帰省・一日目
「ただいま」
ある夏の日の夕方、久しぶりに実家に帰った。
「お帰り」
母が迎えてくれた。二年前に父の葬儀に来て以来の帰省だ。
母と夕食を済ませて居間でのんびりしていると姉が帰って来た。それから遅れて高木君が帰って来た。
姉夫婦はこの家に住んでいた。
「久しぶりね。何日居られるの?」
姉がビールを飲みながら訊いた。
「四泊五日。美容院が改装しているから」
私が答えると高木君は「へえ」とだけ答えた。
高木君との事は家族に話していない。
結婚は遅くて姉夫婦に子供はいない。
「男は出来たの?」
姉が言うと私はため息をついた。
「先月別れたわ。性格が合わなくて」
「残念だったわね。私と違って顔は真面目だけど思った事を言っちゃうからね。私はこんな感じで顔も心もサバサバだけどそういうところが損しているよね」
姉の言う事にムカつかない。
自分でもそう思うし良く言われる。「意外と言うんだね」って。
『意外』な私──まあ遺伝かな。
「本当、私の悪いところが似てしまったのね」
母が笑って言った。
「そんな事ないよ。男運が悪いだけ。お姉ちゃんみたいに素敵な人と会えたらなあ」
私が言うと姉は「そう? 私達はくっついたり離れたりを繰り返して腐れ縁でこうなっただけ」と気だるく答えた。
「高木さんはそう思っている?」
私は何気に訊いた。
「そんな事はないよ」
すっかりオジサンになった彼は戸惑いながら答えた。もちろん私に悪意はない。
「じゃあ風呂入る」
彼は居間を出た。
「流石に女三人の中だと居づらいか」
母が小声で言って笑った。そういうところは確かに似ている。
「片付けるわ」
姉が食器を持って台所へ行った。
私はのんびり居間でテレビを見たりスマホを触りながら暇を潰した。
姉が浴室から出た後で私も浴室に入った。
洗面所で服をかごに入れて何気なく彼のトランクスをつまんだ。
好きな柄は変わっていないのね。
扇風機の風が彼の下着を通して私の顔に吹いた。
甘い香水の匂いがした。
姉の下着を試しに嗅いでみたが同じ匂いはしなかった。
まさか浮気? それとも気のせい?
気になりながら風呂場でシャワーを浴びた。




