↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来の子供たち  作者: Naoko
PR
33/41

33. 光

 ヨルクは、百年越しの刺客に驚くが、騒ぎが大きくなったのにも驚いていた。


 少し前まで、ヨルクは引きこもり少年だった。

友達はいなかったし、自信がなく、家族と会話せず、消えてしまいたいとさえ思ったこともある。

ラーウスに来てからも不満が多かった。

 それなのに、今、一人ぼっちでないと気付かされる。


ティアが、自分を庇って怪我をし、

美女のお姉さん方が、自分のために戦い、

ユーリスが、自分を守ろうとしている。


 彼らにとって、自分は他人だ。

ヨルクは、なぜ彼らは他人の自分を守ろうとするのだろうと思う。

前にいた社会ではありえない。

そこでは、人の命は軽かったのだ。



 ヨルクはユーリスを見る。

その横顔は真剣で、ヨルクを守ろうとする強い意志が感じられる。


 ユーリスの性格は、穏やかで、どちらかというと地味で、偉ぶらない。

自分に固執しないし、考えを押し付けたりもしない。

ただ、要所要所で指示を出す。

周りを見て、ここぞという時に声を上げ、皆がそれに従う。

 ユーリスは、皆から信頼されていた。


 そんなラーウスの子供たちは自立していた。

お互いに助け合いながら、自分に責任を持っている。


 それは、彼らが自然の中で生きていたからだった。

自然では、わずかな油断が大事に繋がり、命を危険にさらすこともある。


 しかし都市で育ち、引きこもっていたヨルクにとって、

自然の中で、何が危険で、何が安全なのかを判断するのは難しい。


 今、ヨルクには、ユーリスの後ろに隠れていることしかできなかった。




 ギルアは、レンキの義手をダンダンダンッと続けて打つ。

レンキは後退りする。


 レンキの義手は、ラーウスの地形に合わせて丈夫に作られていて、

防護できるようにも設計されている。

とはいえ戦闘用ではない。


 ダンはユーリスに聞いた。


「あの攻撃は変じゃねえか?」

「ああ、義手の、しかも一点を狙っている」

「レンキの義手は武器用じゃなかったよな」

「簡単には壊れないが、盾とは違う」

「それはつまり」

「つまり、ギルアは義手の弱点を狙ってる」


 ヨルクは驚く。

「え? それって反則じゃないの?」


 するとダンは呆れる。

「は? 何言ってんだ。これは命をかけた戦いだ。反則なんてない」


 その時、ピーンと音がして何か飛んだ。

それはレンキの義手の小さな部品だ。


 レンキの義手はダランと下がり、動かなくなる。

義手の弱点は、その小さな部品にあった。


 普通、その部品が外れることはないが、集中的に攻撃されれば別だ。

盾ではないので、そんな状況は想定されていない。

そして、その部品が外れてしまえば、

動かなくなった義手は重みを増し、体のバランスが取りにくくなる。



 レンキは義手を外した。


「これで楽になりました」


 そう言ったレンキは、慌てている風ではなかった。


「そうか?」


 ギルアがあざ笑うように言う。


「軽くなったからと言って、すぐに慣れるわけじゃない」


 それがギルアの狙いだった。


 片手でもレンキは強い。

義手を外したレンキが、感覚を取り戻すまでの短い時間が勝負だ。



 レンキは、ギルアが強くなったと感じていた。

彼の成長が、自分の中で眠っていたものを呼び起こそうとしている。

 それに快感を覚え、

「ああ、自分はまだその気持ちを捨ててなかったんだ」と思った。


 ラーウスでの戦闘が終わって数年が経っていた。

レンキは、その強さ故に、抑止力となって人々を見守っていた。


 戦いで人口は減り、残った者たちは平和を望んでいる。

少々の小競り合いはあっても、騒動までには至らない。


 ところがギルアは、ラーウスの次の火種になろうとしている。

ここでギルアが勝ち、ヨルクの命を奪えば、ギルアに挑戦する者たちが出てくるだろう。

そうして争いが広がる。

レンキを失えば、今のラーウスに耐える力はない。


 レンキは、ギルアを止めるのは、自分の役目だと思った。

「ギルアと共に、自分の心の奥にあるものも葬ろう」

 レンキは、そう決心する。


「私は、あなたに討たれても、相打ちにはできます」


 それを聞いた全ての者たちが戦慄く。

分かっていたけれど、レンキに勝ち目はないのだ。


 ギルアが構えると、レンキも、ゆっくりと構える。


 その異様な雰囲気に、

ヨルクも、大変なことになったと思った。


 もちろん、レンキが負ければ自分の命が危ないのは分かっている。

とはいえ、レンキが負けるはずはないと思っていた。

いや、レンキは「相打ち」と言った。

それはレンキは、死ぬのを覚悟しているということだ。

「誰のために?」それは「自分のためだ」とヨルクは気付く。



 ヨルクは思わず

「だめだー!」と叫んだ。


 それはヨルクにとって久しぶりに出す大声で、自分でもこんなに声が出るのかと驚く。


 すると、湖の方からゴゴゴと唸るような音が聞こえた。

それから一筋の光が稲妻のように走り、辺りは光で何も見えなくなり、爆発音がした。

 それは一瞬のことだった。


 ヌンが、

「ご主人様ー!」

 と叫んでヨルクを突き飛ばし、ヨルクの上に覆いかぶさる。


 最も、ヌンは雄しべの棒なので、ヨルクを覆うことはできない。

できたのは、花粉袋でヨルクの頭を覆うくらいだ。


 とにかくヨルクは無事だった。

「ご無事で何よりです」

 と言うヌンに、ヨルクは苦笑いする。


 ご主人様を守ろうとするヌンが可愛くもあるが、複雑な気持ちだ。

そして「前にも同じようなことがあった」とヨルクは思う。


 宇宙ステーションが攻撃され、自分の部屋が吹き飛ばされた時、ヌンが守ってくれたのだ。

ヨルクは、ふと、あれも自分を狙っていたのではないかと思う。


 宇宙ステーションのバリアは簡単には破られない。

しかも自分がいたのは住居地区で、攻撃にしてはおかしいと思ったのだ。

それは内部から仕掛けられた爆発ではなかったのか。


 ヨルクがそんな事を考えていると、ダンが、

「これは何だ?」と言った。


 ギルアの立っていた所には大きな穴があり、彼の姿はなかったのだ。



 穴の中は黒く焼け焦げて煙が上がっている。

穴の近くにいるレンキは、怪我をした様子もない。

ぽっかりと開いた穴があるだけで、何の変化もなく、皆無事だった。


 ダンが穴に近付き、恐る恐る穴の縁を触ろうとする。


突然、「触るな!」

とアルアドが怒鳴った。


 皆がビクッとしてアルアドを見る。


「放射能が残っているかもしれない」


「放射能?」



 それはヨルクでも分かった。

核兵器だ。


 とは言うものの、核兵器は広い地域を爆破する。

ヨルクは、一人だけを消すことのできる核兵器なんて聞いたことがなかった。

いや、自分がいなくなった後に開発されたかもしれない、と思う。


 宇宙で、数えきれないほどある恒星のエネルギーをコントロールできる兵器があると言う事だ。

しかも、それが発動したのは、自分が叫んだ後だった。


 ヨルクは、自分がこの全ての騒動に関係しているのではと思い始める。


 宇宙ステーションが爆破され、

百五十年後の惑星ラーウスでも命が奪われた。

それらは、自分の知らない内に起こった。


 ヨルクは、これからも何か起こるのではと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。