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こいつらなんかヒロインじゃない!  作者: 文月(あやつき)


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第8話 喧嘩上等ブッシュバイパー

 コンビニのアルバイトにも慣れてきた。


 品出し、レジ打ち、フライヤーの管理、トイレ掃除。マニュアル通りにこなせば問題ない。アルケオン・リングの研修は、もっと厳しかった。地球のコンビニ業務は、比較的——いや、今はそんなことどうでもいいか。


「いらっしゃいませー!」


 翔子が叫んだ。声だけは誰よりも大きい。そしてバックヤードから飛び出しレジカウンターを飛び越えて、配置についた。


「翔子さん、店の中で飛んだり跳ねたりしないでください」


「だってさぁ、品出ししながらだし、すぐにレジにいた方がよくない?」


「いえ、お客様が驚きます」


 翔子は品出しのスピードだけは尋常ではなかった。棚から棚へ跳ぶように移動し、商品を並べていく。パルクールで鍛えた機敏な動きがこんなところで活きるとは思わなかった。商品の陳列場所もすぐに覚えた。ただし、おにぎりの配列が毎回ずれている。その辺ツメが甘い。


「翔子さん、おにぎりは具材ごとに——」


「えっ、並び順あるの?」


「あります」


 店長には好評だった。「元気があっていいね」と。元気だけは確かにある。

 夕方のシフト。客足が落ち着いた時間帯に、通信デバイスが震えた。

 ダルマイヤックからではない。センター本部からの自動通知だった。


『新規候補生データ更新。干支:巳。該当者確認済み。詳細はデータベースを参照のこと』


 ()——蛇。


 端末を開いた。バックヤードで、翔子に見つからないようにこっそりと。

 蛇目(じゃのめ)つづら。十四歳。中学二年生。

 写真を見る。——幼いが鋭い目つきの少女だ。髪は紫、長い前髪は右目にかかっている。口元がきつく引き結ばれている。


 データ欄

 ”格闘能力:極めて高い・身体能力:全候補生中トップクラス・性格:気が強い・備考:要注意”


 格闘能力が極めて高い……。これは——期待できる。


 珠は臆病で、翔子は無鉄砲で、睦はおっとりしすぎていて、梵は九歳。まともに「戦える」候補生がいなかった。格闘能力の高い子が加われば、チームの実戦力が大幅に上がる。

 ”備考:要注意”が少し気になるが、まぁ、気が強い子はどこにでもいる。

 所在地を確認すると——この近辺だ。しかもコンビニから歩いて十分もかからない場所に住んでいる。


「ミルちゃん、なに見てんの?」


 翔子が背後から覗き込んできた。


「ちょっ——覗かないでください!」


「新しいヒロイン候補?」


「……はい。近くにいるようです」


「マジ!? 今から会いに行く!?」


「まだシフト中です」


「えへへ、そうだよね〜」


 シフトが終わるまで、あと一時間。ふと時計を見上げた時だった——


 外が、騒がしくなった。


 ---


 コンビニの窓ガラス越しに、外の様子が見えた。

 店の駐車場に人だかりができていて、大きな怒鳴り声が聞こえる。

 ——喧嘩だ。


 十人ほどの男たちが、一人の少女を囲んでいた。全員がだぼだぼのジャージにサンダル。中にはバットを持っている者もいる。地球の不良——この国では「ヤンキー」と呼ぶらしい——の典型的な服装だ。

 囲まれている少女は——。

 紫色の右目にかかった長い前髪、そして鋭い目つき。


 蛇目つづら——だ。


 端末の写真と一致する。ただし、写真ではどう見ても普通の制服を着ていたのに、今の彼女は——


 くるぶしまである長いスカート。蛇の刺繍の入った改造したセーラー服。腰元にチェーンのアクセサリー。足元は厚底のミドルブーツ。


 これはまるで——この国の古い時代の不良スタイルだ。ダルマイヤックが「日本文化」として教えてくれた資料の中に、こういう格好の若者の写真があった。アレンジはされているが、確か「スケバン」と呼ばれていたものに近い。


 なぜ現代の中学二年生がその格好を?


「てめー、蛇目だな!」


「俺らのシマで好き勝手してるそうだな!」


 十人の男たちが凄んでいる。

 つづらは——腕を組んで、不敵に笑っていた。


「あぁ? 十人がかりで、口喧嘩しにきたのか? 雑魚どもが!」


 十四歳の少女の台詞とは思えない。

 翔子がコンビニの窓に張りついた。


「ミルちゃん、あれ喧嘩じゃん! 一対十くらいじゃん——」


 間髪入れず、喧嘩が始まった。


「おらぁぁ!!」


 一人目が突っ込んできた。つづらはステップ一つで横にかわし、すれ違いざまに足を引っかけた。一人目が転倒。

 二人目と三人目が同時に来た。つづらは二人目の拳を片手で受け、そのまま引っ張って三人目にぶつけた。二人がもつれて倒れる。

 四人目。つづらは低い姿勢から跳び上がり、回し蹴り。四人目が吹き飛んだ。

 五人目、六人目、七人目——次々と向かってくるが、つづらの動きは止まらない。蛇のように滑らかで、予測不能な軌道。相手の攻撃を最小限の動きでかわし、隙を突いて反撃する。

 一分もかからなかった。

 十人全員が地面に転がっている。

 つづらは髪をかき上げ、倒れた男たちを見下ろした。


「けっ!あと十人連れてきな」


 そう言って、平然と歩き去った。


 コンビニの中で、翔子と私は言葉を失っていた。二人とも口を開けたまま、呆気にとられ固まっている。


「……何あの子、すっげぇ」


 翔子が呟いた。


「……あの子が、新しいヒロイン候補生です……」


「ええ〜〜!!」


 十四歳の少女が、十人の男たちを一分でのした。変身スーツなしで。生身で。


 格闘能力:極めて高い。データに偽りはなかった。

 しかし——「備考:要注意」の意味も、今わかった。


 ---


 翌日——。

 私は一人で行く勇気がなかった。単純に怖い。

 つづらの戦闘力は本物だ。変身スーツなしで十人を倒す少女に、一人で「ヒロインになりませんか」と声をかける度胸は、私にはない。


「あ、あの……みんなで行きましょう」


 放課後、翔子、梵、睦、珠を集めた。五人で行けば、なんとか——いや、頭数の問題ではない気もするが。


「怖い子なん〜?」


 睦が不安そうだ。


「怖い、というか……気が強い子です」


「そ! めっちゃ強い子! 楽しみ〜」


 翔子は楽しそうだ。


「……」


 梵は無言。


「ミルティナさん……あの、私、怖いです……」


 珠は私の袖を掴んでいる。いつものことだ。


 つづらの行動範囲を端末で確認し、放課後にいそうな場所を特定した。駅の裏、高架橋の下、大きな落書きのある場所。

 一人で、ブロック塀に背を預けて缶ジュースを飲んでいた。改造学生服にチェーン。十四歳とは思えない威圧感。


「あの子?」


 睦が小声で聞いた。


「はい。蛇目つづらさんです。では、私から——」


 私は緊張しつつ、近づいた。最近の彼女を調べると、気になる行動があったのだ。ただそれだけに望みをかける……。


「あ、あの〜、蛇目つづらさんですね?」


 つづらが、缶ジュースを持ったままこちらを見た。目つきが鋭い。爬虫類のような——いや、蛇のような目だ。


「あぁ? 誰だテメー」


 すでに声が大きい。なんで第一声で凄まれないといけないのか。


「ひ、いえ、わ、私はミルティナ。あ、あの、ちょ、ちょっとお話があって——」


 圧倒的な威圧感の前に声が上ずってしまう。三つも年下なのに。


「話? なんだ言ってみろよ!」


 何で、怒ってるの?


「あ、あ、はは、その〜」


 私は顔が引き攣ってしまった。つづらの視線が、私の後ろに移った。翔子たち四人が、少し離れた場所で見守っている。


「なんだぁ? つるんで来やがったのか。喧嘩なら買うぞ!」


 つづらは、私を退け四人に近づいた。


「ひっ!こっち来るぅ」


 睦が翔子にしがみつく。珠は睦の後ろに隠れた。梵はボ〜ッと見ている。


「け、喧嘩ではありません!」


 私が必死に声をかけると、つづらは足を止め、翔子たちを品定めするように見た。


「……猿みてぇな女」


 翔子のことだ。


「……乳でけぇ女」


 睦が胸を腕で隠した。


「で……ちんちくりんが二匹」


 梵と珠だ。珠は睦の背中に完全に隠れた。


 梵が——動いた。


 ブレスレットに手をかけた。そして変身してしまった。

 黒い光、ネズミをモチーフにしたヘルメット。梵は光線銃を構える。


「梵さん!?」


「……撃つ」


「なんだこりゃぁ!?」


 つづらは驚いた顔、というより好奇心があふれ出た顔をしている。


「撃たないで!!」


 翔子と睦が梵の両腕を掴んだ。しかし変身なしではスーツを着た梵を止められない。翔子も睦も変身してしまった。


  金色の光と緑の光。


  ——えぇぇぇ!? 三人とも変身した!? こんなところで!?


「ボンちゃん落ち着いて!」


「ボンちゃんあかん〜! 一般人やで〜!」


「……ちんちくりんは許さない」


 ミルキーマウスを止めようと、パッションモンキーとバウンドドッグが揉み合っている。なんだこの光景は。


「三人とも何やってるんです! 変身を解きなさーい!」


 呆気に取られているつづらだったが、やがて鼻で笑った。


「なんだよ、ヘンな集団だな。特撮好きかなんかの集まりか? 勧誘なら断る」


「特撮ではありません。本物です」


「本物?」


  私は深呼吸した。


 仕方がない。ここはストレートに、ヒロイン候補生として勧誘に来たことを伝えよう。

 ただ、トレーナーとして、ひとこと言っておかねばならないことがある。

 一歩前に出た。脚が震えている。気づかれないように、拳を握りしめた。


「その前に、蛇目つづらさん」


「あ?」


「猿みたいとか、乳がでかいとか、ちんちくりんとか。人の外見を嘲笑うのは、恥ずかしいことです」


 つづらの目が細くなった。


「初対面の相手に暴言を吐くのは、自分に自信がないからです。強いのは認めます。昨日のコンビニ前の喧嘩を見ていました。あなたの格闘能力はとてつもなく優秀です。でも——」


 つづらが私を睨みつけている。威圧するように。身長は私より少し低い。だが、纏う空気が違う。


「——強さは、人を傷つけるためにあるのではありません」


 つづらの目を、まっすぐ見た。

 数秒間、つづらは私を見返していた。


 そして——。


「…………」


 つづらが、視線を逸らした。

 缶ジュースの残りを一気に飲み干し、空き缶を握りつぶした。


「……うるせぇな」


 声が、少しだけ小さくなっていた。


「テメーみてぇなこと言うやつ、初めてだ」


「……え?」


「どいつもこいつも、怖がって逃げるか、媚び売ってくるかだ。面と向かって説教してきたやつは——いねぇ」


 つづらが、握りつぶした缶を地面に落とした。


「……おもしれぇ。テメー、名前なんつった?」


「ミルティナです」


「ミルティナ……か。外国のやつか?」


「もっと遠くです」


 私は空を指さした。


「遠く?……へっ、なんだそりゃ」


 つづらが、初めて——ほんの少しだけ、笑った。

 怖い笑顔だったが、笑顔だった。十四歳の少女の顔だった。


 ---


 空き地のブロック塀に並んで座った。六人で。つづらが一番端で、私がその隣。残りの四人は少し距離を取っている。珠は睦の後ろに完全に隠れている。


 私はつづらに、話をした。異星人であること。ヒロインのこと。変身スーツのこと。

 つづらはしかめっ面で黙って聞いていた。途中で何度か「はぁ?」と言ったが、遮ることはなかった。


「——というわけで、あなたにもヒロイン候補生になってほしいのです」


「……ヒロインだぁ? あたいが?」


「はい」


「見りゃわかるだろ。あたいはヒロインなんて、人助けするような柄じゃねぇ」


「そう決めつけるのは早いと思います。調べました。近頃この辺で、中学生や高校生を狙ったカツアゲが多発していますね。あなたは、その頃からこの辺を巡回し、カツアゲグループの制裁を始めた」


「え? 正義の味方じゃん!」


 翔子が反応した。


「人違いじゃねぇのか? 喧嘩しかできねぇんだよ、あたいは」


 つづらが、自分の拳を見つめた。指の関節にタコができている。殴り慣れた拳だ。


「……親も先公も、あたいにゃ近づいてこねぇ。怖がってんだよ。こういう性格、格好してっから、誰も寄ってこねぇのさ。奴らをブッ飛ばすのは気晴らしにすぎねぇ……」


 つづらの声が、少しだけ——震えていた。


「本当でしょうか。あなたの学校の人がかなり被害に合っているようなんですが……」


「知るかよ! 学校なんざ行ってねーし、あたいの憂さ晴らしに、あいつらはちょうどいいんだよ!」


 そのとき。


 後ろで、小さな足音がした。

 珠だった。

 睦の後ろに完全に隠れていたはずの珠が、一歩、前に出ていた。膝が震えている。顔は真っ青だ。それでも、つづらを見ていた。


「あ、あの……わ、私も……」


 声が震えている。蚊の鳴くような声だ。


「私も……誰も近づいてきません……」


 つづらが眉をひそめた。


「私が……怖がりすぎるから……みんなに気を遣わせて……迷惑がられて……誰も、近づいてこなくなって……」


 珠の目に涙が浮かんだ。


「でも……この人たちは、笑わなかった。怖がりでも、いいよって……」


 珠が涙を拭いて、つづらを見た。目が合った。


「だから……つづらさんも、大丈夫です……きっと」


 空き地が静かになった。

 つづらが、珠を見つめていた。十人のヤンキーを前にしたときとは全然違う目で。


「……テメー、見た目よりガッツあんじゃねぇか」


 珠がびくっとした。


「いや、褒めてんだよ」


 つづらが頭をがりがりと搔いた。


「しゃあねーな……」


 そして——私を見た。


「姐御……あんたは叱ってくれた。このチビは、震えながら出てきやがった。……そんなやつら初めてだ」


「姐御……?」


「そうだ。あんたはあたいの姐御だ。いいな」


 姐御——。この国の不良文化における敬称だ。年上の、尊敬する女性に使う——と。なんだか自分でもよくわからない感情だ。でも、悪い気はしなかった。


「……好きに呼んでください」


「よし! いっしょにやってやるよ。ヒロインとか、よくわかんねぇけど——あたいがいりゃ、どんな悪党でもやっつけてやらぁ!」


 つづらが拳を突き上げた。そして私に向かって深々と頭を下げた。脚を開き、手を膝に置き、独特の角度で。

 翔子たちが駆け寄ってきた。翔子は親指を立てている。睦は安堵の表情。梵は……まだ不機嫌そうだが、珠のことはちらりと見ていた。

 珠はまた睦の後ろに隠れていた。さっきので勇気を使い果たしたらしい。


 六人目の候補生。蛇目つづら。巳のヒロイン。


 ---


 変身ブレスレットを渡した。紫色。


「二回タップしてください」


 つづらがブレスレットを手首に巻き、タップした。

 紫色の光が全身を包む。光が弾け、変身完了。

 蛇をモチーフにしたヘルメット。紫のボディスーツ。ベルトには光線銃と多機能ツール——

 ——そして、背中に。

 大きく「喧嘩上等」と刺繍のような文字が浮かび上がっている。


「おお!カッケーじゃねえか!」


 私含め、全員の顔が引き攣っていた。アルケオンの最先端テクノロジーで製造された変身スーツに、この国の漢字「喧嘩上等」。

 いったい誰の趣味だこれは!

 ——センターがこんなデザインをするはずない……。指導官だ。ダルマイヤック指導官の仕業に違いない。絶対にそうだ。

 

 つづらがスーツを確かめるように、拳を握った。そして——シャドーボクシングの要領で、パンチを繰り出した。ワンツー、フック、アッパー。続けて蹴り。ローキック、ミドル、ハイ。空気を切る音が鋭い。


「おお! スピードもめっちゃ早え!! なんだこりゃ、体が軽いぞ!」


 つづらが嬉しそうに跳ね回っている。格闘能力の高い子がスーツの身体強化を受けると、こうなるのか。正直、少し怖い。いやかなり怖い。


「つづらさん、一つ約束してください」


「なんだよ?」


「この変身スーツの力は、絶対に一般人に対して使わないでください」


 つづらが、私を見た。


「昨日みたいな喧嘩……彼らは悪事を働いたかもしれませんが、本当の脅威じゃありません。変身スーツの力の前では、彼らも一般人です。変身して殴ったら相手は無事では済みません。約束できますか」


「……」


 つづらが、自分の拳を見つめた。変身スーツに覆われた拳。この拳で人を殴ったら——。


「……わかった。約束する。第一、奴ら相手に変身するまでもねぇ」


「ありがとう。では、改めて——ようこそ、ヒロイン候補生へ」


 通信デバイスが鳴った。


「ニャンデーレ君。つづら君の加入を確認した」


「はい、指導官」


「誰だ……?」


 つづらは私の耳もとを覗き込んだ。


「なかなか面白い子だな。……蛇目つづら君。君は今日からブッシュバイパーだ」


「ブッシュバイパー……?」


「美しく、強く、そして恐れられる毒蛇。君にぴったりの名前だと思わないか」


 つづらが——ニヤリと笑った。


「毒蛇か。悪くねぇ」


 その笑顔は、さっきまでの威嚇ではなく、純粋な喜びだった。


 ——ブッシュバイパー。美しい毒蛇。


「よーし! 新メンバー歓迎会だ!」


 翔子が駆け寄ってきた。


「なんだよ、馴れ馴れしいな——」


「あたしのことはサル子って呼んで! みんなそう呼ぶから!」


「……サル子ぉ? へっ、まんまじゃねーか」


「へへ!」


「つづらちゃん〜、私は睦〜」


「うわ、ほんとに乳でけーな!」


「あはは〜、ムッちゃんって呼んで〜な〜」


「へっ!テメーもいつまで隠れてくる気だよ!」


 つづらは睦の後ろの珠に声をかけた。


「あ、あ、あの、わ、私は、た、珠です……」


「…………」


 梵がつづらを睨んでいた。


「……おい、ちんちくりん。まだ怒ってんのか」


「……ちんちくりんは撤回して」


「事実だろ」


「……撃つ」


「梵さん!!」


 前途多難だ。

 しかし——つづらの目は、さっきまでの敵を見るような目ではなかった。直感だがこの子は優しい。多分。


 孤独に生きてきた少女が、こうして私たちに仲間として囲まれている。怒鳴って、毒づいて、威張り散らして——でも、正面から相対すれば、逃げることなく受け止める。

 そんな彼女も、今日からヒロインの卵だ。


 目の前では、変身して光線銃を構えようとする梵を、翔子と睦が抑えようとしている。珠はオロオロし、つづらは大笑いしている。


 やっぱり

 ——こいつらなんかヒロインじゃない。

 六人になっても、その感想は変わらない。

 でも、何か悪くない。

 てか、


「やめなさーい!」


 路地裏に私の声が響いた。

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