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アフター1 同棲ではないよ?

 無事に最愛の恋人の美月と同じ大学に合格することができて、実に素晴らしいキャンパスライフを送りだして数ヶ月のこと。

 単位とかは問題ないよ?

 そんな学業に響くほどの爛れた生活は送ってないって。僕はちゃんと美月を幸せにするって決めてんだ!

 まあ、そんな夏のある日のこと。

 

『────平坂くん、就活とかってどんな感じ?』

 

 と、魁星さんから連絡があった。

 大学一年でまだまだそんなに考えれてなかったよ。計画性もクソもないって言われたらそうだけど。

 

『暇だったらオレの働いてる会社とか見学に来たりしない? オレに言ってくれれば、話は通しておくから』

 

 と。

 僕はエプロンをつけて料理してる美月の背を見つめて、少し考える。正直アリな話だと思った。実際に受けるかどうかとかは一先ず置いておいて。選択肢の一個として。

 

「着いちゃったよ」

 

 会社名を聞いて驚いたが、相当な有名企業だった。面接を受けに来たとかじゃないのにとんでもない緊張を覚えてしまう。

 僕はネクタイを締め直して、正面入り口から社内に入る。受付の人に魁星さんからの紹介で来たことを伝えると、数分ほどで。

 

「お疲れ様、平坂くん」

 

 ワイシャツ姿の魁星さんがやってきた。

 

「お、お疲れ様です」

「ははっ、緊張してる?」

「は、はい」

 

 それはもう。

 

「とりあえず、会社見学していこうか」

 

 僕は魁星さんの後ろについて会社をいろいろと見て回る。大手って事務所オシャレなんだなぁ……と。感想が浅い? 知ってる。

 

「さて、と。それじゃこれで会社見学は終わりだけど……お昼どうする? オレも休憩入るつもりだけど、一緒に食べる? それとも一人で食べる?」

「せっかくなので一緒しても良いですか?」

「ふふ。いいだろう! 未来の義弟の頼みとあれば、断ることもない。それじゃちょっと用意してくるから待っててね」

 

 そう言って魁星さんが早足で移動を始めた。僕は魁星さんを見送って……んー、何をしてようか。特にすることもないし、スマホいじってるとか印象悪いかもだし。

 それに、魁星さんだってすぐ戻ってくるだろうし。

 

「ちょいちょい、そこの大学生くん」

 

 僕は呼び声のした方へ体を向ける。

 立ってたのは魁星さんと同じぐらいの年齢の長い茶髪をヘアゴムで束ねた女性社員。

 

「どうかしましたか?」

 

 僕が首を傾げると「冬野と一緒に会社見学してたでしょ?」と。

 

「あ、はい。魁星さんにどうかと誘われたので」

「そっかそっか。《《女装って今でも続けてる》》?」

 

 女装は必要となれば────────。

 

「…………はい?」

「あれ? 女装の子だよね?」

 

 こ、この人は僕の過去を知っている!?

 

「ま、まさか、学園祭に?」

「うんうん。まあ、始まりは冬野からなんだけどね?」

 

 三年の学園祭に来てたんですね。はは……なら仕方ないなぁ。

 あ、三年の学園祭の記憶が駆け巡る。

 

『────て感じの劇を』

『うん。もちろん却下で』

『な、なぜです!?』

『言うまであるかな? 僕は女装はまだしも、そんな劇まではやらないからね?』

『…………ちぇー』

 

 そうだ、三年の僕はどうにかこうにかヤバそうな劇は回避したんだ。どこか並行世界の僕が歩んでそうな否定しきれない内容の劇は。まあ、どこから金出たんだっていう白いドレスは着させられたけど。いや、どこからか……うーん。

 ん? あれ? もしかして、僕はドア・イン・ザ・フェイスで嵌められて…………?

 

「サイン貰えないかな?」

「あっ、はい」

 

 考えてるうちに別の要求を飲んでしまったけど、まあサインくらいなら。

 

「────なら、ウチの商品の広告に出てもらえないかな」

 

 それくらいなら。

 

「喜んで、とはなりませんからね?」

「やっぱダメかぁ」

 

 魁星さんは結果はわかってたろうに。たはは、と笑う。

 

「さて、と。それじゃオレは平坂くんと食事行ってくるから」

 

 僕の右肩を掴んで言う。

 

「いってらー。平坂くん! サインのこと忘れないでね?」

「あはは、わかりました」

 

 荷物は取りに戻ってくるし、サインはその時で大丈夫かな。


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