表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カ・ル・マ! ~水の中のグラジオラス~  作者: 后 陸
水の中のグラジオラス 三の章
61/72

策束静巡 肆 その5

 表玄関から裏口に行く途中、貴照は二ノ宮さんから屋上の霊体の術式について聞いていた。


 怨搔集念珠(おんそうしふねんじゅ)


 範囲内の想念を吸い上げ、()り、負の感情に変えていく術式。

 応用として近付いて来た“波長の合った”人間に、変換した“(いん)の想念”を植え付ける。

 種類としては、伝達系の術式。


 ここで言う範囲内とは、この念珠を創った術師、能力者が決めた“術が発動する場所”を言う。

 今回で言えば、余文楽(ユゥ・ウェイイェイ)の自社ビル全体を指す。


 悪霊を創ったヤツがビル一棟を範囲にしたのは、単純にイメージしやすいからだろう。

 ビルの内側に入れば、術が発動する。

 掛ける方も掛けられる方も、そういう“境界線”があった方が解り(やす)いからだ。


 念のために言えば、これは結界(術)ではない。

 陣地、領域(テリトリー)の感覚に近い。

 術式の完成度が上がれば、その範囲は自然と広がって行く。


 そしてここで言う“波長の合った”人間とは、怒りの感情が出やすい人とか、元々怒りの感情が反応しやすい人。


 心理的に、“負の感情”を持つ人。

 そして負の感情にも、陰陽の二面性がある。


 陽の負、、、。

 噂話し、他人(ひと)の悪口が好き。

 嫌いな人とでも笑顔で話せる。

 意外と仕事は出来るがすぐに他人を見下(みくだ)し、自分のやり方がいちばん正しいと思い込む。

 みんなの意見を代弁してるようで、自分の意見を押し付ける。

 話し合いの場で、意見を曲げない。

 声が大きい。


 陰の負、、、。

 常に周りを(うかが)い、多数に従うフリをするが実際は動かない。

 その場で言いたい事を言わず、後で文句を言う。

 自分は言わないが、悪口を誘導して代弁させるのが上手い。

 必要以上に自分を卑下(ひげ)し、『私が悪い』と言って場を取り(つくろ)おうとする。


 そんな人間が余の自社ビルに入って来ると、怨搔集念珠で練りに練った怨怒(えんど)の感情が波動で繋がる。

 すると意味も無く怒りが湧き始め、本人も制御が()かなくなる。


 何で怒ってるのか?

 何に対して怒ってるのか?


 自分でも解らない。

 解らないが、とにかくイライラする。


 抑えられない。

 自分で自分の感情が、理解できなくなる。

 感情が、暴れる。


 他人(ひと)を見るだけで、ソイツが気に入らなくなる。

 眼が合うと見下された感情に(さいな)まれ、暴言と暴力でしか表現できなくなる。


 沈んだ気持ちは波動を(よど)ませ、念珠とのシンクロ率が高くなる。

 シンクロ率が高くなるということは、波動が低くなるということ。


 じゃあ、他人(ひと)が居なければ良いのでは?

 いやいや、、、。

 眼の前に他人が居なくとも、脳内にハラの立つ人物や出来事が浮かび上がる。

 勝手に浮かび上がる。

 どうしても怒りの感情が、脳を刺激する。


 そうすると、対人感情が物に向く。

 “物に当たる”、、、ってやつだ。


 破壊衝動に突き動かされて、とにかく何か視界に入った物を壊したくなる。

 なんでもかんでも壊したくなる。

 面白いもので、そういう時でも“壊せる物”を選んで壊す。

 自分の力で壊せる物を、()()()()()()()()()投げたり叩いたりして壊す。


 人格が破綻していっても、脳は冷静。

 怨搔集念珠から放たれる波動に、きっちりバッチリ合わせて行動する。


 ()()()()()()()()()、、、。

 、、、というのが、大まかなモノらしい。


 フレンチレストランで聞いた余文楽(ユゥ・ウェイイェイ)からの話しを思い出すと、屋上の念珠がその影響を及ぼすのが、深夜2時を過ぎたあたりから。

 ペアで勤務に()く警備員。

 ある日、どちらかというと感受性の強い男が、先輩警備員にやたらと文句を言ってケンカになる騒動があった。

 たまたま藤堂がその話を聞きつけ、報告。


 翌日には、、、

 “占い師”の助言と、余文楽の機転。

 この二つの要素が噛み合い早期に対処したおかげで、まだ大事(おおごと)にはなってない。


 今は()()、いちばん“陰”の術式が発動しやすい時間帯だけで済んでいる。

 それはこの術式が、まだ始動し始めたばかりだという事を示唆(しさ)していた。


 術の完成度が増せば増すほど効果の範囲と時間が伸び、最終的には24時間、完全に念珠の支配下に置かれる。

 救いは、、、まだまだ未完成なところ。

 被害は、深夜2時頃、このビル内に居る者、、、となる。


 今のところ犠牲者はビルの警備員だけで済んでいるので、外部には漏れていない。

 この事が解ってから警備員に通達し、深夜1時から3時までは仮眠時間に当てるようにさせている。

 なので、被害は最小限。


 ちなみに、、、

 何で余文楽がこの霊現象に対して早々(そうそう)に対処できたかと言うと、昔から何をするにも占い師の意見を尊重するタイプの経営者だったので、日本に来た時もナケナシのお金で占い師に観て貰っていた。

 その占い師は、(のち)に余文楽お抱えの占い師となる。

 またその占い師が少しだけ“観える人”だったので、藤堂から報告があった時、屋上に突然現れた悪霊に気付いて早期発見に繋がった。


 霊の存在を知らされた余文楽は占い師の伝手(つて)を使い、“攻勢(こうせい)”の呪術師を探して貰った。

 辿り着いたのが、四術宗家の一角である上水流家だったってのが、今までの流れ、、、。


 現在午後11時。

 現象が起こるまで3時間ほどある計算だが、思ってたよりも()()

 術式構築は、結構緻密に計算されて組上げたようだ。


 ――EG使いのクセに、、、!


 貴照、上から目線。

 思ったよりも、手強い相手かも知れない。


 ――二ノ宮さんの言った通り、“9”に近いのかも、、、


 それを裏付けるよう、屋上の霊体はここ最近昼間でも()()()()()()観える時があるらしく、社内で少し噂に成り掛けていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ