第42話 学園祭のジンクス
後夜祭が終わる。
わずかに残ってた教室の片付けも終わる。そして着替えたら帰っていいとのこと。
「ふー……ズボン落ち着くぅ」
やっとスカート脱げたよ。
なんか、この一日は随分と長かった気がするんだけど。
いつもの制服に戻れたことが、こんなにも嬉しいとは。この感覚、なかなか味わえない。
「よし」
女子は別で着替えてるから、教室には冬野たちはいない。
とりあえず廊下に出た方が良いかな。
「あ、燿くんっ」
「お、夏元さん。冬野さんと秋山さんは?」
「まだ着替えてるよ」
夏元の婦警姿もおしまいか。
それに冬野の雪女コスも、秋山のカフェ店員も。うーん、もっとしっかり見ておきたかったなぁ。
「じゃ、ここで待ってよっか」
僕は学園祭が終わったら三人と一緒に帰る約束をしてたし。ここなら着替え終わって出てきたらすぐ分かるだろうし。
「……うん」
冬野と秋山もそこまで時間はかからないと思うけど。
「ねえ、燿くん」
「うん?」
「あのさ……知ってる?」
「何のこと?」
冬野と秋山を待ち始めて三十秒くらい。
夏元が僕に問いかけてくる。
「…………栄聖学園の学園祭のジンクス」
「ああ、あれね。もちろん知ってるよ」
重要事項なんだから。
栄聖学園、学園祭で結ばれたカップルは永遠に結ばれるとか。
「そう……今日はたくさんのカップルが誕生するんだろうね」
「う、うん」
周防もやっぱり動くんだろうか。
「それで、学園祭のジンクスがどうしたの?」
「……そ、そのさ。結ばれたら永遠だってさ……すごいよね」
「あはは、たしかに。永遠って死ぬまでってことだよね」
この学園祭での告白って実質プロポーズでは? なんて思っても、大半の学生はこの日に告白するといいって感じの認識で。
たぶん、そこまで深く考えてるのはなかなか稀だと思う。
「誰が、言い出したんだろうね……」
小さい声でも今は充分僕の耳に届く。
今の時間の廊下に騒がしさはないから。
「────あ、あのさ」
そして、夏元が何かを言おうとしたところで。
「燿、陽毬。お待たせ」
冬野と秋山がやってきた。
「冬野さん、秋山さん」
ちゃんと制服だ。
「ね、帰ろ?」
僕たちは四人で歩き始めた。
「……元の制服着てると学園祭終わったって感じする」
「そうだね。冬野さん……白い和服も似合ってたけど、制服はやっぱり落ち着くね」
「燿も、セーラー似合ってた。すごい女の子してた。やっと男子に戻ったね」
「さっきも男子だったよ……!?」
格好がそうだっただけで元から男子なのは変わってないから!
「ほら。三人とも帰りましょ?」
秋山に言われて僕らは歩き出す。
「あ、そうだ。夏元さん……そう言えば、さっきはなんて言おうとしてたの?」
「それは……わ、忘れた」
「そう?」
「あはは、ごめんね。忘れちゃった!」
まあ、そういうことあるよね。
僕もあるあるでね。前世とかで何話そうとしたのか忘れるとかよくあったよ。今も時々やらかすけど。
「二人とも何か話してたの?」
冬野に聞かれて「ちょっとね。学園祭のジンクスが気になるねって話してたんだよ」と僕が答えれば、夏元もぶんぶんと首を縦に振る。
「美月さん、知ってる?」
「うん、知ってる」
まあ、結構有名だろうから。
「旭も知ってる?」
「……ええ。料理係の方でもそれなりに耳には入ってきてたわよ」
知らない方が珍しいって感じなんだと思う。
「それでそれがどうしたのかしら?」
「誰が言い出したんだろうって……ね、燿くん?」
夏元の言葉に「そうそう」と頷く。
「……そうね。少しは気になるわね」
「なら、みんなで探す?」
冬野が聞いてくる。
「冗談だよ」
それからクスクスと。
夕暮れの帰り道。僕らの学園祭は過ぎていく。
「陽毬、旭」
冬野は二人を呼んで。
「実は燿の写真、撮っておいた。どう? 欲しい?」
もしかして、あの撮影会のタイミングで撮られたのかな?
「そうね。貰えるなら貰っておくわ」
「ボクにもちょうだい!」
冬野は「一枚何円から?」と聞く。
「なら……千円でどうかしら?」
「千……!?」
夏元だけじゃなくて、オークションをしかけようとした冬野も驚いてるし。
というか、秋山だからなんだろうか。明らかに高いのに、どことなくリアルな数字な気がしてくるぞ。
「んっ…………嘘だよ。お金は取らない」
冬野は咳払いをしてからそう告げた。
「こっちも冗談よ」
だよね。
これで金銭的な動きがあったら僕も動かざるを得ないよ。具体的に僕の取り分について、冬野としっかり相談しないと。
「そう言えば平坂くん」
秋山は何か思い出したように。
「うん?」
「セーラー服、どうだったかしら?」
「…………少なくとも僕は、着るより見てたい派だね」
「あら、でも似合ってたわよ」
「ありがとね?」
冬野も夏元も楽しそうな顔してるし。
「……ま、悪くはないかな」
「燿、もしかして新しい扉開いた?」
「そういうことじゃないよ!?」
また着てみようかなとかは思ってないからね!?
「わたしは良いと思うよ?」
懐の広さを見せつけられても、別に僕の趣味って訳ではないんだからねっ。




