帰省・二日目
翌日、暇なので午後は町を散歩した。
当時より家電店やスーパーが出来て賑やかになった。
逆に子供の時にあった小さな店は閉店していた。
そんなもんか。田舎あるあるな話だ。
喫茶店に入ると高校時代の友達の美紀とたまたま会った。
二人で「お互い年取ったね」と言いながら雑談。
良くある昔話に花を咲かせるパターン。
高木君の話題になる。
「うちの旦那も野球部だったけど高木君、付き合い悪くなったって言ってたわ。結婚したからね」
「そんなもんよ。昔の薄い付き合いなんて簡単に切れるでしょ」
素っ気なく答える私に美紀は、
「そういう冷めたところ、全然変わらないね」
と笑った。
適当に雑談して別れてスーパーで買い物。今日は私が夕食を作る事にした。
帰宅して夕食を作り始める。
「手伝おうか」
母が声を掛けてきたから「大丈夫」と答える。
「じゃあ、洗濯物を取り込むね」
母は玄関へ歩いて行った。
人参を袋から出す手が止まった。
彼の下着の匂いを思い出す。
「まっいいか」
すぐに袋から人参を出した。
夕食は煮物と焼いた肉と味噌汁とサラダとご飯。ごく普通の料理。
一人暮らしでも料理はしているし味は人並みだと思っている。
母と二人で先に食事。
「煮物、良く出来ているね。美味しいよ」
母に褒められて少し嬉しい。
姉が帰って来て一人で食べた。
「ごちそうさま。美味しかったよ」
姉は笑って言って入浴する。
彼が帰って来た。なぜか緊張する。
料理を出すと「いただきます」と言って食べた。
その間、私は食器を洗った。
「ごちそうさま」
「どうだった」
「ああ、美味かったよ」
何の変哲もない会話だけど妙に緊張するのは私が疑いを抱いているからか。
「いつも遅いの?」
「ああ、今日は野球部の奴と飯食って話していたから」
悟られないように「そうなんだ。今でも高校の友達と会っているの?」と訊いた。
彼は「まあな」とビールを飲んで答える。
彼の疲れた表情と若い時に感じなかった憂いに長い歳月を感じた。
彼の食器を台所へ持って行った時、
「あっ、おかえり。もう食べたの?」
姉が浴室から出て居間に来た。
「ただいま。じゃあ風呂入る」
彼は席を立って居間を出た。
「今でも昔の友達と会っているのね」
私が言うと姉は、
「いいじゃない。私も会っているから」
と冷蔵庫から缶ビールを取って答えた。
それ以上話すのを止めた。
二人の関係に立ち入るつもりはない。
母は自分の部屋でテレビを見ていた。
「お母さん、もう寝たの?」
「いや、起きているよ」
母に障子越しに声を掛けて自分の部屋に入る。
何となくため息をついた。




