第40話 ブレイクダウン
「焼きそばやってまーす!」
いよいよやってきた、学園祭。
今日の学園は一際の賑わいを見せてる。普段の倍以上に混み合ってる。
「一年C組、コスプレ喫茶やってまーす」
そして、僕はそんな激混みな学園のいろんなところを看板を持って歩く。
はい、どうも。
一年C組、コスプレ喫茶の呼び込み役に抜擢されました。セーラー服の平坂燿です。
春木に推薦されました。
クラスのほとんどが賛成してました。もう避けられないよね。これが多数決の原理だよ。民主主義って恐ろしいね。
「どうかお立ち寄りください。チキンカレーおすすめでーす」
男女問わず、いろいろとね。
コスプレ喫茶に興味持ってもらえてるのか僕に話しかけてくれる人が……うん、結構いるんだよ。
「あ、セーラー服! 栄聖学園ってブレザーでしたよね?」
ホールで僕と同じくらいの年齢の少女が話しかけてきた。
「そうですよ」
「わあ、セーラーコスプレですね!」
「そうなんです」
「いつもと違う制服ってどうですか?」
「いやぁ……何もかもが違いますね」
本当に。
スカート履く機会がそうそう男子にあるとお思いか?
「まあ、ズボンとスカートですもんね。それは違いますよね」
「ははは」
「でもすごい似合ってます! もう、喋らなかったら完璧に女の子ですよ!」
うん、春木の協力のおかげなのかな。
鏡を見れば女の子な自分が居たわけだ。自分でも信じられなかったね。
「ありがとうございます」
「それじゃ、がんばってください。一年C組でしたよね? 友達と行きたいと思います、絶対に!」
絶対……って、そこまで?
まあ、僕も一年C組の一員としてお客さんが増えることは大歓迎なんだけどね。
「一年C組、コスプレ喫茶やってまーす」
とりあえず、僕は僕の仕事をこなそう。
みんなも頑張ってるだろうし。
でも。
「────…………ちょっと休憩」
もう一時間以上はやってるし。
「ふぅ……」
看板持って歩き回り続けるので、五分くらいは許してください。
「ほー……外はこんな感じか」
校舎の外もなかなかの人集りだ。
僕が屋台を眺めながら歩いてると。
「それっ!」
僕のスカートが後ろから捲られた。
「むっ」
だが、残念だったなぁ!
見られても問題ないやつだし、僕はスカートを捲られたからって恥じらうことはないんだよぉ!
僕はくるりと後ろを向く。
「やあ、こんにちは」
スカートを捲ったのは僕よりも小さい男の子だった。
「え? そ、その声、お……男?」
「そうだよ?」
「詐欺だ!」
「残念だったね。しっかり確認しないから」
「景品掲示法違反なんだぞ!」
「いやいや、僕は女子って言ってないからね?」
だから僕は悪くない。
ちゃんと男だって明かしたし。しかも、別に騙そうなんて思ってないんだから。
「まあ、僕だから良かったけど……他の人、特に女の子にはやっちゃダメだぞ?」
目の高さを合わせるために腰を曲げて言う。
「わかったかな?」
「…………」
「わかった、かな?」
「わ、わかったよ!」
「よし、いい子だ」
あ、やっちゃった。
ついつい、頭撫でちゃったよ。
「ご、ごめんね?」
僕は慌てて手を引っ込める。
「えーと……それで君、一人なの?」
「……あ、おかあさん!」
はは、ちゃんと見つけたみたいだね。
そりゃ良かった。
「じゃ、学園祭楽しんでね。あ、そうそう一年C組のコスプレ喫茶をよろしく」
「う、うん!」
男の子は走り去っていく。
素直でいい子じゃないか。
「よーし。呼び込み……再開しようかな」
やれるだけやってやろうじゃないか。
「一年C組コスプレ喫茶、どうでしょうかー?」
それからまたしばらく。
色々と場所を変えながら宣伝してると。
「ねえねえ、あとで会おうよー。学園祭終わったらさー」
というのがあって。
「…………」
「連絡先だけでも教えてよー」
僕が一声出せばそれで済む。
僕は一度深呼吸してから、声を出そうとして。
「────すみませんが、コイツも忙しいんで」
その前に、周防が来た。
「へ? 周防くん?」
周防が、来たのだ。
「ほら。行くぞ、平坂。お前の呼び込みが凄まじすぎて教室の方が大変なんだよ」
「え、あ……うん。すみません、失礼します」
いろいろと飲み込めないんだけど。
とりあえず宣伝でも。
「あ、コスプレ喫茶です。ここから近いので、どうぞよろしくお願いしまーす」
「男!?」
いや、騙したつもりはないんだけどね?
「今の平坂は女の子なんだから、気をつけろよ」
「いや、僕は男なんですけど?」
周防よ、何しれっと現実改変してるのか。
「あ、そうだった」
「そうだったじゃないよ」
「いやぁ、悪い悪い。なんか……平坂が女子にしか見えなくて」
それは僕も鏡見て思ったよ。
「…………ともかく、教室戻らないとなんだろ? わかったよ」
気がつけば、交わらないと思っていたはずの周防暦が僕の隣にいた。そして今こうして平然と話してる。
「どうした、平坂?」
「……なんでもないよ」
不思議な感覚だ。
周防暦が僕を見つめている。
さて、僕は…………本当にモブなんだろうか?
主人公と話してる。
主人公が僕を見てる。
周防との関わりが生まれた。僕は本来、ゲームにすら出てこなかったのに。
…………なんて考えてると、教室に着くのはあっという間だった。うん、遠くもなかったけども。
「平坂くん、随分と大活躍ね」
カフェ店員コスプレの秋山に言われる。
「おお……こんなに繁盛してるんだ」
「な、大変だろ?」
うん。たしかに。満席どころの話じゃないな。こりゃ大変だ。
「暦くん、平坂くん。おかえりなさい。それとも、おかえりなさませ、の方がいいでしょうか?」
メイドさん……って、春木だね。
春木が僕たちの方に来た。
「お客さんじゃないからね? 僕は」
「それもそうですね」
教室の中にいる人たちの視線が僕に集まる。
「それで。実は、お客様から平坂くんの写真お願いされてまして……今から大丈夫ですか?」
それも混雑の原因なのね。
「うっす、了解です」
そして、撮影会が始まる。
「ありがとうございます! チキンカレーも美味しくて…………!」
学園祭、一年C組の教室は大盛況ですね。




