第24話 体育祭が終わり
「平坂くん、結局着ませんでしたね。チアガールも好きは嘘だったのですか……?」
体育祭が終わった。
数日経って、登校日。
ホームルーム前、春木は僕を半目で見ながら聞いてくる。
「おはよう、春木さん」
「おはようございます」
僕はいつも通り準備をしてから春木の方に目を向ける。
「春木さん」
「…………はい」
「僕としては、春木さんのおかげでまたあらぬ誤解が生まれそうだった事について話したいんだけど?」
「すみません、どうしても見たかったものですから」
「そこ、開き直らないのっ!」
僕から目を逸らした春木に、今度は僕が半目を向ける番だった。
「はぁ……まあなんとかなったから良いとしてだよ」
「あ、大丈夫だったのですか? 私、暦くんと借り物競走に行きましたから。その後の事は把握していませんでした」
「……誤解については冬野さんに助けられてさ」
冬野が夏元に『燿はわたしのいるところで制服を買わなかった。そんな燿が、着てもらうために学校にチアガール衣装を持ってくるとは考えにくい』と。
僕が女子制服を持ってる線については否定しきってないところは、色々思うところはあるけど。
夏元もそれで納得してくれた。
「見てたのも冬野さんと夏元さんだけで助かったよ」
「そうでしたか」
「今度からはもう、ああ言うことしないでね?」
「はい……平坂くんに拒否されることはわかりましたから。いろいろと反省しています」
春木も反省したのなら、まあ大丈夫だと思う。今後、僕にああ言う感じのことはしてこないはず。
「私の期待していた楽しみが一つなくなったことは残念でしたが」
「僕にチアコス着させるのが春木さんなりの楽しみの一つだったと」
「……………………まあ、体育祭も無事に終わってよかったではありませんか。大怪我もありませんでしたし」
目を伏せて彼女は言う。
僕と目を合わせようとしない。
「大火傷はしそうだったけど?」
「つまり、ヒヤリハットですね」
「誤用のような、部分的に正しいような……いや、まあ……次からは気をつけてよ、本当に」
「はい」
春木はペコリと僕に頭を下げる。
丁寧に、深々と。なんかそこまでの礼をされても困っちゃうんだけど……。
「そ、そんなに謝らなくても。もう過ぎたことだしさ。春木さんもわかってくれたんなら、僕もそんなに責めないよ」
春木はゆっくりと身体を起こしてから、ニコリと笑みを浮かべた。
「そうですか……ありがとうございます。やはり、平坂くんは優しいですね」
彼女な顔に僕もほっとする。
よかった、いつも通りだ。
「そんなに?」
「はい、とても。だからですかね……平坂くんとはとてもリラックスして話せるんです」
「そう? 僕にはあんまりわからないんだけど」
「自分の事は大概そうだと思いますよ。私も自分についてはそんなに知らないですから」
「そう言われるとたしかにね」
春木さんと話をしてるとホームルーム開始のチャイムが鳴る。
「────来週、プール掃除だぞ」
教壇の上の先生がそう言った。
六月だもんな。プール授業も始まるか。
「平坂くん、スク水も好きでしたか?」
コソッと僕に聞いてくる。
「春木さん。この手の会話はここでは適してないと思うよ……?」
「そうですね。反省します」
冬野たちのスク水が見れるのが楽しみじゃないのかと聞かれれば……断じてそんなことはない。興味ありありだよ。僕だって男の子なんですから。




