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テラ生まれのターさん異世界に行く  作者: うゐのおくやま
第一章 異世界転移
14/23

第一章 14.狼なんか怖くない?

「おはよー、ターサンの兄貴とソルさん!」


「おお、おはよう。随分待ったか?」


 冒険者ギルドの建物を出たところでアレクが待っていた。


「大丈夫、オイラもさっき来たばかりさ。採集はどんな依頼を受けたんだい?」


「二種類あるんだが分かるかな?」


 マルシアさんから貰ってきた薬草の特徴を書いたメモをアレクに渡す。商人の子供だけあって、まだ小さいのに字が読めるようだ。俺も暇があったらソルさんかアレクに読み書きを教わろうかな。


「うん、これなら大丈夫だよ。オイラも時々街の外へ薬草取りに行ってたから、生えてる場所もバッチリさ!」


「其方は小さいのに薬草取りなど危険なのではないか?」


「大丈夫だよ、ソルさん。薬草取りは冒険者に成りたてで装備もろくにない新人でもこなせる仕事だからね。街の子供も小遣い稼ぎに時々採集に行ったりしてるんだ。買い取りは街の薬種店に頼むんだけど、子供だけだと買い叩かれるから、たいした金にはならないけどね」


「でも子供でもそんなに簡単に採ってこれるなら、子供や街の人が採集するだけで必要な量は賄えるんじゃねーの?」


「やっぱり子供だけだとあまり遠くへは採りに行けないし、近場で採るだけだと品種も偏ってしまうから、足りない種類を冒険者ギルドに依頼してるって前に聞いたよ」


「そうか、俺もソルさんも薬草のことはほとんど知らないから、今日はガイドをしっかり頼むぜ」


 そのまま西門から街の外へ出る。入る時には入場料を取られるが、冒険者プレートを見せれば免除だ。アレクのような小さな子供も入場料は免除してもらえるらしい。


 西門を出て街道を西に向かい途中で逸れて南方に広がる森へ向かった。俺はお弁当と水筒を入れた帆布の鞄を背負い、三人とも手には蔓を編んだカゴを持ってる。


「いつもは南門から出て近くの農村の傍の森へ行くんだけど、こっちの森でも生えてるはずなんだ。木々の間の半日陰になってる場所によく生えるんだよ。あ、あった、あった!」


 森の周縁部の木々の疎らな場所の、下草の中に生えている赤紫色の葉が生えてる植物をアレクが指差した。


「これが毒消しの材料になる毒籾草だよ。これの若い葉っぱが効果が高いんだ。育ちすぎて固くなってる葉っぱは駄目だからね」


 俺達はその場にしゃがみ込んで柔らかい葉っぱを選んで採集を始めた。手でプチンプチン若い葉っぱを千切るだけだけど。三人で採集すればすぐに手カゴいっぱいに採れた。


「あ、あの黒葉も摘んでおくといいよ。干して細かく刻んで薬味に出来るから、街の薬種店や食料品店でも買い取ってくれるよ。あと、あの高いところの蔓に生ってる赤い実は取れないかな? あれも青果店で買い取ってくれるよ」


 アレクに言われるままにあちこちの葉や実を採集していく。おお、こんなのも食べられるのか。アレクがいなければ分からなかったな。


「結構色々と採れたな。でもあと依頼されたもう一つの黄塊根がまだだな」


「あれは日当たりの良い水辺に生えてるんだよ。一旦森を出て南側に向かおうよ。あっちに川があるんだ」


 森の外周部を採集しながら南下して川へと向かった。季節は秋だとかで暑くも寒くもなく良い気候だね。

 見晴らしの良い丘の上でお弁当を食べて、軽く昼寝をする。寝不足のソルさんなんてすぐに寝ちゃったよ。午後の陽射しはポカポカと暖かく、頬を撫ぜる風は涼しく気持ちいい。


 ああ、こんな生活も悪くないなぁ。と、流れる雲を眺めながらのんびりとピクニック気分を楽しんでいた、その時。


 ウオオォォオーン


 突如響き渡る獣の吠え声に飛び起きる。丘の麓を三等の大きな犬が、いや、大型犬よりも一回り大きくゴワゴワした毛皮に包まれた狼が、斜面を駆け上って来るのが見えた。


「ヤバイよ、兄貴! あれは草原狼だよ! もっと西の草原に住んでるはずなのに、なんでこんな森の近くに?」


 あっ、そう言えば、草原狼の駆逐の依頼も出てたな。あれがそうか。しかし、どうする? 森に逃げ込んで木に登るか? 丘を降りる前に追いつかれちまわないかな?


「ソルさん起きろ! 狼だ、大急ぎで逃げるぞ!」


「ふぁああー、なんだ、喧しいな。……せっかく気持ち良く寝ていたというのに」


 ソルさんは暢気に口を抑えて欠伸をしている。ヤバイんだってば!


「ふむ、あれが狼か。生きてるのは初めて見たな」


「急いで丘を降りるぞ、森へ逃げ込むんだ!」


「兄貴、ソルさん! 急がないと狼に襲われるよ!」


「まあ、待て。今から丘を駆け下りても途中で追いつかれるだろう。ここで迎え撃つとしよう。大きな群れならともかく、三頭程度なら恐れることはない」


 すっくと立ち上がったソルさんが狼を睨んで詠唱を始める。

 そう言えばソルさんは魔法が使えるんだった。いいぞ、やっちまえ!


 オーン アグニマーヤー スヴァーハー!


 詠唱とともに振り下ろした右手の先から握りこぶし大の火の玉がビューンと飛び出して、先頭の狼の顔面に突き刺さった。


 ドーン! 火の玉が爆発し狼の頭を黒焦げにする。二頭目、三頭目の狼が驚いて突進を止めて、俺たちのいる丘の頂上を囲むように用心深く周囲を回り始めた。


「ふふふん! どうじゃ、なかなかのものであろう?」


「きゃー、ソルさんカッコいいー! でも余所見しないで、前を見てくれよ!」


 草原狼たちはまだ諦めずに、十メートルくらい離れた場所をぐるぐると回っている。


「なに、すぐに済ませるから安心せよ」


 オーン アグニマーヤー スヴァーハー!


 ソルさんの手元からファイアボルト(勝手に名付けた)の二発目がビューンと飛んで行く。隙を見てこちらに飛び掛かろうとしていた、二頭目の狼の胴体に突き刺さろうとする寸前――ヒョイっと避けられた!


 空中で身を捻ってファイアボルトを躱した狼が一旦着地すると、その次の瞬間、俺目掛けて飛び掛ってきたーっ!

次の投稿は日曜日になります。

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