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未来の子供たち  作者: Naoko
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24. エルナト到着

 集落の手前には、ラーウスでは珍しい平坦な地があった。

そこは、この惑星で最初に作られた空港だった。


「だった」というのは、植物で覆われ、空港には見えないからだ。


 ラーウスは「植物の王国」と言えるほどの惑星だ。

植物が育つ勢いは凄まじく、空港として整地しても、草取りに追われる日々となる。

十年に一度しか使わない空港など、草取りしても無駄なのだ。


 それで空港はサライに移ってしまった。

サライは、乾季になって水が引くと草の生えない乾いた平地が現れる、という手間いらずの地だった。


 ということで、放置され荒れていたエルナトのミニ空港は、

十年に一度、ウィルディス王国の使者がやって来る時にだけ、草刈りと低木伐採が行われる。


 使者たちは、先ず、宇宙空港サライに着陸する。

そして小型飛行艇でエルナトへ向かう。


 もしヌンが火傷して崩れなければ、サライからここへ飛んで来れたかもしれない。

ヌンは、ラーウスの植物(の子孫)から作られた有機飛行艇なので、自分で何とかするだろう。



 さてエルナトの住民は、ヨルクを喜んで迎えてくれた。


 ここも子供たちが多かった。

大人たちの多くは採集に出かけているので、全員が集まれば、ラーウスで最も大きい集落になる。


「おばば様!」とティアは初老の女性に抱きつく。

名前はマノア、肝っ玉かあさんのような人だ。

戦闘の中、孤児たちを救い出し、エルナトに隠すのを主導した勇敢な女性だ。


 そして、ユーリスの父親のアルアドもいた。

ニケも嬉しそうに父親に走り寄る。

反対に、ユーリスは、アルアドがいたことが「意外」という風だった。


 エルナトとサライの間の道は、修復している最中だ。

アルアドがエルナトへ戻っているとは思わなかったのだ。


「何かあったのでは」とユーリスは心配する。

アルアドは「別の用事の途中でエルナトに戻り、ヨルクを迎えた後、翌日には出かける」と告げた。



 さて彼らの横には、プラチナブロンド髪の娘が立っていた。

娘の名は、シャウラ。

彼女は、色白だった。


 ヨルクは、その美しさに釘付けになる。

エルナトに着いて、緊張していたことなど吹っ飛んでしまった。


 ラーウスの人間全てが日焼けしているわけではない。

ナタリで機織りをしている人たちの中には、日焼けしてない者もいた。

つまりインドア派かアウトドア派かの違いだ。

驚くほどではないのに、そんなことなどヨルクの頭に浮かばない。


 ヨルクの頭の中では、

色黒組(もとい、日焼け組)の、ティアとアニタ

色白組の、シャウラ

に分けられる。


 シャウラには、宮殿の高貴な人々にも劣らない気品があった。

今まで散々、ラーウスは未開の地だと下に見ていたヨルクだったのに、

「これほど品のある王族や貴族はいない」と思ったりする。


 そんなヨルクだけれど、王族をよく知らなかった。

ヨルクの行っていた学校には、王族の生徒はいなかったのだ。

その代わり、わがままで高飛車な貴族の生徒たちはいた。


 王族が学校を訪問することはあったので、

そんな時、高慢ちきな貴族の子たちは王族に擦り寄ったりする。


 ヨルクはといえば、

その他大勢、群れなす羊の一匹として王族に挨拶したことがある、という程度の接触でしかない。


 だからアニタとワルトから、

戦いを終わらせ平和をもたらした果敢な王、

ユーリスの先祖(の兄)が有名な将軍だった、

などという英雄話を聞いても、盛られた話しか思えず、ピンと来なかった。

しかもヨルクがいたらしい過去では、この王子と将軍は、まだ幼児だったはずだ。



 とにかくヨルクはシャウラを見ながら、

「なぜ色白」

「王族でも、これほど美しい姫はいただろうか」

「ど田舎のラーウスに、宝石のような」

 などの考えがぐるぐると回り、他のことは何も考えられない。


 そんなヨルクに気付いたのか、シャウラがヨルクを見てニコッと笑った。

ヨルクは目を逸らす。

自分がシャウラを見つめていたことなど知られたくなかった。



 さてヨルクも皆も泥だらけだったので、体を洗うことにする。


 エルナトにも温泉があった。

露天風呂で、日が落ちた後は涼しく、湯に浸かると気持ち良い。

男の子たちは、湯船でワイワイ騒ぎながら、エルナトへ戻ってきたことを喜んでいた。


 そうして、ヨルクがそろそろ出ようと思った時、シャウラの話になった。

ヨルクは聞き耳を立てる。


 すぐに、シャウラの色白の理由は分かった。

彼女は刺繍が得意、つまりインドア派だ。


 アニタの服もシャウラが刺繍していた。

ヨルクは刺繍が見事だったのを思い出し、シャウラを思ってぼーっとなる。


 シャウラは、ヌンが様々な色の糸を持ってきてくれたのを、とても喜んでいた、という話になる。

湯船の傍にいたヌンも嬉しそうに聞いている。


「ね、ご主人様」

 と言って振り返ったヌンは、顔色を変えた。

いや、ヌンには顔が無いので顔色が変わるという表現はおかしいが、正にそんな感じだった。


「ご、ご主人様ー!」


 ヨルクは、湯船の端にプカ〜ッと浮かんでいた。


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