第90話 君たちが考えてるようにはならない
「たっだいまー!」
僕が部屋の扉を開くと周防ともう一人、竹原が同時に僕の方に顔を向けた。
二人揃って、なんだか真剣そうな顔をしてる。
「……どうしたの?」
もしかして、喧嘩でもしたのかな?
せっかくの修学旅行なのに。
「なあ、平坂」
周防が口を開いた。
「う、うん?」
そしてベッドに腰を下ろしていた周防が立ち上がって、僕の両肩に手を置く。
「な、なに? 周防くん?」
周防が深呼吸をしてから、少し間を置いて。
「────お前、風呂は部屋ので我慢しろ」
そう口を開いた。
「ああ。お風呂、ね。お風呂……部屋のでね。お風呂……部屋、で、ね?」
おいおい。何を言ってんだね、チミは。
「……ふ」
「ひ、平坂……?」
「ふざけるなっ! ぼ、僕が大浴場があるって聞いてどれだけ楽しみにしてたと思ってる!」
僕は旅行先に温泉とか銭湯があったら、そこも予定に入れるタイプこ人間だぞ! ここには露天もサウナもあるって調べてるんだ!
僕が……僕がそんなの耐えられるわけないだろうが!
「お、落ち着いて、平坂くん」
「ゔぅううっ!!」
お前も、お前も僕に大浴場に行くなと言うのか。そうか。ならば。
「竹原、まずい! 今まで見たことが無いレベルだぞ、これは!」
僕の行く道を邪魔しようとするのなら。かくなる上は強行突破しかあるまい!
「邪魔だ。そこを退け」
僕の口から冷たい声が出た。
「た、頼む、分かってくれ! 平坂。お前が普通に男子風呂に入ると湯船が真っ赤になりかねないんだ」
知ったこと……か?
「それは……確かに嫌かも」
確かに特に効能とかもない、誰かの垂れ流した血で真っ赤に染まった風呂とか絶対入りたくないけど。
「…………いや、でも。何でよ?」
僕の裸にそんな力はない、と思う。
「それは、なあ……竹原」
「はい。平坂くんの女装が魅力的すぎて」
でもなぁ。
「あのねぇ……だったら僕は夏のプール授業にも参加できないでしょ?」
竹原と周防が顔を見合わせてから、ハッとしたような顔をする。
あれ、もしかしてバカなのかな?
「ほら、二人とも分かったろ? 僕が大浴場に行っても何の問題もないってこと」
よし、そうと決まれば。
「入りに行くぞー! サウナだ、サウナ! それに露天風呂! せっかくだし館内着も持ってこうよ」
僕は部屋の中にあったタオルと館内着、それと持って来てた下着を手にして二人に振り向く。
「ほら、二人も早くしなって」
僕の言葉に周防と竹原も動き出す。
「そういや。なあ……平坂」
「うん?」
「戻って来た時嬉しそうだったな」
「あ、わかる? でへへ」
「……てことは」
「そう言うことー」
周防は直ぐに分かったらしい。




