表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/111

第30話 子守唄マスター

 テストが終わり、一週間くらいが経った。

 

『今回もありがとうね、平坂くん』

『いえいえ。テスト大丈夫でした?』

『問題なかったわ』

『それは良かったよ』

『そっちの方は?』

『こっちも問題ないよ』

『そう。おやすみなさい』

『はーい、おやすみ』

 

 なんて、夜中に秋山とテストが終わってのメッセージのやり取りをしていたところで電話がかかってきた。相手は春木だ。

 

『あ、平坂くん?』

「もしもし、春木さん?」

 

 だいぶ慣れつつある春木との長電話。今回はなんの話だろ。夏休みだから水着の話でも来るのかな、とか身構えていたら。

 

『突然ですが、一緒に出かけませんか?』

「へ?」

 

 予想外なのが来たよ。

 

「春木さんと?」

『はい。あ、夏休みにですよ』

「いや、うん。そこら辺は大体察してるけど」

 

 僕が気になるのはスケジュールよりもどうしてのところだ。

 

「それって周防くんとじゃダメだったのかな?」

『ダメです。暦くんとはダメなんですよ』

 

 あ、迷うそぶりすらなかったね。

 

「一人は……」

『私は良いんですが、家族が心配してしまいますから』


 それもそっか。


『友達と一緒なら大丈夫だろうと』

「それで僕に白羽の矢が立ったと」

『…………そういう事です』

 

 僕としては出かけるのは嫌いじゃないし、予定さえ合えば問題はないんだけど。

 

「まあ良いけど。僕にも一応都合とか予定とかあるからさ、そこら辺も加味してもらえると助かります」

『はい……無理を言っている自覚はあります。平坂くんの予定を優先してください』

 

 僕は冬野と夏元と一緒に遊びに行く日のことを伝える。

 

『……なるほど。この日はどうでしょう?』

「ん。その日なら大丈夫かな」

『それではよろしくお願いします! お礼は必ずしますから!』

 

 お礼かぁ。何がもらえるんだろ。

 一食分奢ってもらえるとかかな。

 

「あ……というか、待って待って。ちょっと待ってね、春木さん」

『あ、はい。どうしましたか、平坂くん?』

「日程だけでオーケーしたけど……僕、肝心のお出かけの理由と場所を聞いてないんだけども」

『あ、そうでしたね。その、今回はせっかくの夏休みで。しかも、頼める相手もいた事ですから』

 

 頼める相手。

 言い草からして、最初から僕をアテにしてたのか。

 で、もし僕が断ってたら、春木は…………たぶん、断念してたのかな。


「…………うんうん」

『それで、聖地巡礼に赴こうかと思っておりまして』

「聖地巡礼……?」

『はい。秋谷凛が出演していたドラマの聖地巡礼です。そこまでの遠出にはなりませんから安心してください』

「ほうほう」

 

 聖地巡礼。

 面白そうだね。

 僕の夏休みスケジュールもいろいろと楽しげになってきてるね。

 

『当日はよろしくお願いします』

「よろしくね、春木さん」

『はい。今から計画考えないとですね』


 春木は電話越しでも分かるくらいにテンションの高い声で『それでは失礼します。おやすみなさい』と言う。


「…………あ」


 春木との通話が終わってから、僕は新着のメッセージがあることに気がついた。

 冬野から着信があったっぽい。


「…………」


 僕に通話をしてきたってことは何かあったんだろうか。僕は急いで冬野に折り返しの通話をかける。

 ワンコールの途中、冬野はすぐに電話に出た。

 

「────もしもし、冬野さん。大丈夫?」


 冬野から細い声で『あ……もしもし、燿?』と返ってくる。


「そうそう、僕だよ。平坂燿です」

『……ありがとう。ちょっと話がしたくて』

「うん、わかった。今からでも大丈夫? 結構遅いけど」

『大丈夫』

 

 それから冬野は僕に電話してきたわけを教えてくれた。

 

『……燿は不安になったら電話してもいいって言ったから』

「そうだったね」


 言った覚えある。

 前のテストが終わった時だったかな。


『うん……でも、ちょっと落ち着いた』

「そうなの?」

『……うん』


 冬野は少ししてから。


『ねえ、燿……子守唄歌ってみない?』

「うぇ? 子守唄? 子守唄かぁ。歌詞うろ覚えだけど……」

『寝るのには子守唄。これ定番』


 本当に効果あるのかなぁ?

 まあでも、やってみよう。


「では、歌います。聞いてください」

 

 僕が子守唄を歌っていれば、いつのまにか冬野からの声が聞こえなくなってて。


「冬野さーん……?」


 僕は子守唄の天才だったのか……!?

 僕にこんな才能があったなんて。

 

「あれ、冬野さん? もしかして本当に寝ちゃった……?」

『集中してた』

「子守唄に?」

『子守唄に』

 

 子守唄に集中しちゃったかぁ。

 

『燿に子守唄マスターの称号を授けよう』

「ありがたや〜ありがたや〜」


 貰えるものは貰っておくよ、僕は。嫌なもの以外ね。


『じゃあ早速……マスター、いつもの』

「そういう感じのマスターだったか……!」


 まさかの喫茶店みたいな感じだったとは。


『ふふ……』


 冬野の笑い声が聞こえてくる。


『ありがとう、燿。燿のおかげで今日はちゃんと寝れそう』

「良かったよ……冬野さん。またいつでも電話してね」

『うん、ありがとう……おやすみ』

「おやすみ、冬野さん」


 冬野はそれから数秒くらいしてから通話を切った。僕もそろそろ寝ようと思う。

 椅子から立ち上がってベッドに向かう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ