バカにし始めた。
鈴木を見て、更に確信する。
2人揃って、革ジャン姿。
この頭の悪そうな少女を連れてる童子なんて、冠位を貰ってイキってる大した事無いヤツ、と結論付けた。
波川、絶賛勘違い中。
――まぁ、波川さんレベルの使い手、死んでもしょーがないか、、、
波働は止めるのを止めた。
向かいに座る准が立ち上がる動きを見せたが、波働はそれを手の動きで制止した。
死んでもしょーがないと言っても、本当に死なれては困る。
でも、モメて呪包童子が力を発揮するのを見たい気もする。
――死ぬ手前で止めれば良いか、、、
波働、意外とノンキな思考。
そうと決めたら、波川の“チンピラ行動”を見守ることにした。
その波川、期待通りのオラオラ状態で2人の前に立つ。
鈴木を見上げる。
少女を見下す。
いやらしい顔で、オラオラしながら何度も2人の顔を交互に見る。
「何やナンヤ? 最近の童子さまってのは、“パンパン”も連れて現場に来るんか?」
言った瞬間、波川の左脛から、もの凄い音がした。
權ッ!
強烈な痛み。
耐えられず、脛を抱くように蹲る波川。
――速い!
「荒籬」
良く聞こえないが、何か言った。
多分、呪包の呪詛だろうと波働は思った。
でも、室内の空気感が乱れてない。
経験上、これは、、、
――、、、もう完成? さすが童子
波働、驚いて感動。
約1年前に見た時とは、雲泥の差。
「ワ、、レ??、、、ん!?」
波川、得意の『ワレ、コラ!』が言えなかった。
言いながら立ち上がろうとしたが、背と後頭部に硬いものが当たったからだ。
おかげで、また蹲った姿勢。
「何や、、、?」
今度は確かめるようにゆっくり立とうとしたが、やはり背に硬いものが当たる。
何が有るんだ? と手を動かそうとしたら、今度は肘が何かに当たった。
「な、ん、、、?」
巖ッ!!
全員が驚いた。
鈴木も含めて、、、。
音が出るほどの勢いで、少女が足を波川の頭に降ろしたのだが、そのブーツを履いた足が、宙で止まっている。
波川には触れていない。
なのに、少女はその足にしっかり体重を掛けていた。
それはナニカに、片足を乗っけるポーズだ。
そう、そこに透明な箱が在るように、、、。
そしてその透明な箱の中には、波川が入っている。
「ななな、何やこれ?! おいコラ! 何しとんねん! 出さんかコラ!」
喚き出す波川。
性格か、虚勢か、お願いはしない。
少女が体重を掛けていた足の膝に自分の肘を乗せ、覗き込むような姿勢で蹲る波川を見下ろした。
、、、見下した。
その口から、呪詛が、、、。
「シホウハッポウアマネクチカラヲシルモノカラシラヌ、、、」
今は敢えて聞こえるように、呪詛を重ねた。
「イマシメ ヨウ イマシメ サァ ソウアツソウアツソウアツ、、、」
思わず波働、立ち上がる。
「あ! それやり過ぎです!」
今の呪詛で何の呪包なのか理解した波働が、マジで焦る。
普段見れない“慌てる波働”が、少女を見た。
少女も波働を見、嗤う。
「“減容”、、、!」
唱えきった。
術式公式の展開が、完成。
巖ッ!
見えない箱を、思い切り蹴る。
巖巖ッ!!
見えない箱を、蹴る蹴る。
「う、、、ぐぅ、、、?!」
喚いていた波川の声が、呻きに変わる。
首と腕が、窮屈そうにどんどん身体の方へ、、、。
「、、ぐぅ、、、ワ、、レぇ、、、何、を、、???」
巖ッ!!
また蹴った。
「、、、、ぁ、あ、、、?!?!?!」
苦しみを絞り出す、波川の声。
見ると、波川の身体が見えない透明な壁に押され、小さくされてるのが解かる。
それは背、肩、尻の部分が、平らなモノで抑え込まれてる形にヘコんでるのが見えたから、、、。
現れた少女こそが、呪包童子。
コレは、その童子が展開する呪術。
伊波兄弟の兄、准は確信する。
コレが、呪包の結界術、、、!!




