策束静巡 参 その6
鈴木、授業中の中学生のようだ。
「そうなったら一体々々抑え込もうと考えんのは、無理ゲーっぽいわな」
「まぁ、そうやわな、、、」
どうも空返事っぽい相槌。
なので、聖は鈴木の顔を覗き込んだ。
「みっちゃん、ちゃんと話し聞いてる?」
「き、聞いてるよ、、、」
いちいちテレる鈴木。
聖はまだ理解してないが、鈴木がぼ~~っとしてるように見える時は、真剣に考え事をしてる時だ。
「、、、の割には、みっちゃん反応薄いなぁ」
「そんなこと無いがな」
ちゃんと考えてますよ、って慌てて深刻顔を作る鈴木。
眉間のシワも、ここぞとばかりに深くする。
――これは脳ミソ、バグって来とんな
術の理屈っぽい話しはすっ飛ばして答えを言ってあげた方が鈴木には良いだろうと、聖は難しい部分を割愛することにした。
「実はな、動物園に使ってる術式、あれって一個だけやねん」
「、、、? イッコだけ?」
「そうや」
「うそやん」
「ウソちゃうわ」
「いやいやいや、なんぼオレがおまえより術式知らんて言うたって、、、」
「『おまえ』ってヤメてって言うたやろ!」
そこは聞き逃さない聖。
真顔だったので即謝る鈴木。
「あ、ごめん、、、でも」
「『でも』とかええわ。理屈とかは置いといて答えを言うとな」
「ハイ。お願いします!」
そう言って、何故か聖に向かって敬礼する。
「ふざけてんの?」
「ふざけてへんよ」
ホンマかいなと疑惑の視線を向けても、真顔の鈴木。
鈴木の真顔はふざけてるのかふざけてないのか解らない、、、。
「ささ、答えを、、、」
顔を見てたらどついてやりたくなったが、グッと堪える。
「、、、何種類ものエレクトリック・ゴーストはもちろん、複数の術式にも効果を発揮するって言うたら、“呪煩外反”しか無いわ」
「じゅじゅじゅ?」
「呪・煩・外・反! 知らん?」
「知らん」
「、、、マジで?」
「マジで、、、」
あからさまに呆れ顔。
「けっこー有名な術式やで? それを知らん?」
「、、、もっかい言うてみて」
「しゃーから、呪煩外反!」
「ちょっと何言ってるか解らない」
罵死ッ!
「シバく!」
「シバく言う前にシバいてるやん!!」
その通り、テーブル越に聖が鈴木の頭をハタいていた。
まるで年齢差が逆転しているようだ。
「ひとの話をマジメに聞かんからや!」
「聞いてるって! 聞いてるけど、知らんモンは知らんやん!」
「~~~~~~~!!!!!!」
聖、言葉にならず、『い゛~~~~~~』ってなる。
鈴木としてはちゃんと正直に答えたのに聖が怒ったので、ちょっと不貞腐れている。
聖はそんな鈴木を見てまたまた『い゛~~~』ってなる。
――子供かっ!
まるで駄々っ子に道理を教える親の気分になった。
でも理解して貰わないと、この先絶対困る。
術とは、キチンと『知る』と『知らない』とでは効力が変わって来る。
鈴木の能力は、レアで役に立つ。
「ボケんと聞きや」
「しゃーからボケてないやん」
「結界内の動物園に施されてる術式は、呪煩外反って言う超高等術式。それがみっちゃんのやってんのに、ソックリやねん」
「、、、、、、そうなん?」
呪煩外反。
この術式の効果を理解してもらえれば、鈴木の能力は数段上がる。
術式の公式は今さら憶えなくても良いが、どういう性質の術なのかは知っていて貰いたい。
「ちょっとここ真剣に聞いてや!」
「オレは真剣やっちゅうねん」
真顔で答える鈴木。
そんな鈴木の真顔に、『い゛~~~』!!!
ぐっとコラえ、視線を合わせる聖。
とっても大事な話しをするんだと、それを解って欲しいと鈴木を見る。
視線がバチっと合う。
バチっと合って、耳が赤くなる鈴木。
何やってんだ鈴木、、、。
慌てて自制。
落ち着けと、自分に言い聞かす。
鈴木、ついに二十歳も年下の少女の事を、好きになり始めてる事を自覚。
、、、困ったもんだ鈴木。
「ちゃんと聞いてる?!」
「き、聞いてる聞いてる」
と言いながらも、心の中では呪文のように戒めの言葉を繰り返していた。
――オレ36聖は16オレ36聖は16オレ36聖は16、、、
「術式の効果を無くすって言うんは、二通りのやり方があってな。あ、ここで言う術式は『術』って付く“色んな術”だけや無うて、エレクトリック・ゴーストはもちろん、EG使いが纏うEG波も含むんやで」
「お、お、おっけーおっけー」
自分を戒めるため、マジメに聖の言う事を聞く事にした。
鈴木、、、バカ。
「反転術式って言うねんけど、解かる?」
「それは解かる」
ビシッと指で指された。
「はいっ鈴木君! 解るんやったら反転術式とは?!」
「え、えっと、、、構築された術式の公式を無効化? する対抗術式のひとつ? 、、、で、、、そんな感じやった?」
あやふやでテキトーな答え。
それでも鈴木には精一杯。
「まぁ正解で良えわ。最低限の理解はしてるみたいやからな」
「、、、良かった」
合格点が貰えたと思って、ちょっと嬉しい鈴木。
よく見ろ鈴木、聖は呆れはしても褒めてはないぞ。
「実際どうやってるかは、解かる?」
「そこまでは、、、。オレらみたいなんに反転術式は高等過ぎて実戦では使えんからな、、、せやからさっき言うた『二通り』って言うのんも全く解らん」
ふむふむと頷く聖。
「みっちゃんな、自分の使うてる術式ってどんなんかは知っといて欲しいねん。やから、説明すんで」
何か雰囲気的にふざけてはイケナイと察知。
そこは36歳、理解する。




