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テラ生まれのターさん異世界に行く  作者: うゐのおくやま
第一章 異世界転移
16/23

第一章 16.絆も深まる水浴回

 帰りの街への道程はかなり気不味い空気に満ちていた。

 いや、俺は悪くない。悪くないと思うぞ。……悪くないよなぁ?


 発端は川で水浴びをした時のことだ。狼の涎と血でベトベト、泥でヌトヌトになった俺はパンツ一枚になって川に飛び込み、頭まで潜って全身を擦り洗いまくって、さっぱりとしたのだった。


 ソルさんはちょっと手を洗っただけで、自分は水浴びはいいから見張りをしてると言っていた。まあ、レディだもんな。男の前でスッポンポンにはならないだろう。


 それで、俺は川岸で顔と手足を洗っていたアレクにも、水浴びをさせてやろうと考えたのだった。親切心からだぞ?


 アレクは泳げないのか川に入るのを嫌がっていたのだが、水浴びの気持ち良さを満喫した俺は、この快適さを知らないなんて勿体ないと思った。


「大丈夫、ダイジョーブ! 泳げなくても俺が付いてるから安心しろって!」


 そう言ってアレクを川の中に引きずり込んで、汚れたシャツを剥ぎ取ったのだった。体を洗うのを手伝ってやろうと思ったんだよ。


「きゃああっ!」なんて可愛い声を出して蹲るアレクの手を引いて立ち上がらせると、そこにまさか、ちっぱいがあるなんて思わなかったんだー!


 俺は悪くない。悪くないよな?


 ソルさんも私は知っていましたなんて澄ました顔してないで、前もって教えておいてくれよ。俺は本当に気づいてなかったんだから。


 黙々と歩き続けてやがて街の大門が見えてきた。荷物は重いし、空気も重いし、シンドかったな。


「あー、オホン。……あのさ、アレク、さっきは済まなかったな」


「…………」


「いや、本当に女の子だったなんて知らなかったんだ。ただ汗や血や泥で汚れていたから洗ってやろうと思ったんだよ」


「…………」


「すまん。本当にごめんなさい。悪かったと思ってる」


「……もういいよ、兄貴。オイラも隠していたんだから、男だと思ってても当然だったんだよ。ちょっと裸を見られたくらいのこと、もう気にしてないからさ、そんなに謝んなよ」


「そ、そうか、許して貰えて良かったー。それでな、アレクが嫌でなければ、これからも採集のガイドを頼みたいんだけど、大丈夫かな?」


「それはオイラも助かるよ、お金が無くて困ってたところだし。一人だと遠くまで行けないし、子供だから買い叩かれるしで、採集でもろくに稼げなかったからね」


「じゃあ、これからも宜しく頼むな。それと報酬なんだけど、アレクが採集のガイドをしてくれた日は、稼ぎは三等分にしようぜ。アレクが色々と教えてくれてたくさん採れたし、今日なんかは解体でもお世話になったからな」


「ええっ、本当かい? そんなに貰っちゃっていいのかな?」


「いいさ、俺達はチームだ。ソルさんもいいだろ?」


「ああ問題ない。アレクがいなければ薬草も採れなかったろうしな」


「やったぁ! そんなにお金が貰えるなんて夢みたいだ。オイラ一生懸命頑張るからさ、採集の依頼を受ける時はいつでも声を掛けてくれよ!」


「ああ、これからも頼むぜ!」


 なんとか雰囲気を盛り上げることが出来て、気不味いままで終わらなくて良かったよ。アレクが手伝ってくれれば採集でも結構稼げそうだし、これからも仲良くしていかないとな。


 冒険者ギルドの前でアレクに待ってて貰い建物内に入った。


 ざわ ざわ ざわ ざわ ざわ


「お、おいエルフだぞ!」


「うわー、マジか! 今朝もここで会っちゃったのにまたかよ」


「こら、お前ら声がでかいぞ! 目が合っちゃったらどーすんだよ?」


「こえーなー、俺、明日は仕事を休もーかなー」


 あ、またソルさんにフードを被るように言うの忘れてた。というかこいつら毎回毎回大騒ぎしやがって、いい加減に慣れろや!


 ギルドの一階ホールは、仕事を終えて帰ってきた冒険者たちで混み合っていたが、俺達が歩むと前方の人混みが自然と割れて、自動的に担当のマルシアさんの窓口まで道が開けた。

 まあ、行列に並んで待たなくて済むのは楽だけどな。


「お、お疲れ様でございます、レディ、ターサンさん。今日は初めての採集でしたが、……その様子では上首尾だったようですね」


 アレクの担いでた毛皮まで俺が抱えていて、ソルさんも毛皮を一頭分担いだ上に、薬草や木の実の詰まったカゴをアレクの分と二つ持ってるからな。


「ああ、依頼の毒籾草と黄塊根はカゴに山盛り採れたし、採集中に草原狼が出てきたから倒して皮を剥いで来たんだ。この狼の分の報酬も貰えるのかな?」


「はい、狼の駆除は常時依頼扱いですので、一頭につき小銀貨一枚の報奨金が支払われます。もちろん毛皮などの素材も買い取り致します。量がございますから、このまま買い取りカウンターの裏の処理場に御案内致しますね」


 俺達はマルシアさんの案内で裏手の処理場に行き、狼三頭分の素材と依頼の薬草二種に、それ以外にも採集してきた薬草や山菜や木の実を広げて査定して貰った。

 木の実や山菜は街で売ることも出来たけれど、もう俺もソルさんも結構疲れてて、街で値段交渉する元気もないから全部ギルドで買ってもらうことにした。


 報奨金と素材の買い取りで全部合わせて小銀貨七枚になった。一日でこれだけ稼げたらなかなかだよな。まあ、これから三等分するんだけど。


 今日の稼ぎから俺の冒険者登録料を支払って残りが小銀貨六枚。一人二枚ずつだ。

 アレクは、一日でこんなに稼いだなんて初めてだと喜んでいたよ。


 今日は流石に疲れたので、明日は採集は休むことにして、次回は明後日にガイドを頼んだ。そして俺達はそれぞれの家路に着くのだった。

 ……俺達はお化け屋敷に帰るんだけどな。



次回の投稿は金曜日になります。

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