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第49話 全然問題ないから


「燿くん…………ネックウォーマー、どう?」

「ん? ふふ……これはね、あるとないとじゃ全然違うね。僕はもう、冬の間はこれのない生活に戻れないかも。本当にありがとう、夏元さん」

「あ、うん…………喜んでもらえてよかった。ボクもポーチちゃんと使ってるよ」


 夏元がふにゃりと頰を緩めた。


「陽毬、クッキーおいしかったよ。わたしからもありがとう」

「ありがとう、美月さん!」


 冬野が「じゃ、二人とも」と自分の席に向かった。


「うん、また後でね冬野さん」


 僕らも自分の席に向かう。


「あけおめです。平坂くん、夏元さん」

 

 自分の席に着くと、春木が僕と夏元にそう挨拶してくる。

 

「あけおめ、里菜さん!」

「おけましておめでとう、春木さん」

 

 変わらないなぁ。

 夏休みほど遊びに出かけたりもしてないけど、まあまあ充実した冬休みも終わった。

 

「お二人ともどうでしたか、お正月」

「僕はまあまあ楽しんだよ」

 

 夏元も「ボクも!」と楽しそうに。

 

「去年はいろいろとありましたね」

「そうだね。いろいろと」

「ふふふ、今年も楽しみですね」

「…………」

 

 なんだろうか。

 春木が言うと含みがあるような。何かしらの企みが今も進行してるんじゃないかって思えてならないんだけど。

 

「どうしましたか? 平坂くん」

「いや、なんでもないよ」

 

 まあ、さすがに新年早々いきなりそんなのがぶち込まれてくる訳ないよね。

 いくら春木と言えどね。どの道、僕が拒否しにくい場面を選んでくるはずだから。だったら、きっと今じゃない。

 

「っと、そうだ」


 春木に会ったらって思ってたんだ。


「どうしました?」

「いやね、結局春木さんにはクリスマス以降会うことなかったから渡しそびれてたんだけど」

 

 僕はラッピングをした薄い板のようなものを渡す。

 

「……平坂くん、これは?」

「随分遅れたけどクリスマスプレゼントです。ちょっと探してみてね。これなら、春木さんに喜んでもらえるかなって思ったんだよ」

 

 中身は秋谷凛のアクリルスタンド。本人というか、ドラマのキャラクターなんだけど。

 

「燿くん、里菜さんにも買ってたんだ」


 夏元がラッピングに包まれたままのプレゼントを見つめて呟く。


「うん。春木さんも友達だからね」

「ありがとうございます、平坂くん」

 

 春木は早速ラッピングを解こうとするけど、周防が近づいてきてるのが見えた。

 

「あ……春木さん、ストップ!」

「は、はい?」

 

 よかった、手を止めてくれた。

 

「────よ、平坂。夏元」

 

 声をかけてきた周防に「あけましておめでとう、周防くん」と挨拶をする。


「あけおめ、暦くん」


 夏元も新年の挨拶を送ると。

 

「おう、あけおめ」


 周防もちゃんと返してくれる。


「それでどうしたの?」

「んー? 特には用事とかはないけど。新年のご挨拶にと思って」

「そっか。僕に挨拶するってことはお年玉の用意はあるのかな?」

「え? 俺に要求すんの? 悪い、用意ないんだけど」

「ほら、飛んでみ?」

「カツアゲじゃねーか、それ」

「はは、冗談だよ」

「そりゃよかった」

 

 プレゼントならまだしも、お金のやり取りが生まれると友情とかは破綻しやすくなるんだよ。

 

「それで、平坂たちは冬休みどうだった?」

「それは私も聞きましたよ、暦くん」

「そう? まあでも聞かせてくれよ。俺は聞いてないし」

 

 僕はさっきと同じように「まあまあ楽しんだかな」と答えれば、夏元も頷く。

 

「それで周防くんの方は?」

「ま、俺はいつも通りだよ」

 

 本当にそうなんだろうか?

 とか思っても、あんまり詮索するのも良くないだろうから。


「年末年始は普通に家で過ごして、あとは里菜と一緒にって感じで」

「そうでしたね」

「冬休みってもそんなに長くないもんな」


 夏休みほどの時間がある訳じゃないもんね。

 

「そろそろ時間だし、俺席に戻るよ」

 

 周防が席に戻ったのを見て、春木はこっそりとラッピングを剥がしてプレゼントの内容を確かめる。

 

「これは…………ありがとうございます」

「どういたしまして」

「二重の意味でありがとうございます」

 

 何が言いたいのかはわかるぞ、春木。

 感謝を伝えたってことは、つまり。


「……春木さん。周防くんには」

「はい……まだ言ってないんです」


 お互い真剣な表情、真剣なトーンでやり取りしてるけど単純に趣味の話だ。


「な、なんか重たい話?」


 夏元が心配そうに僕たちを見つめてくる。ちょっとふざけすぎたかもしれない。


「夏元さん、大丈夫だよ」

「平坂くんの言う通りです。ただちょっと他の人に話しにくいだけで。そこまで深刻な話ではありませんよ」


 夏元は訝しむような目を向けてくるけど、本当に問題はないんだ。信じてほしい。


「そう?」

「はい。そうなんです。大丈夫です」


 そして、目を伏せてから春木は呟く。


「……いつか、暦くんにも話すべきだとは思うんですけど」

「大丈夫だよ、周防くんなら」

「そうですよね。いつかちゃんと打ち明けようと思います」

 

 春木は笑みを浮かべて言う。


「ほ、本当に大丈夫なの!?」

「ごめん、夏元さん。これ本当に大丈夫なヤツだから!」


 ややこしい言い方してるから、問題は僕らにありますねぇ!

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