第27話 スクール水着も
いよいよプール授業が始まった。
春木は見学だ。そして今日、秋山はいない。
たぶん秋山が居てもプールに入るってなると秋谷凛とバレるかもしれないからと、参加しないだろうけど。
春木と秋山のスク水が見れないのはとても残念ではあるけど。
「ふっ…………」
夏元と冬野の水着が見れる時点で僕は百パーセントの幸せを手に入れてる。いや二百パーセントかもしれない。いつもだって百点満点幸せ花丸なんだから、スク水見れて倍に跳ね上がってもおかしくないね。
自由時間になってプールサイドから眺めながらそんな風に思う。
「燿」
プールからあがって、濡れたままの冬野が話しかけてきた。
「うん……どうしたの?」
「夏元は水中でも次元が違った」
僕の隣に腰を下ろす。
「あはは……みたいだね」
二十五メートルプールを爆速で泳いでる夏元を見ながら話す。走っても速い。泳いでも速い。どっちも速いとか、夏元はもう水陸両用じゃないかな。
「冬野さんは泳がなくて良いの?」
「それは燿もでしょ?」
僕は冬野を見る。
身体を包むスク水。肌にピッチリと密着していて冬野のボディラインが顕になってる。制服とか私服では分からない、隠れている筈の身体が想像できる。
「……どうしたの?」
冬野が首を傾げる。
「いや、ね……プール授業もいいなって」
「そう? わたしはそこまで好きじゃないけど」
「そうなんだ?」
「わたし、泳げないから」
冬野もまるっきりカナヅチってわけでもないのに。冬野は大体、できすぎちゃう人と比べてるんだ。
「……寒くなってきた」
濡れたままだもんね。
立ち上がって冬野は「タオル、持ってくる」とトテトテと少し早足気味で歩いて行った。
「────どうですか、平坂くん」
春木が話しかけてきた。
「悪くない、というか最高だよ」
「そうですか。良かったです」
僕は座ったまま、春木を見上げる。
春木は体操服で、下はハーフパンツだけど上にはジャージまで着てる。
「やっぱり平坂くんはスク水も好きなんですね」
「今、冬野さん戻ってくるんだから。そういう話は止そうじゃないか」
否定はしないけど。
「……制服にチアガール、そしてスク水と」
「こうして並べてもらうと分かる。結構一般的なラインナップだと思うよ、僕は」
そんなびっくり仰天って感じではないと思う。それに、そこまで倒錯的な趣味はしてないはず。健全な一般男子だと思うんですよ、僕自身。
「そうですね」
春木は腕を組んで呟く。
「それで平坂くんは結局、どれが一番好きなのでしょうか?」
「ええ? それは……って、ねぇ? やめようって言ったよね?」
「別に答えなくとも構いませんよ?」
「そう?」
そうなの?
「あとでスク水についても話しましょう」
うん、春木との会話は男友達を相手にしてる感が強すぎる。今までを振り返ってもね。
そういう話も楽しくはあるんだけどね? なんだかんだスク水について語り合うのも楽しそうなんだけどね?
「うーん」
「どうしました? 悩ましそうな顔をしてますが」
「…………いや、これまでの春木さんとの会話を思い出してね。ちょっと考えたんだ」
「なにかありましたか?」
「春木さんも一応女の子じゃない?」
「はい。私、春木里菜は立派な女の子ですよ。どうして一応とつけたのか気になるのですが」
「今更すぎるんだけど、これってやっぱり女子とする話なのかなぁ……ってさ」
「平坂くん」
「春木さん?」
「良いんですよ、気にしなくて。私は女子ですが、私は平坂くんとの話を楽しんでいますから。私は女子ですが、それが重要なんです。今まで通りで、気にせず……遠慮せず。そういう話をしてるのは私からですし。私は女子ですが、平坂くんとそういう話をしたいんです。秋谷凛の話に始まって、制服の話も。今回も。私は女の子ですけど」
春木は屈託のない笑みを浮かべた。
「……たしかに。そのおかげで僕は今までで何回、あらぬ疑いをかけられたか」
「二回でしょうか? でも、疑いは晴れたじゃありませんか」
「いまだに制服フェチに関しては若干残ってるんだよっ」
僕は春木の顔を見上げる。
それから少しして。
「ん。燿……と、里菜?」
「はい。暇でしたから」
巻きタオルを纏って、冬野が戻ってきた。
「お、あったかそう」
「ふふ、さっきよりはあったかい。でも、里菜のジャージの方があったかそう」
冬野は僕の隣に座ってから、春木を見上げる。
「プールに入る前でしたらお貸ししても良かったのですが」
スク水にジャージとな。
それもそれでアリな気がする。春木にはそう言う狙いはないだろうけど。
「ううん、大丈夫。言ってみただけ」
見てみたい気持ちはあるんだけど、スク水にジャージはあまり現実的ではないような。




