人間かどうか分からない写真クイズ(後篇)
学園日常コメディ。
放課後のゆるい会話劇。
「問題です」
大輝は楽しそうに言った。
「写真には人間らしき生物が写っています」
「らしき?」
さゆりが首を傾げる。
「本人は人間のつもりです」
「なんだそれ」
健太が吹き出しそうになる。
「しかし妙な格好をしています」
「コスプレ?」
「近い」
「制服?」
「違う」
「その人は何か働いてるの?」
健太が聞く。
「はい」
「アルバイト?」
「みたいなもの」
「曖昧だな」
「その人は客に奉仕します」
「奉仕?」
さゆりが反応した。
「ボランティア?」
「場合によってはそう見える」
大輝は必死に笑いをこらえている。
健太はだんだん察し始めていた。
奉仕。
妙な格好。
本人は人間のつもり。
そして大輝のこの態度。
脳裏に一つの光景が浮かぶ。
数か月前の文化祭。
クラスでメイド喫茶をやった。
普段は落ち着いているさゆりが、押し切られてメイド役を担当した。
紺色のメイド服。
白いフリル。
ぎこちない接客。
そして顔を真っ赤にしていた姿。
正直なところ、かなり可愛かった。
だが本人は黒歴史認定している。
健太は結論に辿り着いた。
絶対にそれだ。
しかし教える理由はない。
むしろ面白い。
健太は口元を押さえた。
「健太、なんかにやにやしてない?」
さゆりが怪しんだ。
「別に」
「絶対してる」
「気のせいだろ」
健太は窓の外を見た。
笑いを隠すためだった。
一方のさゆりはまったく気付いていない。
「質問するね。その人は実在する?」
「はい」
「動物じゃなくて?」
「人類です」
「年齢は若い?」
「はい」
「高校生?」
「はい」
さゆりは真剣に考え始める。
「同じ学校?」
「はい」
「同級生?」
「はい」
「えっ」
さゆりが驚いた。
「知ってる人だ」
「よく知ってる」
大輝はうなずく。
健太はもう顔を伏せている。
肩が震えそうだった。
「男子?」
「いいえ」
「女子?」
「はい」
「じゃあ……クラスメイトかな」
「かなり近い」
「近い?」
「精神的距離が」
「質問に答えろ」
健太が突っ込んだ。
「じゃあ、はい」
大輝は大人しく答えた。
さゆりは候補を考える。
しかし分からない。
「部活仲間?」
「いいえ」
「委員会仲間?」
「いいえ」
「文化祭に関係ある?」
大輝の肩がぴくりと動いた。
「はい」
「文化祭で働いていた?」
「はい」
「模擬店?」
「はい」
健太はとうとう顔を背けた。
もう限界だった。
「健太、知ってるでしょ」
「どうだろうな」
「知ってる顔だ!」
「さあ」
にやにや。
完全に隠せていない。
さゆりはさらに質問する。
「その人は衣装を着ている?」
「はい」
「かわいい系?」
「非常に」
大輝が即答した。
健太も内心で同意した。
非常に。
かなり。
予想以上に。
実際、あの日のさゆりは目を引いていた。
本人は不本意だろうが。
「じゃあメイド喫茶?」
さゆりが言った。
「はい」
「えっ」
さゆりが止まった。
大輝はにこにこしている。
健太は天井を見ている。
沈黙。
数秒。
さらに数秒。
そして。
「……まさか」
「どうした?」
大輝が聞く。
「その人って」
「うん」
「私?」
「正解!」
大輝が机を叩いて大笑いした。
「なあっ!?」
さゆりの顔が一瞬で真っ赤になる。
「なんでそんな写真持ってるの!?」
「文化祭で撮った」
「消して!」
「嫌だ」
「消してー!」
さゆりが机越しに手を伸ばす。
大輝は椅子ごと逃げた。
「証拠写真だから」
「何の証拠!?」
「可愛かった証拠」
「うわあああ!」
さゆりは両手で顔を覆った。
健太はとうとう吹き出した。
「健太まで笑うな!」
「悪い」
「絶対途中で気付いてたでしょ!」
「まあ」
「裏切り者!」
健太は笑いながら肩をすくめた。
実際、かなり早い段階で分かっていた。
だが答えてしまえば、この面白い展開は見られなかった。
そして何より。
メイド服姿のさゆりは本当に似合っていた。
本人に言えば全力で否定されるだろうけれど。
「でもさ」
健太が言った。
「文化祭、評判良かったじゃん」
「それとこれとは別」
「接客もちゃんとしてたし」
「覚えてない」
「写真見れば分かる」
「見ない!」
大輝がまた笑う。
さゆりは恥ずかしさで机に突っ伏した。
そんな姿を見ていると、健太も自然と笑ってしまう。
放課後。
くだらないクイズ。
人間かどうか分からない写真たち。
雷門は人間みたいだった。
サギは喫茶店の客みたいだった。
そして最後は、人間なのに人間だと気付かれなかったさゆり。
三人はしばらく笑い続けた。
教室には夕日が差し込み、楽しい放課後の時間だけがゆっくりと流れていた。
文:M365 Copilot氏。
画像:Win11 Copilot氏。




