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第44話 球技大会と約束

 

「……負けちゃったな」

 

 僕たちの試合も終わり、今は観覧席になってる周回走路に上がる。

 

「お疲れ様です。平坂くん、見てましたよ。大変がんばりました」

 

 応援はやっぱりしてくれてたみたいで、春木が声をかけてきた。

 

「ボクたちも応援してたよー」

 

 近くには夏元と冬野、秋山もいた。

 

「ありがとね……まあ、負けちゃったんだけどさ」

「燿、お疲れ。仇は陽毬と旭が取る」

 

 そこは冬野もじゃないのか。

 

「冬野さんはどうしたのよ?」

「これはわたしの実力を客観的に評価してのことだよ」

 

 まあ、冬野がなんと言おうとね。

 

「僕は冬野さんのことも応援してるよ」

「…………ありがと」

 

 体育祭の時とは違って、応援を遠慮するってことはないみたい。

 

「それじゃ、行ってくるわね」

「秋山さんも頑張ってね」

 

 女子たちが体育館に向かうのを見送ってから、周回走路に残った春木に改めて目を向ける。

 

「それにしても、春木さん」

「どうしました?」

「うん……すごい装備だね」

「そうでしょう、この完全装備!」


 春木が両腕を広げた。


「ニット帽に耳当て、マフラーにオーバーコート。そして手袋ね」

 

 冬を完全に乗り越える気満々だね。

 体育館にも一応、大型の暖房器材とかは設置されてるんだけど……まあ体育館って広いから。

 でも、この装備なら問題ないかな。

 

「越冬装備、フルイクイプメントです。内部装備もあってホカホカです」

 

 僕も試合終わって若干寒くなってきたね。

 

「上着持ってきた方良かったなぁ」

 

 女子の試合ももうすぐ始まるし、仕方ないか。

 

「────うぁー……体育館、さっむ」

 

 僕らが話してると腕を摩りながら、周防が近づいてくる。

 

「もうちょい保健室居れば良かった」

「周防くん。足、大丈夫なの?」

「まあ歩くのには問題ないな。ちょっと痛みはあるけど」

 

 周防は春木を見ると。

 

「里菜。それ、一枚貸してくんない?」

「え? 嫌ですけど……?」

 

 そりゃそうだよね。


「なんですか、追い剥ぎしようっていうんですか? 倫理的にどうかと思います」

「里菜さんや。人聞きの悪いこと言わんでください。俺はそこまでのつもりはなかったんだ」


 春木が少し考える素振りを見せて。

 

「あ、でも。これなら良いですよ」

「え? なになに?」

 

 周防が手を差し出すと、春木はカイロをその手に乗せた。

 

「あったけぇ」

「私が温めておきました」

 

 秀吉風か。いや、木下藤吉郎って言った方が……別にどうでも良いね。

 

「ラッキー。カイロもらえるなんて……ありがと、里菜。あとであったかいなんか奢るよ」

「やりました。情けは人の為ならずですね」

 

 仲良さそうなことで。

 

「そうだ、周防くん」

「ん?」

「試合負けちゃった」

「あー……マジかー」

 

 僕も頑張ったんだよ?

 

「奮闘虚しくでしたね」

「そうそう。僕もね、ネット際で足を挫いた周防くんの意思を引き継いで必死に頑張ったんだけども」

 

 残念な結果で終わってしまったんだ。

 

「なんか俺責められてる?」

「責めてない責めてない。怪我はしょうがないって」

 

 そう、保健室でぬくぬくしてたんだろうなってのは思ったけど責めてないから。

 

「私も責めてませんよ」

「そう? なら良いんだけど」

 

 気にしなくて良いんだよ。

 

「てか女子の試合って」

 

 そうだった。

 

「もう少しで始まりますね! ほら、行きましょう平坂くん。夏元さんたち応援しないと」

「そうだね」

 

 見逃すわけにはいかない。

 

「なあ、平坂」

 

 僕らが移動して、女子の試合がいよいよ始まるってところで。

 

「どうしたの?」

「……今度一緒に出かけん?」

「今度、ね」

 

 今度って、いつよ。

 

「できれば週末に」

「ま、了解。じゃ、あとで連絡先交換しよっか」

 

 女子の試合、もう始まるから。


「詳しい話はこの試合終わってからでいいかな?」


 僕も夏元たちの応援しないとだ。





* * *





 球技大会終了後、僕は冬野と夏元に用事があると伝えて帰りを待ってもらってる。

 たぶん、周防も同じように春木に待ってもらってるんだと思う。

 

「うっし、あんがとな」

 

 連絡先を交換してから僕は平坂に尋ねる。

 

「で、周防くん。週末に出かけるのは良いんだけどね。どこに何しに行くの?」

 

 別に予定とかないんだったら、それでもいいんだけどさ。

 

「あー……ほら、そろそろクリスマスだろ?」

「そっか、そうだね」

「で、クリスマスプレゼント買おうと思ったんだよ」

「もしかして春木さんに?」

「そうそう……それで、良かったらプレゼント選び手伝ってくれんかなって」

 

 なるほど。

 にしてもクリスマスか。冬野ルートだとクリスマスのイベントがあったね。まあ、それもなくなったんじゃないかな。


「なんで僕?」

「里菜を誘うわけにもいかないし、他の女子ってのもなぁ。で、里菜と仲良い平坂ならって」

 

 ふむふむ、僕が適任だと。


「ん…………?」


 あ、メッセージ。


「春木さんからだ」


 なになに?


『今、暦くんと居ますね?』


 僕は辺りを探す。

 だけど、春木は居ない。見当たらない。

 え? エスパーなのかな?


「どうした、平坂?」

「ん……ちょっと待って、周防くん」


 春木から『おおよそクリスマスプレゼントを買いに行くから選ぶのを手伝って欲しい、といったところですかね』と送られてきた。

 

「…………おお、幼馴染すげぇや」


 完全に読んでるね。


「平坂ー?」


 お前読まれてるぞ、周防暦。


「ん?」


 そして春木からは僕もちゃんとプレゼントを買うように、と。


「そうだね」


 せっかくだもんな。僕も冬野たちに何か買おっと。はい、常日頃の感謝を込めましてね。

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