第41話 スポットライトに照らされる
周防は一人のヒロインと学園祭を回る。
それがゲーム上最後の選択肢。
ここから先はルートが分岐するはず……なんだけど。
「あ、たこ焼きありますよ!」
春木が屋台を見ながらそう言う。
近くには冬野と夏元、そして秋山までも。僕と周防は四人の後ろを歩いてる。
「ちょっといってきます」
「里菜、人多いから気をつけてな。てか、俺も付いてこうか?」
「いえ、一人で大丈夫です。暦くんはここで待っててください」
「あ、はい」
春木はたこ焼きを買いに行く。
「あっちは肉巻きおにぎりだって! ボク、買ってくる!」
「わたしも付いてく。燿と旭はどう?」
秋山が「そうね。私も行くわ」と答える。
「燿は?」
「んー……僕は迷子にならないように、周防くんとここで待ってるよ」
「そっか。じゃ、行ってくる」
冬野たちも買いに向かう。
「うん、いってらっしゃい」
…………僕、モブじゃないよな。
ここまで来ると、さすがにね。
というか、さ。
そもそもゲームにこんなのはなかったし。僕自身、ここにいるのがまずおかしいんだよ。
「────なあ、平坂」
四人のヒロインと主人公と、僕。
「な、何? 周防くん」
「俺、今幸せなんかもしれん」
「おお……? 唐突に?」
「考えてみてくれよ」
いやいや、考えるまでもない気がするけど。
「かわいい女の子五人と一緒に歩いてるんだぜ?」
冬野と夏元と秋山と春木と。
おいおい、四人じゃないか。その五人目ってのはどこのどいつだい?
はっはっは。
「……それ、まさか僕も数に入れてないだろうね?」
「ん? なんかおかしかったか?」
よし、ちゃんと教えてやろう。
「……かわいい女の子四人は認めよう。冬野さんと夏元さんと秋山さんと春木さん」
僕は指を折りながら名前を挙げてく。
小指が一本立ったままだ。
「五人じゃないからね」
「俺の誤認だったか……!」
「その目、一旦洗ってこいよ」
僕を女の子に見る、その目をな。
「なあ、本当は今だけ女の子だったり……?」
なんだその変身ヒーローみたいなの。
「お? 僕のスカートの中見せてやろうか?」
僕がスカートの端を指先で持ち上げると「いやいや! 大丈夫だ!」と目を閉じながら両腕を前に突き出した。
いや、捲ったからって何もないんだけど。
「てか、声でさすがにわかってる」
だろうね。
それで僕らは笑い合ってから。
「…………で、気になったんだけど。周防くんは結局良かったの?」
そう尋ねた。
本来、周防は春木とだけ回るはずだったんだ。
「ん? …………ああ。里菜がお前と回りたいって言うし、冬野たちもお前と回るつもりだったみたいだし」
「みんなかわいいし?」
「そうそう……って、んー……いや、それはそうなんだけどな? ……まあ、里菜と回りたいのもあったけど」
「あー、ごめん……?」
「いやいや、誘ったの里菜だしな。それに……ぶっちゃけ、俺も平坂とは仲良くしたいってのは思ってたから。これはこれで全然オーケーなんですわ」
「…………全然関わりなかったよね、僕たち」
今まで話したことはないし。
クラスメイトってだけの関係で。僕が一方的に知ってるだけだって思ってたけど。
「そうだな。直接はなかったな……でも里菜から話は聞いてて面白そうなやつって思ってたんだ。もしかしたら夏祭りで会えるかもって思ってたんだけどな」
「いやぁ、あの日は見事に迷子になっててね。僕」
だから周防とは会わなかったし。
「……で、冬野も夏元もお前と仲良いみたいだし。俺ってば思ったより、お前の話聞く機会あったんだぞ?」
「あ、そうなんだ」
「そうなんだ。そうなんです。そうだったんです、と。俺も平坂と話したかったけど全然タイミングないしさ」
そんな話をしてれば肉巻きおにぎりを買いに行った夏元たちと、たこ焼きを買いに行った春木が戻ってくる。
「────お待たせ。燿くん、暦くん」
全員が合流したのを確認して、夏元が聞いてくる。
「ねえねえ。次どこ行こっか」
うーん、どうしよっか。
「とりあえずいろいろ見て回らない? どこ行きたいとかは特に思いつかなくてさ」
秋山が「そうね。それにウィンドウショッピングもそれはそれで楽しいのよね」と言う。
「ウィンドウショッピング……冷やかし?」
「冬野さん。似てますが、ちょっと違うと思いますよ?」
冬野の言葉に春木が訂正を入れた。
「ま、とりあえず学園祭楽しむか」
周防はニッと、爽やかに。
* * *
「私立栄聖学園、学園祭。今年度も素晴らしい盛り上がりを見せました」
学園祭実行委員が体育館ステージから語る。特に盛り上がるような話はしてない気がするけど、なんだか熱気がすごい。
「────本年度MVPはなんと一年生からです。一年C組、コスプレ喫茶。平坂燿。どうぞステージまでお願いします」
唐突に呼ばれてしまった。
「はぇ……?」
僕はクラスメイトに見つめられて、立ち上がる。そしてステージに向かう。
僕、目立ちすぎじゃない?
「ど、どうも〜……」
マイクを渡される。
な、何を話せってのかな?
「あ、セーラー服。着替えてなかったんですね」
「その、時間がなくて……」
「いえいえ、むしろありがたいです」
「ありがたい?」
「まあまあ……では、平坂さん。今のお気持ちをどうぞ」
「みなさん、ありがとうございます?」
拍手喝采が鳴り響く。
スポットライトが僕を照らしてる。




