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カ・ル・マ! ~水の中のグラジオラス~  作者: 后 陸
水の中のグラジオラス 三の章
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策束静巡 伍 その7

 詳しくは解らないが、見えない“物理結界”の中に波川は閉じ込められている。

 言うなら、、、透明な箱。

 准がパンキッシュガールの術式を自分なりに解析し始める。


 ――四角いけど、イメージは棺桶(かんおけ)か、、、


 そしてそれを少女が蹴ると、透明な棺桶は()()()()()

 めちゃくちゃヤベー術式。

 先程波働が、一瞬取り乱したのを思い出した。


 ――マジでヤベーやつやなコレ


 (ガン)ッ!


 また、蹴った。


 「、、、がっ、か、、っ、、、」


 (うめ)く波川。

 四方から()されて、、、失礼。

 前後左右プラス上下方向からも()されて、体を無理矢理小さくさせられる。


 圧迫、、、?

 圧縮だ。


 「、がっ、、あ、、、ぁ、、」


 人間が、四角く圧縮されていく、、、。

 間違いなく、自分の立てた仮説は当たっていると准は確信した。

 確信して、思う。


 このままだと、波川は死ぬ。


 そうなんだが、人情的に止めるべきなのだが、、、。

 だがその光景を目の当たりにして、()()()()


 巖ッ!!


 パンキッシュガールが、透明な箱を蹴った。


 墲禽(ボキン)、、、。


 乾いた音が、部屋に響く。

 変なポーズで身体に密着してしまった波川の肘が、自分の肋骨(ろっこつ)を折る音だ。


 吐血。

 波川の吐いた血が床に触れず、()()()()である少し浮いた空間に流れる。


 ――マジで殺す気?


 准、ビビる。

 波働は、さすがに(あせ)り始めた。

 さっきは波川の事を『死んでもしょーがないか』なんて半分ふざけて思ったが、実際眼の前で、マジで殺されるとなるとシャレにもならない。


 「そこまでです! それ以上は、もう、、、!!」


 波働がそう言った時、駿も止めようと()()()()へ動いていた。


 「いや、違う」


 この状態で、まだ鈴木が呪包童子だと思い込んでる弟に、冷静な兄のツッコミ。

 熱くなって動き出した駿に、准の声が届かなかった。


 「おいちょっと待ったれやコラ!」


 駿は駿で、何が起こってるのかは理解できてない。

 でも、キライなヤツとはいえ間違いなく何かをされてヤバい状況なのは解かる。


 止めないと、もっとヤバくなると感じている。

 止めたい。


 正義感が、鈴木に向かう。

 胸倉(むなぐら)(つか)みに行った。

 その時、今度はハッキリ聞こえる准の大きな声が届いた。


 「逃げろ!」


 声に驚き、准の方を振り返った。


 「え?」

 「アホ! ()()()や!」

 「え??」


 そこでやっと鈴木じゃなく、顔面ピアスのパンキッシュガールを見た。


 「?」


 揺れている?

 波のよう、、、。

 眼の前の景色が、ゆらゆらと(にじ)んで揺れていた。


 駿は近過ぎて認識できなかったが、顔のすぐ前にシャボン玉。

 頬に触れた。

 冷たい。

 割れない。


 汰雰(たぷん)、、、。


 「??」


 冷たさが広がる。

 頬に触れた面積が広がって行く。


 汰付雰(たぷぷん)、、、。


 「???」


 何だナンダと思ううちに、()()()()()()()()()()()

 顔だけ、、、。


 「な、なんや、、ねん、、、??」


 両手を顔へ、、、。

 硬い感触。


 「(なん)や?!」


 しかし、内側からの視覚では、首を振れば、ゆらゆら揺れるシャボン玉のよう。

 室内の微風にも揺らされ今にもフワフワ割れそうなのに、手で触ると硬質ガラスの感覚。

 理解できないと、人は恐怖する。


 「コレ何やねん!!??」


 怒迦(ドカ)ッ!


 (いか)ついブーツで蹴られた。

 正面蹴りを喰らった駿の身体は、()しくもソファに座る恰好(かっこう)となった。


 ぼよよ~んと駿の顔を(おお)うシャボン玉は(ゆが)んで揺れるが、割れない。

 揺れてるうちに何とか! って思って両手で触ると、硬い。


 意味が解らない。


 横に座る、兄を見る。

 その首を振る動作だけで、ポヨンとシャボン玉は揺れる。

 でも割れない。

 触ると硬い。


 「兄ちゃん、、、何コレ、、、??」


 駿の、(すが)るような眼、、、。

 准は兄として助けてやりたかったが、助けられない。


 助けようにも、()()()()のだ。


 駿よりも判断が早く、行動も早い准が、何故(ナゼ)何も出来ずに居たのか?

 それは動こうとしたあの時すでに、准の眼の前に()()があったから。


 錚槍(そうそう)状態の、水属性の()(たま)


 それは准の喉元に、キッチリ照準を合わせていた。

 顔面ピアスの少女は、鳴り珠を自分から離れた位置に見事に固定しているのだ。

 見た瞬間、思った。


 ――オレには、出来ひん、、、


 しかも観た事が無いほど透明度が高く、二重構造。

 それは術の高等さを物語っている。


 ――めちゃくちゃキレイやんけ、、、


 こんなモノを眼の前に固定されては、()()()のと同じだ。

 コレが、童子(クラス)の創る鳴り珠。


 「な、なぁ兄ちゃん、、、コレ取って、、、」


 掛けられた術式、顔全体を覆ったシャボン玉を取ってと言われても、公式すら知らない。

 弟に泣き付かれても、准は(あきら)めの笑顔を向ける事しか出来なかった。


 「兄ちゃん、、、なぁ兄ちゃん、って、、、」


 駿の声が、消え入りそうに細くなる。


 巖ッ!!


 蹴った、、、。

 波川が入った透明な四角い棺桶を、また蹴った。


 侮痴(ブチ)、、、。


 顔面ピアスの少女が蹴ると、小さくなる棺桶。

 その透明な棺桶の中から、変な音が、、、。


 忌痴(ゴチ)、、、。


 何か硬いものが千切れる音と、折れる音。


 「、、、ぅ、う゛、、、」


 もう、波川の叫び声も聞こえない。

 異様な光景に、駿も声を出すのを忘れていた。



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