表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カ・ル・マ! ~水の中のグラジオラス~  作者: 后 陸
水の中のグラジオラス 三の章
66/71

策束静巡 伍 その3

 部屋には波働と、“波付(なみつき)”の3人が残っていた。


 波川は席を移動して波働の横、初めに背広の警察官が座っていた1人掛けのソファに腰を降ろしていた。


 「波働さん。ほんでこの後、誰が()んねんやったっけ?」


 話し掛けたのは3人掛けのに座る2人組、伊波(いは)兄弟の弟、ダウンを脱いでスウェット姿になった駿(しゅん)


 「ミカドの(めい)で参加する、上水流(かみずる)家の、、、」

 「上水流ぅて、アタマ()()()んちゃうんけ? ワシャそう聞いとんど?」


 波働が言い終わる前に、(かぶ)せて聞いて来たのは波川。


 「飛びましたよ。でも今息子さんがしっかり()いで、、、」

 「息子かいな。ボンボンか? ちゃんと術は構築出来んねんやろな。出来ひんねんやったらワシが教えたろかいな」


 また波働が言い終わる前に言葉を被せて来る波川。

 しかも言いながら、ニヤニヤしてるのがイヤらしい。


 「いや、来ませんよ」

 「は? ほんだら今(なん)で息子の話ししとんや?!」


 他人(ひと)の話しを聞かない人にありがちな反応。

 勝手に解釈して、自分の思ってた事と違ったら勝手に怒り出す。

 そんな波川を見て、伊波(いは)兄弟が鬱陶(うっとう)しそうな顔をする。


 「声大きいですよ。横に居るんだからそんなに声出さなくても聞こえますって」


 波働の冷静なツッコミが、波川の気に(さわ)る。


 「こりゃ地声や! っちゅうかお前がワシに息子の話しをしとんがな!」

 「来るとは一言(ひとこと)も言ってませんよ」


 (あき)れても、冷静な口調を崩さない波働。

 エラい。


 「ほなら(なん)で息子の名前が出てきたんや?」

 「私、話してる途中だったんですが、、、説明の途中で出てきただけですよ」

 「なんじゃわりゃ?!」


 (ゴン)


 伊波兄弟の兄、(じゅん)が、テーブルの上に片足を上げた。


 「なんやお前、、、!?」


 波川が立ち上がり、テーブルを挟んで准を睨む。

 准は、、、ワークブーツをテーブルの上に乗せたまま、視線は合わせない。

 兄を睨む波川に対し、弟の駿が答える。


 「人の話しは、最後まで黙って聞けや。しょーもない事でキャンキャン吠えんなオッサン。(ソコ)知れんぞコラ、、、」

 「(なん)やワレ、小僧が生意気な口()くのぉ、、、」

 「誰が小僧じゃコラ!!」


 駿も立ち上がり、テーブルを挟んで互いに顔を近づけ合った。


 ――ったく、、、だから人選はこっちでって言ったのに、、、


 准が座ったまま、弟のスウェットを引っ張った。

 力でソファに座らされる。

 何で? って顔で兄を見る駿。

 それを見て、間を開けずに波働が話し始める。


 「ここで一番の大人は、准さんかも知れませんね~。判断が的確で早い」

 「どういう意味や? ワシが子供(ガキ)や言うんかワレ?」

 「まさか。とんでもない。でも、ここで念を使うのは勿体(もったい)ないって事です」

 「もったいない~?」

 「だってそうでしょ? やって来る敵は、わざわざ襲ってくる日付と時間を予告してるんですよ。よっぽどの自信です。そして準備万端なんでしょう」


 波働の言う通り、ユキオンナは自分が高野山を襲う日時を指定してきた。

 撹乱の意味もあるが、これは高野山、、、いや、自分以外の術者に対し、よっぽどの自信がある証拠。


 「準備万端には、こっちは準備()()で立ち向かいましょうよ」


 “間”と話術で、波働が崩れかけたこの場を仕切り始めた。


 「今使っちゃうと勿体(もったい)ないですよ。波川さんは例のEG使いに対抗するために呼ばれた術者なのに、ここで念の無駄使いは」


 そう言った波働の言葉に、波川の表情(かお)がみるみる上機嫌になる。


 「おぅおぅ、そやのぉ! 無駄使いっちゅうんは、もったいないのぉ!」


 そう言って、顔を前に出しながら順番に駿と准を、()めるように見る。

 カチンと来て立ち上がろうとする駿を、兄は冷静に止める。

 波川のニヤニヤが止まらない。


 「ほならワシは、ちょっと小便(しょんべん)してくるわ。それまで話し、ちょっと待っといて」


 波働の言葉と文句が返って来ない状況に、上機嫌になった波川が出て行った。


 「何やねん。何で止めんねん?」


 駿が兄に愚痴(ぐち)る。

 波働が見ていると、准と眼が合った。

 小さく礼をする。

 構わないと、右手を出す准。

 その右手を下ろすと、グッ、、、と体重を前に掛けて座り直し、波働を改めて見る。


 「アイツ、“仕事中の事故”で死んでも()えヤツか?」

 「?!」


 驚きと、喜びの表情が湧いて来る駿。

 やはり兄は、弟の期待に応えてくれるのだと(ほほ)(ゆる)む。


 「そうですね。例の氷結系のEG使いを捕まえた後なら、私は関知しません」

 「おぉ!?」


 波働の返答に、またまたテンションが上がる駿。

 准は冷静。


 「捕まえたら? EG使い、、、確保する気ぃか?」

 「公安ですから」

 「アブナイな」

 「解ってますよ。だから、やむを得ない場合は、、、」


 そこまで言った時、准の視線が、スッと下を向いた。

 波働も、話すのを止める。

 後ろで扉が開いた。


 「いや~悪ぃ悪ぃ。スッキリしたわ。ほんだら、話しの続きと行こうかのぉ」


 むっつり顔に戻った弟の前に、上機嫌の波川が大股を広げて座った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ