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karma!! ~水の中のグラジオラス~  作者: 后 陸
水の中のグラジオラス 三の章
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策束静巡 肆 その4

 再び屋上を見上げる貴照の背中に、車の走り去る音が遠ざかっていく。


 「どうやろ、僕、(はら)えると思う?」


 貴照が、隣の二ノ宮さんに聞いていた。


 「う~ん、めっちゃ微妙ですね。正直、門跡の力は日によってコロコロ変わりますし、、、」

 「え~~、ちょっとショックやねんけど」


 自分の能力にムラがあるのを指摘され、貴照ヘコむ。

 気にせず、二ノ宮さんがいつもの“お約束”をフッてくる。


 「それより、確認しましょか?」

 「そやな~~」


 確認。


 これは2人が観ている霊体が、同じものなのかを照らし合わせる作業のこと。

 なんで同じモノを観ているのに、確認が要るのか?


 それは霊という存在の特徴が意味している。

 霊体は、観る者によって(かたち)が変わるからだ。


 霊というエネルギー体は、受け取り側のエネルギーと反応してその時々で容姿(かたち)を変える。

 観る人間の心情、体調、それに知識や経験、感受性によって同じものを観ても全く違った印象の“モノ”に変化するという特徴を持ている。


 特にまだ“我”が確立されていない霊ともなると、初めに観た人間が怖いと思えばその波動がエネルギーとして伝わり、霊は自分は怖い存在なのだと“我”を持ち始める。


 それが積み重なれば重なるほど“らしさ”となって、自他ともに印象が性質までもを決めていく。

 この現象を使い、霊を飼いならしていく術師も居る。


 「女性」

 「うん女性」

 「髪は?」

 「黒色、長髪」

 「服装は、、、」

 「白のワンピ」

 「、、、白の長襦袢(ながじゅばん)

 「それ、着物ってこと?」

 「まぁまぁ、ほぼ同じやさかい、気にせんとこか」

 「何かテキトーw」


 観た霊体に、誤差はほとんど無いと二ノ宮さんは判断した。

 そして、ここからもう一歩踏み込む。

 っていうか、こっからが本題。


 同じモノを観て、互いの印象を確認する作業。

 この作業重要。


 例を上げれば、蝶々を見て美しいと思う者と、気持ち悪いと言う者。

 犬を見て可愛いと思う者と、怖いと怯える者。

 そんな風に、同じモノを見ても違う印象が人に生まれる。


 2人の観ている霊体を、片方は簡単に祓えると思い、もう片方は一筋縄ではいかないと思う。

 このような考えの相違(そうい)があると、ツーマンセルである2人の行動に差異が出て戦闘時に混乱を招き、そこを霊に突かれて痛手を負う。


 、、、なんて事が起こりかねない。

 そこの、()り合わせだ。


 「門跡、ほなら行きまっせ。せ~のっ、、、」


 2人はいつもやる。

 観ている霊体の強さを、10段階で評価する。

 自分が感じた強さを、共有するための作業。


 「6」

 「8」


 ほぼ同時に互いに言う。


 「6でっか。どっち寄りの?」

 「5でも7でもない、ホンマ6って感じ」

 「いやいや。私の見立てでは、9でも良えくらいの8でっせ」

 「そんなに? 、、、かな、、、?」


 貴照の答えに、二ノ宮さんが顔を曇らせる。

 ってか、あきれて鼻から大きな息が漏れた。


 「最近の門跡は、ちょっとナメ過ぎでんな。たまたま上手い事いってる時期なだけやと思いますよ。しまいに足元(すく)われまっせ」

 「へいへい」


 改めて、余文楽が悪霊と言った霊体を観る。

 黒髪長髪。

 白の、、、


 ――あ?!


 貴照の、霊体に対する観た目の印象が変わった。

 話してるうちに、二ノ宮さん()()のイメージが脳に付いたみたいだ。

 貴照の眼に映る霊体は、白い浴衣? らしきものを羽織ってた。


 そして気付いた、、、。


 霊体である女性は確かに強烈な存在感を出しているが、それだけじゃなかった。

 女性の後ろで渦巻く黒い(かたま)り。

 霊体のイメージがそう観せていると思っていたら、女性の霊体とは別物だ。


 ――霊体が、2つか、、、


 そう考えれば、二ノ宮さんの言った事も理解できる。

 2つ合わせて観れば、9寄りの8ってトコだ。

 とにかく気になるのは、女性の霊体の頭上で渦を巻く念の塊り。


 「あれ、何やと思います?」

 「(なん)か昔むか~~しに観た事あるんやけど。仮に同じのんやったとしたら、怨搔集念珠(おんそうしふねんじゅ)って言うややこしい旧式の外法(げほう)でんな」


 二ノ宮さんは“外法”と言う言葉を、ちょっと強調していた。


 「見た目『悪霊が取り憑いた!』って感じになっとりますけど、()()はアッチでっしゃろな」


 どうやら取り憑いた悪霊より、その頭上で渦巻く念の方がヤバいらしい。

 二ノ宮さんは、そう見ている。

 意地悪く、質問して来た貴照に質問する。


 「ほんで、門跡はあの術式、知りまへんか?」

 「知らんわ~。ヤバいん?」

 「はい。ヤバいでんな」

 「どれくらいヤバい?」

 「アレを創ったヤツが、ホンマに外法を使い(こな)すくらいの力量やったら、まず勝てまへんなぁ」


 好奇心が湧いた。


 ――そんなに強いか? 僕の力は通用せぇへんか?


 自分の実力を、自分でも解ってない貴照。

 ただいま急成長中。

 そんな若者が、うずうずしない訳が無い。


 「入ろか」


 カードキーを振りながら、教えて貰った裏口に向かった。

 ちょっと頭を抱える仕草をしてから、二ノ宮さんも後に続いた。



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