第43話 十二月、朝
「おはようございます。平坂くん、夏元さん」
「おはよ、春木さん」
学園祭が終わってから、またしばらく。
十二月に入っても、僕はいつも通りの日常を過ごしている。
「おはよ、里菜さん」
夏元と僕は鞄を机に置いて、上着を脱ぐ。
「それにしても、最近は一段と冷え込んできましたね」
秋も終わり、いよいよ冬到来ってところだろうか。ちなみにここでは雪は降っておりません。地域によるよね、降雪とか。
「そうだね。こんなにも寒いと家から出る覚悟がなかなか決まらなくなるよ」
「わかります。というか、布団から出れないですよね」
それもわかる。
でも、僕は冬野と夏元と一緒に登校したいからなんとか出てくるんだけど。
「寒すぎて寒すぎて、朝はゆず茶が欠かせなくなりました」
「おお、ゆず茶ね」
冬になるとスーパーとかでよく見るよね。
「それに制服の下に結構装備してるんですよ。タイツ履いたりとか、インナーで着込んだりとか」
うんうん。
「タイツかぁ」
タイツもいいよね。
黒タイツとスカートの組み合わせもとっても素晴らしいと僕は言いたい。提唱したい。
「あれ? 夏元さんは大丈夫なの?」
タイツとか履いてるようには見えなかったけど。
「うん、ボクは大丈夫かな」
春木は「まあ、私は人一倍寒さに弱いので。こういうのは欠かせないんですよ」と苦笑いする。
「そっか。風邪引かないようにね」
「はい、ご心配ありがとうございます。これからも完全防備で今年は越冬しようと思います」
大丈夫大丈夫って言って風邪拗らせたら大変だもんね。
「夏元さんも気をつけてね」
「ありがと、燿くん」
鞄から物を出して準備してると、春木が「そういえば」と呟く。
「どうしたの? 春木さん」
僕は教科書を引き出しの中に入れて、準備を終わらせてから春木の方に身体を向ける。
「もうすぐ球技大会ですよ」
「そうだったそうだった」
球技大会があるってのを聞いた時『そういえばあったなぁ』なんて思った。
体育祭、夏祭り、運動会のイメージがどうしても強いけど……球技大会もあったね。
体育館にみんなが集まる中、体育館から離れた教室で……っていうシチュエーションの方が記憶に残りすぎてて、正直それが球技大会でのイベントだったことが頭から吹っ飛んでたよ。
「それで、バレーボールでしたか?」
「…………バレーボール、それは世界一の競技人口を誇るスポーツ。ルールは単純。ボールを落とさなければ、基本的に相手にポイントが入ることはない」
バスケや野球、サッカーを凌ぐ競技人口なのだと。
「へー、そうだったんだ。ルールはある程度は知ってたけど、競技人口って世界一だったんだ」
夏元が驚きで目を見開く。
学園の部活しか見てないとなかなか実感湧いてこないもんなぁ。なんかもっと他のスポーツで競技人口多いのある気がするよね。
「割と誰でもできるからね」
老若男女問わず。
「それに初心者でもルールとかも覚えやすいし」
細かいのはちゃんとあるんだろうけど。
とりあえずはボールを落とさなければいいっていうのはわかりやすいし、接触とかでの怪我の危険性も低いからいいよね。
いろんなところで突き指の可能性があるにはあるけど。
「どんなスポーツであっても、私はできませんけどね」
春木が肩を竦めて自嘲する。
「でも、バレーは分かりやすくていいですよね。見てて飽きませんし」
どのスポーツもルールさえわかってれば、観戦も楽しめるんだけどね。
「スパイク決まっても盛り上がりますし、レシーブ拾っても盛り上がりますから」
それに加えてブロックが完璧に決まっても盛り上がるんだよね。
「球技大会で平坂くんと夏元さんがスパイク決めたり、レシーブあげたりできるよう応援してます」
春木に言われた夏元は「うん、ありがと」と笑う。
「頑張らないとだね、夏元さん」
「燿くんも、だよ?」
そうですね。
「あはは、ちゃんと僕も頑張るよ。ありがとね、春木さん」
「いえいえ」
球技大会の話で盛り上がってると。
「────何の話してんだ?」
周防がやってきて話に入ってきた。
「暦くんは呼んでないです」
「酷っ!? 良いだろ、別に〜」
「登校中も散々話したじゃないですか」
「俺だって平坂と話したいんだよ」
二人はくすくすと笑って。
「すみません。私の幼馴染が突然入ってきて」
「いやいや。僕は別に構わないよ」
僕だって別に周防と話したくないとかではないし。避ける理由もないから。
「ほら、平坂だってこう言ってるし」
「仕方ないですね」
「……そんで、さっきは何の話してたんだ?」
周防の質問に夏元が「球技大会の話だよ」と答える。
「お、球技大会。もうすぐだったな、そういや」
「うん。それでバレーの話したりとか。里菜さんが応援してくれるって話したりとか」
周防も話はこれからって感じに思ってるんだろうけど。
「周防くん。盛り上がりそうなとこ申し訳ないけど……もうそろそろホームルーム始まるよ?」
「ん? うおっ、本当だ! もっと早く来ればよかったよ! 三人とも、また後で話そうな」
「うん」
周防が大人しく席に戻って行く。
そして、すぐにチャイムが鳴る。




