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7/10

08 彼女かわいいじゃん

07は後からアップします。宇宙で戦争している映画的な……


 将真(しょうま)くんの学校の駅に降り立つ。


 文化祭のお客さんなのか、駅構内はすでにごった返していた。駅誘導のスタッフがメガホンで「走らないでくださーい」と注意している。


 つきました、とインストで連絡してから、少しそれた道に避難してぼうっと立ってると声がした。


「まどかちゃん」


 将真くんはすぐそばにいた。セルリアンブルーのTシャツを着ている。下はグレーのワイドパンツ。上はクラスTシャツだろうか。前に着ていたパーカーと同じ色だった。


「少し遠くからも声かけたんだけど」


 将真くんは私の手のひらを取る。


「めちゃ混んでますね」


 そう言ってするっと手をつないでくる。


 混んでるからはぐれないようにという意図はわかるけど、流石に学校周辺では気が引ける。そう思って、手を引き抜こうとしたが離してくれない。


「あの、学校行くんですよね? 友だちとか、先生とかに見られたら嫌じゃないですか?」

「全然」


 大学の学祭でも、ものすごく自然に手をつないできたけど、大学というのは通ってる人の頭数も多いし、いい意味でみんな周りに関心がない。しかも院生なんて研究室以外では空気みたいな存在である。それに比べて高校というのはもっと関係性が密だ。

 しかも私は年齢詐称をしている。お天道様に顔向けができない気がして、私は縮こまって小さくなって歩いた。


 駅の少し先からすでに列ができていて、列は止まったり進んだりだ。ちょうど止まった時に妙な視線を感じた。ガードレールに座った数人の男の人がこちらを見ている。品定めの目だったが、ふっと見られている感じがなくなった。


「なんだ、ショーマの連れじゃん」


 将真くんはにこやかに会釈をする。そして、男の人たちの前を通り過ぎると少し(かが)んで、耳打ちした。


「あれ卒業生。卒業生は取り締まりの対象外だから」

「な、なるほど〜! これは防犯のためだったんですね」

「はは、防犯って」


 私はこれ、と言ったとき繋いだ手を持ち上げた。


「招待日は卒業生もけっこう来るから。たまに大学行って羽目外してる先輩もいるので。ちょっと心配でした」

「大学デビューってやつですね〜」

「ふっ」


 将真くんがウケている。


「まどかちゃんは高校のときとあまり変わらない?」

「変わりませんね……」


 そう、本当は卒業して5年目だというのに。見た目も精神年齢も恋愛経験値も見事に進歩していない。


「他校の文化祭行ったことありますか?」

「ないです」

「そうなんだ」

「文化祭で他人が学校に入れるってこと知りませんでした」

「他人……」

「あああ、突き放す意味はなく。家族以外ってことです」

「はは、まどかちゃんの学校は学内参加だけだった?」

「えっと」


 口を開きかけて、あれ? この辺の学校って入場自由がふつうなんだろうか。もしくは最近の傾向なのか。前にあった感染症のかねあいもあるのだろうか。だとしたら喋り過ぎるとボロがでないか。

 答えにまごついていたら、また将真くんが別の先輩らしき人から「ショーマ」と声をかけられた。助かった。


「彼女かわいいじゃん」

「あざす」


 彼女? 彼女ではない。勢いよく将真くんを見上げる。


「訂正したら、しつこく声かけられるよ」


 そういうものなのか。でも目の前で「ショーマが彼女連れてきた」と数人で伝言ゲームが始まった。一抹の不安を覚える。


 それから彼女発言の後にも恐ろしいこと言っていたような。


「かわいいですよ」


 将真くんは先回りをする。


「かわいいです」

「こんなんでもですか」


 私は自分の服を見る。グレーのTシャツに黒のパンツスタイルで、いつもより少しダボっとした感じだ。それと顔隠しにキャップを被っている。


「そういうの、むしろ好き」


 真顔で言われて顔が熱くなり、キャップをもっと深く被る。隠密行動に備えたコーディネートで褒められてしまった。

 私は白々しく話題を変える。


「将真くんでも、あざすとかいうんですね」

「あの先輩、そういうの好きだから。ふだんは使わないです」


 意外と高速でいろいろ考えてるんだな、相手に合わせて。私は将真くんといると居心地がいいけれど、実はものすごく気を遣わせているんじゃないか、とちょっと心配になった。



 そうこうするうちに、やっと列が進んで校門の前までくる。文化祭用のゲートを潜ったとたん、女の人の声が飛んできた。


「あっ!ショーマくん! やっとつかまった!」


 見ると、スタッフ証を腕に巻き、本格的な望遠レンズをぶら下げた若い女性だった。本部テントらしき一角から、大きく手を振っている。


「あ、あの人。前に制服着てきてって頼んできた人」


 カメラマンって女の人だったの?


 こちらに足早に向かってくるカメラマン、もといこの場合はカメラウーマンなのか、とにかくその女性になんとなく不安を感じて、私は繋いでいた将真くんの手をぎゅっと握ってしまった。




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