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テラ生まれのターさん異世界に行く  作者: うゐのおくやま
第一章 異世界転移
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第一章 13.それでも鐘は鳴っている

「おはようございます、レディ、ターサンさん。昨夜は異常はございませんでしたか?」


 翌日の早朝、日の出に鳴らされる水の一刻鐘とともにマルシアさんが屋敷に訪ねて来た。

 冒険者ギルドの職員って、随分と朝早くから起き出して動いてるんだな。寝起きの顔をして、まだ髪に寝癖が着いてるソルさんとは違って、マルシアさんはぴしっとギルドの制服を着こなして、きちんと薄く化粧もしているよ。


「出た出た! 夜中あちこちでガシャガシャキシキシ変な音がして、見に行っても誰もいないのに、しばらく立つとまた違う場所から音が聞こえてきて落ち着かなかったな。ソルさんなんか酷く怖がってて、お蔭で寝不足みたいだ」


「ベベベ、別に怖くなんかなかったぞ! 音が喧しくて眠れなかっただけだ!」


「そうだっけ? ソルさんの見張り番は終わってたんだから、わざわざ起き出して俺にくっついて暗い中を一緒に、屋敷のあちこちを見に行ったりしなくても良かったのにな」


「其方は、夜中はもう屋敷を調べに行ったりせずに、私の寝てる側で火の番をしてる約束だったであろ! なのに不意に部屋を飛び出して走って行ってしまったりするから、私も落ち着いて眠っていられなかったのだ!」


 ソルさんが真っ赤な顔で言い訳してる。うん、普段のツンと澄ましてる態度とのギャップが可愛いな。


「コホン、……それでな、マルシア。この屋敷に何者かがいるのは間違いない。水甕の水もいつの間にかいっぱいに汲まれていたしな。これで依頼完了にはならぬのか?」


「確かに何か異常が起きていたようですが、それを確認したのがお二人だけではちょっと……。何か不審な者が隠れ棲んでいた痕跡を見つけるとか、もしくはその不審者を捕まえるとかして頂けませんと」


「そいつを捕まえられなかったら報酬は出ないのか? 依頼は問題解決ではなかったよね?」


「はい、ターサンさんの仰っしゃられるように、問題を解決しろとの依頼ではございません。なので期日の一週間をですね、その……お二人が無事に過ごすことが出来さえすれば、一応は屋敷に然程の危険はないと証明されたことになります。そうすれば依頼主も満足されると思います」


「つまり問題を解決しなくても良いが、過去の変死事件と屋敷は関係ないと、形だけでも示してくれってこと?」


「はい、そのとおりです」


「だってさ、ソルさん。あのカシャカシャいう奴を捕まえられないなら、一週間はここに泊まり込むことになりそうだな」


「で、あるか。仕方がないのだな……」


「それでは、私は今日は引き上げますが、お二人は日中は採集の依頼を引き受けられるのですよね?」


「ああ、薬草の種類の説明とか俺も聞いておきたいから、朝御飯を食べて身支度を済ませたらギルドに顔を出すよ」


「では、資料を用意してお待ちしております」


 と言うとマルシアさんは帰っていった。尻尾をフリフリさせながら。

 スカートに尻尾用の穴が開いてるんだな。


 俺達は昨日買っておいたパンと果物と燻製肉で食事を済ませると、屋敷の鍵を閉めて冒険者ギルドに向かった。

 ニノ郭の中程にある屋敷から三ノ郭の西門寄りにある冒険者ギルドまで、歩いて小一時間はかかる。ちょうどギルドの建物の前まで来たところで水の二刻鐘がカーンカーンと鳴った。


 ソルさんに聞いた話だと、この国では一日を地水火風の四つの時間帯に分け、さらにそれぞれの時間帯を三分割して鐘を鳴らしているらしい。一刻がほぼ二時間だ。


 日の出に水の一刻鐘がカーンと鳴って一日が始まり、水の二刻鐘がカーンカーンと鳴ると街の城壁の大門が開き、商人や職人が仕事を始める。水の三刻鐘がカーンカーンカーンと鳴ったら午前の休憩時間なんだと。


 正午に火の一刻鐘がカランコロン鳴ると昼御飯になり、カランコロンカランコロンと火の二刻鐘が鳴ると午後の仕事を始める。火の三刻鐘がカランコロンカランコロンカランコロンと鳴ったら午後のお茶の時間だ。


 夕方になり風の一刻鐘がゴーンと鳴ると商人や職人たちは一日の仕事を終わらせて片付けを始める。日没に合わせて風の二刻鐘がゴーンゴーンと鳴る頃には大半の人は帰宅していて夕食を済ませ、灯りの油を節約したい庶民は、風の三刻鐘のゴーンゴーンゴーンと鳴る音をベッドの中で聞くことになる。


 夜中にも地の鐘がドーンと鳴ってるが、夜遊びでもしてなきゃ聞くことはまずない。俺たちのように夜中も起きて仕事をしてる冒険者や兵士たちが、時の経過を知るのに役立てるくらいだ。


 日の出に水の一刻鐘が鳴り、日没に風の二刻鐘が鳴る。江戸時代の日本と同じ不定時法だから、昼夜の長さが変わる夏と冬では昼間の一刻の時間が変わるし、同じ日でも昼間の一刻と夜の一刻は長さが違う。

 でも午前を三分割、午後を四分割してるせいで、昼間でも午前と午後では一刻の長さが違うんだよな。


 定時法に慣れてる俺からすると凄く不思議なんだが、ソルさんが言うには、遠くの村から街に来ると到着は午後になることが多いし、王様とか偉い人は朝はゆっくり遅くまで寝てるものだ。だから昔からの慣習で、午前よりも午後を細かく分割しておいた方が、仕事をする上で何かと便利なんだそうだ。

 さすがは歴女。宇宙人なのに古臭いことを色々とよく知っている。


 さて、アレクがそろそろ家を出る頃だろう。急いでマルシアさんに薬草の種類を教わっておかなくちゃな。



いつもお読みいただきありがとうございますm(_ _)m


次回は金曜日に投稿します。

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