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第39話 狡猾なる企み

 学園祭も近づく中。

 

「あ、梅宮さん」

 

 僕は授業の合間、廊下にいた梅宮に声をかけた。

 

「どうしたの、平坂くん?」

 

 まだコスプレの希望を伝えられてなかったからね。でも、僕も希望をなんとか捻り出したわけだ。そう、無難に白衣でいこうと。かっこいいよね、白衣。

 知的に見えて、よくない?

 

「ほら、遅くなっちゃったけど」

「うん?」

「やっとコスプレの希望決まったから」

「え?」

「え? ……って、え?」

 

 なになに?

 梅宮の反応、なんかおかしくない?

 僕の想像とは違うんだけど。

 

「アタシ、平坂くんの希望聞いてるよ? それにもう注文しちゃったし」

「え?」

 

 何を言ってらっしゃるの?

 僕の希望を聞いたって。まさかドッペルゲンガーでもいるのかな。もしかして、今から学園七不思議が始まる感じ?

 『四季彩少女(シキサイショウジョ)』って僕は学園ラブコメADVだって記憶してるんだけど。そこにホラー要素なかったはずなんだけど?

 いや、どゆこと?


「僕、梅宮さんに言ったっけ?」


 梅宮が首を横に振る。

 あ、よかった。

 ホラーの線は消えたよ。

 

「でも春木さんから、平坂くんはセーラー服だって」

 

 春木さァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアんんんッッッ!!!?

 ホラーの線が消えて、女装の線が浮かび上がってきたよ!?

 

「や、やられた……!」

 

 思わず床に膝をつきたくなってしまった。

 

「平坂くん?」

「う、梅宮さん……それってもう確定してます?」

「うん、そうだね。お金も払っちゃってるし。今からだとキャンセル料かかると思うから。平坂くん、セーラー確定だね」

 

 間に合わなかったか!

 そしてあまりにも狡猾すぎる!

 たしかに僕も希望を保留にしてたから文句なんて言えないんだけどさ!

 

「────ねえ……春木さん、話があるんだけど」

 

 僕は放課後の教室で春木にそう言った。

 授業の合間と昼休みでは時間が足りなかった。だからこの時間。まあ、学園祭準備はあるけど。

 

「なんでしょうか?」

「コスプレのことなんだけどね?」

「…………そうですか」

 

 僕の言葉で察したのか。

 春木は一度、軽く目蓋を落としてから。

 

「気がついてしまったのですね」

 

 目を開いて僕を見てくる。

 なんだ、その黒幕ムーブは!

 いや、たしかに春木が黒幕なんだけどね?

 

「ああ……気がついたよ。僕はコスプレの衣装を白衣にしようと思ったんだ。それを今日、梅宮さんに話しに行った時に発覚したんだよ」

「そうですか。もう少し早ければ回避できてたかもですね」


 春木の言う通り、時すでに遅しだったんだけども。


「それで、聞いてもいいかい? …………春木さん、一体この企みはいつから?」

 

 春木がふ、と笑って。

 

「学園祭がコスプレ喫茶に決まった段階でいろいろ考えてはいたのです」

「だいぶ初期から考えてたね」

「そして平坂くんが希望を保留にしたと聞きました。その時にはなんでもいいとも」

「ぐっ……言った覚えが、ない……とは言えないっ」

 

 言った気がする。

 だって、こだわりとかなかったし。

 

「それで、平坂くん」

「……うん?」

「学園祭でセーラー服を着てくださいませんか?」

 

 そんなお願いをしてくる。

 

「……分かったよ。もう状況的に仕方ないもんね」

 

 僕の完敗だ。

 注文はされてしまったらしいし。今回だけはね。

 

「やりましたっ! けほっ……げほっ」

「だ、大丈夫?」

「すみません、興奮してしまって」

 

 まったく。

 そんなに僕の女装が見たかったのか。

 

「体育祭の時からだったね」

「はい。あのときの反省で状況的に追い込めば着てくれるかもと」


 一体、どこを反省してるのかな?


「でも、今回だけだよ」

「ふふふ、どうですかね?」

「いや、次は絶対に阻止してみせる」

「負けませんよ」


 なんだ、その情熱は。

 年内にまた何かが来そうで怖いよ?


「ありがとうございます、平坂くん……やるからには本気でやりましょう! せっかくの美形をネタ枠にするのはもったいないですからっ」


 そ、そう?

 褒められてる気がして嬉しくなっちゃうね。


「安心してください、私も手伝います」


 春木は本気らしい。


「……そこまで言うんだったら、やってやろうじゃない!」


 僕もどこまでいけるかちょっと気になってきちゃったよ。顔には自信があるから。


「燿くん、里菜さん。楽しそうだね」


 夏元が僕たちに声をかけてくる。


「はい。平坂くんがセーラー服を着てくれるので」

「え、本当?」


 夏元が僕を見る。


「うん。着るよ、セーラー服」

「そっか。ボクも楽しみだなぁ、燿くんのセーラー服。絶対似合うよ!」

「そう?」

「うん! 僕も応援してるっ」


 女装の応援とは一体…………?

 

「ありがとう、夏元さん」


 気になるけど、とりあえず応援はありがたいもんね。


「いざ天下を取りましょう、平坂くん」

「それはなんの天下なの? 春木さん?」


 春木は「なんとなく言ってみただけです」と言う。


「……それで、僕のセーラーは決定したんだけど。二人のは?」

「ボクは婦警さんだよ。長ズボンタイプの」


 春木の方は。


「私は予定通りにメイドです」


 なるほど。

 知ってる通りだ。

 それで冬野は雪女……白い和服かな。秋山はカフェ店員。周防は執事。

 僕が覚えてる通りならね。

 

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