第88話 ロクデナシファンディング
「ふわぁあああ……」
修学旅行、移動の新幹線の中思わずあくびが出てしまった。普通に朝早いし。
「お、平坂。どうした? 眠いのか? いいぞ寝ても。着いたらちゃんと起こしてやるから」
そうだなぁ、ちょっと疲れてるし。
周防の言葉に甘えよ……。
「そうですよ。疲れてたら、せっかくの修学旅行がもったいないですよ。今は英気を養いましょう」
……るわけないだろ!
あっぶな! 春木がいるんだぞ。何考えてんだよ、僕は!
こんなところで寝るなんてさぁ!
「周防くんの優しさに甘えようかと思ったけど……僕もみんなと話してたいし、起きてるよ」
春木の前で無防備な姿晒すとか、派手な自殺行為だと思うんだよ。
「おや? 何ですか、その警戒心剥き出しの目は。私、何かしましたかね?」
「はは、春木さん。どの口が言ってるのかな? 日頃の行いを振り返ってみなよ」
冬野の為にではあるけど、学園祭は女装をしたわけだし。
「……というか、そんな易々と女神が何回も降臨していいのかね? 甚だ疑問だよ、僕は」
自認が女神になった気がして恥ずかしいけど、仕方ない。
「まるで私が当たり前に女装させるみたいな言い方しますね」
「春木さんならするでしょ」
僕はそのまま続ける。
「なんにせよ、僕の経済価値は証明されたわけだし? 女装して欲しいなら、それ相応の────」
対価が必要だと思うわけね、うん。
なんて続けようと思ったのに。
「聞いたか? 対価さえ払えば女装してくれるんだってよ?」
しまった! 託児施設に罰金制度導入したみたいな感じになっちゃったよ!
「俺ァ、今回持ってきた金全ツッパしても、後悔しねぇ……!」
「お前……それやったら英雄だぞ」
こいつら木刀買うよりも、もっと碌でもないクラウドファンディングに金を突っ込もうとしてるんだけど。
親が聞いたら悲しむぞ。
「…………年三回までなら大丈夫じゃないですかね?」
「どんな交渉かな?」
目を伏せて春木は咳払いしてから。
「流石にやりませんよ。新幹線の中でメイク道具広げるなんて迷惑じゃないですか」
「その言い種だと女装用の道具自体は持ってきてるんだね?」
「…………ふっ」
僕から目を逸らして笑う。
「…………」
冬野が僕を見つめてる。
「どうしたの? 冬野さん?」
「あ……ちょっと気になったことあって」
なんだろ?
「あとで……ちょっと時間いい?」
「もちろん!」
僕がそう返せば「よろしく」と冬野が言う。
「っ、ん、ふぁ……」
冬野が小さく欠伸をするのが見えた。
昨日のあの後あんまり寝れなかったのか。まあ、普通に朝も早かったもんね。
仕方ないよなぁ。




