主文、被告人を禁固一週間の刑に処する(後篇)
現代ファンタジー。コメディ調。
日常×不条理。
二日目の朝。
俺は朝食を食べながら、昨日の自分の行動を振り返っていた。
町を歩いた。
学校を見た。
本を読んだ。
ゲームをした。
テレビを見た。
風呂に入った。
寝た。
そして今朝。
朝食を食べている。
それだけだった。
「……暇だ」
言ってから、自分で驚いた。
俺は暇が嫌いなのだ。
いや。
正確には、何をすればいいか分からない状態が嫌いなのだ。
何か目的があれば動ける。
目的がなくても、誰かに頼まれれば動ける。
しかし、「好きにしていい」と言われると途端に困る。
俺は食堂を出た。
町役場へ向かう。
受付端末を操作する。
「服役者向け相談窓口」
そんな項目があった。
俺は押した。
画面に文章が表示される。
『現在のご不満を選択してください』
俺は迷わず、
『暇』
を選択した。
すると、
『あなたの自由時間を有効活用しましょう』
と表示された。
「その有効活用が分からないから相談してるんだよ!」
画面にはいくつかの選択肢が並んだ。
読書。
運動。
学習。
創作。
ゲーム。
散歩。
料理。
園芸。
「……」
全部、自分で選べということらしい。
俺は深いため息をついた。
そこで、ふと思った。
姉ならどうするだろう。
俺はスマートフォンを取り出した。
当然、外部との通信はできない。
だが、端末内には家族へのメッセージを書くための機能があった。
送信はできない。
ただし、服役終了後にまとめて送られるらしい。
俺は姉宛てにメッセージを書いた。
『今、自由度の高すぎる独房に入れられている。何をすればいいのか分からない』
送信ボタンを押す。
『服役終了後に送信されます』
俺はスマートフォンを置いた。
すると、妙なことに気づいた。
姉なら、たぶん楽しむ。
この町を。
何もないのに、何でもできる町を。
山があれば登る。
学校があれば入る。
商店街があれば店を覗く。
公園があれば遊ぶ。
誰もいないなら、誰もいないからできることを探す。
俺には、それができない。
「……自由って、難しいんだな」
俺は初めて実感した。
そして同時に。
この町が、俺の刑罰なのではないかと思った。
労役がない。
苦痛を与えられるわけでもない。
食事もある。
寝床もある。
娯楽もある。
なのに苦しい。
なぜなら。
何をするかを、全部自分で決めなければならないからだ。
三日目。
俺は町を一周した。
正確な距離を測った。
四日目。
町の地図を作った。
五日目。
誰もいない商店街の店を一軒ずつ調べた。
六日目。
図書館の本を分類した。
気づけば俺は、忙しくなっていた。
別に誰かに命じられたわけではない。
やることがなかったから、自分でやることを作っただけだ。
町の地図を完成させる。
図書館の本をジャンル別に並べ直す。
公園のベンチを数える。
信号機の数を調べる。
町の歴史を役場の資料から調べる。
料理を作る。
ランニングをする。
ゲームではなく、チェスをする。
そして夜には日記を書く。
一日が短くなっていった。
七日目の朝。
俺は妙に寂しかった。
「……今日で終わりか」
一週間前なら、あれほど長いと思った。
今では短い。
人間というのは勝手なものだ。
俺は町役場へ向かった。
受付端末には、
『服役終了まで残り三時間』
と表示されていた。
その下に、
『最後に、この町で何をしますか?』
と表示されている。
俺はしばらく考えた。
そして答えた。
「何もしない」
俺は公園のベンチに座った。
風が吹いている。
木の葉が揺れている。
誰もいない。
静かだった。
俺はただ、それを眺めていた。
最初の日なら、こんな時間は耐えられなかった。
だが今は違う。
何もしないという行動も、自分で選んだものなら悪くない。
しばらくして、壁の向こうから音がした。
門が開いた。
刑務官がやってくる。
「服役期間が終了しました」
「そうですか」
「お疲れさまでした」
「……ありがとうございました」
俺は立ち上がった。
そして門へ向かう。
そのとき、俺は振り返った。
誰もいない町。
高い壁。
一週間だけの独房。
最初は馬鹿げていると思った。
今でも馬鹿げていると思う。
だが。
少しだけ分かったことがある。
自由とは、何をしてもいいということだけではない。
何をするかを自分で決めなければならない、ということでもある。
だから自由を楽しめる人と、困ってしまう人がいる。
姉は前者だった。
俺は後者だった。
けれど、後者だからといって、自由を楽しめないわけではない。
自分で目的を作ればいい。
俺はようやく、それを理解した。
門の外へ出る。
すると、刑務官が一枚の封筒を渡してきた。
「こちらをご家族から預かっています」
「家族?」
開ける。
姉からだった。
中には一枚の紙。
『自由なゲームが苦手な弟へ』
俺は嫌な予感がした。
紙を開く。
『刑務所で暇そうなので、暇つぶし用のゲームを入れておきました』
その下に、ゲームのタイトルが書いてある。
俺は固まった。
自由度の高いゲームだった。
しかも、俺が昨日までやっていたものとは比較にならないほど自由度が高い。
さらに、その下に一言。
『攻略法は教えません。自由に遊んでね!』
「姉ぇぇぇぇぇ!」
俺は叫んだ。
刑務官が驚いて振り返る。
「どうしました?」
「俺の刑期、終わってますよね!?」
「はい」
「なのに、刑罰が続いてるんですけど!」
「何か問題が?」
「自由度が高すぎるゲームを渡された!」
刑務官は少し考えた。
「それは……ご家族からの贈り物ですので」
「正論で殴るな!」
俺は頭を抱えた。
するとスマートフォンが震えた。
服役中に姉へ書いたメッセージが送信されたらしい。
すぐに返信が来た。
『どう? 自由な町、楽しかった?』
俺は少し考えてから返信した。
『最初は最悪だった』
少し間を置く。
『でも、最後はそれなりに楽しかった』
すぐに返信が来た。
『でしょ?』
『お前は最初から楽しんでただろ』
『うん!』
俺は笑った。
そして、姉に続けて送った。
『ただし、ゲームの攻略法は教えてくれ』
返信はすぐだった。
『嫌』
「なんでだよ!」
駅へ向かう道の途中で、俺は空を見上げた。
一週間ぶりの自由な空だった。
大学に戻れば、講義がある。
課題もある。
友人もいる。
やるべきことも山ほどある。
それが、妙に嬉しかった。
俺は思う。
自由は、与えられただけでは楽しめない。
自由の中で、自分が何をしたいのかを見つけなければならない。
だからこそ。
俺はもう、以前ほど自由が怖くない。
ただし。
姉から渡されたゲームだけは別だ。
あれは自由ではない。
もはや災害である。
後日。
俺は姉に訊いた。
「なあ。俺、どうしてあんな罪で捕まったんだ?」
姉は少し考えてから言った。
「自由を持て余したからじゃない?」
「それ、結局どういう罪なんだよ」
「さあ?」
「お前も知らないのかよ!」
姉は笑った。
俺も笑った。
そして、その日の夜。
俺は例のゲームを起動した。
画面には、こう表示された。
『さあ、自由に遊ぼう!』
俺はコントローラーを握る。
そして。
「……まず、何をすればいいんだ?」
一週間前と同じ言葉を呟いた。
ただし今度は。
少しだけ、楽しかった。
文:ChatGPT氏。




