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カ・ル・マ! ~水の中のグラジオラス~  作者: 后 陸
水の中のグラジオラス 三の章
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策束静巡 伍 その4

 波働はしっかりお茶を飲んだ。

 渋すぎて不味(まず)い。


 鉄仮面(無表情)の波働が『うわ~~~』って顔をして、たっぷり“間”を取った。


 「さっき言い掛けましたが、ミカドの(めい)で来るのが上水流家の当主の予定だったんですが、代替わりでまだ落ち着いていないらしく、さらに別件に手を付けたところだったので大阪を離れられないそうです」


 ふんぞり返る波川。


 「それは難儀(なんぎ)やのぉ、、、」


 なにが難儀なのかは、解らない。


 「とか言いながらミカドの(めい)って事なので、代りの者を来させるようです」

 「代りって、当主が来ぇへんねんやったら、それ以下の術師が来たって、、、」


 聞いたのは駿。

 ミカドの命やのに、断るんか? って感じで、半分呆れて言っていた。


 「そこは上水流家、さすが四術宗家と言うべきか、それなりの術師を送り込んで来るみたいですよ」

 「ほ~~。有名な術師でも来るんかいな?」


 今度は波川が聞いていた。

 波働は、、、素直に答えない。

 何も言わず、質問した波川を見てる。

 これが糸がよく言う、“波働タメ”だ。


 「勿体(もったい)ぶんなや! 聞いとんやろがい?!」


 波働タメを喰らったら、波川でなくともイラついて大きな声を出してしまう。

 『しょーがないな』ってな感じで、波働がポツリと言う。


 「当主の代りですよ? 来るのはもちろん、“童子”です」

 「な、、、?!」


 声を出したのは波川だったが、伊波兄弟も波働の言葉に驚きを隠せなかった。


 「ワレ今、童子()うたか?」

 「はい。言いました。ついでに、何童子か聞きたいですか?」


 出ました。波働の作り笑顔。

 頷く波川。

 聞き逃すまいと視線を送る、伊波兄弟。


 「呪包(じゅほう)童子です」


 ほほ~~と、渋いお茶を飲む波川。

 反対にあまりピンと来ず、キョトン顔の弟と、お茶よりも渋い顔になる兄。


 流派が違っても四術宗家は超有名で知ってるし、対抗する四つの御門家も知ってる。

 そして何故か共通の術師の階級、“童子”ってのも知ってる。


 これは両方の派閥が、認めざるを得ない力量(りきりょう)に達した者に与えられる称号(しょうごう)と理解している准。

 となれば、来るのは間違いなく強いヤツ。


 「正直なところ私も()()見ては無いのでどれほどの使い手なのかは解りませんが、童子って時点でそれなりの実力はあると解釈して良いんじゃんないかと思います」


 全員、『だろうな』と思った。


 「あ、それと宗興寺の術師も一人、付き添いで来るそうです」

 「おぅ波働、そいつ()強いんか?」


 どうやら波川にとって、童子は強いって単純な認識らしい。


 「付き添いの方の情報は無いので、解りません」

 「、、、んやそれ! ワレ仕切り役ちゃうんかい?」

 「そうなんですが、元々四術宗家と波働家もそんなに仲が良くないですしね」


 一瞬驚いた表情(かお)をし、次の瞬間、大袈裟に笑う波川。

 笑いながらポンポン波働の背中を叩く。


 ――痛いんですけど、、、


 「(ニィ)ちゃん中々(なかなか)オモロいなぁ~。気に入ったで!」

 「声、大きいですって、、、」


 そういった態度に、ムカつく駿。

 准は、我関せず、、、。


 「で、もうひとつ、、、」

 「次は何で笑かしてくれんねや?」

 「普段は結界内が管轄の、デンタイが参加します」

 「、、、デンタイ?」


 笑うどころか、波川の顔が真顔になる。

 駿は波働の言葉に、素直に思った事を口に出していた。


 「波働さん、今回、波付(うち)とか術師の寺系、ほんで警察(デンタイ)って、、、こんな集まって来るっちゅうんは、そんだけ相手のEG使いが強いって事なんスか?」


 これは確かに、持って当たり前の疑問だった。


 「う~ん。細かく話すと長いし言っちゃいけない事もあるんで全部は言えませんが、(わか)(やす)く言うと『発注が重なってしまった』って事です。互いに気を使った結果、こうなっちゃったみたいな、、、」


 ――苦しいか?


 自分で言いながら、『どんな理由?』って思った。


 「ま、そんなことも有るわな」


 どうやら波川は、納得。

 が、正面に座る准が、ゆっくり聞いて来た。


 「そういう波働さんも、警察の人間ですやん。デンタイは止めれたんちゃいますん?」


 イカツイ風貌(ふうぼう)とは違って、中々(なかなか)気の()いた返しをしてくる兄、准。


 「そうなんですけどね。これがまた組織ってヤツの、メンドクサイところでして、、、」


 ――答えてないけど、これで誤魔化せた?


 得意の笑顔で、今度は准を見た。


 「ふ~~ん、、、」


 ――あ、これ、納得してないな、、、話題を変えよう


 早々に話題を戻す波働。


 「で、ですね、デンタイから来る3人の女性なんですが、、、」


 一番早く反応したのは、波川。


 「なんやと? (スケ)かい? ()()()()()大丈夫なんかい?」


 前に座る伊波兄弟は、オッサンの発言に呆れる。

 大袈裟に呆れる。

 それでも意に返さない、波川の“オッサン(りょく)”。


 「(スケ)の術師やって、ワシあんま信用出来ひんな~」


 誰に言うでも無く、天上を見て声に出していた。


 「そんな事ないですよ。身内だからと言う訳では無いですが、デンタイの3人は3人とも、かなりの使い手ですよ」


 自信を持って言い放った波働に、准は興味を惹かれた。



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