第21話 衣替えの季節です
「どうですか、平坂くん」
「どうって……夏服のこと? とても素晴らしいです。春木さんにもよく似合ってるかと」
六月、制服は次第に夏服に。
隣の春木も夏服を着てきていた。シャツにリボンと涼やかな格好。ブレザーもいいけど、これもこれでいいよね。初期装備的な感じで。
「ありがとうございます」
微笑んで礼を言ってから「ただ、それではなくてですね。私が聞きたいのは体育祭のことですよ」と。
「あ、あー……そういう話もあったね」
出場種目はもう決まったんだった。
僕は長距離走。あとはまあ団体種目とか。春木の方は。
「私はほとんど見学ですが」
「そうなんだ」
「別に百メートル走くらいなら出ても問題ないですけどね」
少し不服そうな顔をするも、決まったのはしょうがないと春木も割り切ってるみたいだ。
「まあ、私も私なりに楽しみますから」
「そっか」
「もちろん、平坂くんのことも応援してますよ」
「周防くんの次に?」
春木が首を横に振る。
「いえ、同じくらいです」
「それは頑張らないとね。まあ、僕は長距離走だから退屈かもだけど」
応援というか、たぶん長距離走ってそんなに注目されないと思うんだよね。百メートルとかと違って、すぐには終わらないし。
「友達なんですから。私、友達が頑張ってるところを見て退屈だなんて思いませんよ?」
「…………それは、かっこ悪いとこ見せられないね」
うん。
「そうですか。体育祭当日、楽しみですね」
僕も「そうだね」と頷いた。
「────燿くん、長距離出るんだよね」
そんなこんなで昼休み。
僕はお弁当と一緒に幸せを噛み締めていた。うんうん、良いね。
「そうだよ」
「ボクも長距離! 一緒に頑張ろうね!」
「そうだね」
距離が男女で違うことはまあ置いとこうか。
「冬野さんの方は何に出るの?」
「わたしは百メートル。これならすぐ終わる」
別に勝てなくてもいいとのこと。
「運動も苦手だけど……百メートルだけ走れば終わるから」
「ボク、応援するよ!」
「い、いい……陽毬は自分のことに集中して。燿も、ね?」
冬野は夏元の応援を全力で遠慮してる。
「ごめんね、美月さん。でも……ボク、美月さん走ってるの見て頑張れるから!」
「燿……!」
まあ、ここは春木からの受け売りで。
「大丈夫、冬野さん。僕と夏元さんも……友達が頑張ってるのに、バカになんてしないよ」
僕の言葉で渋々ではあるものの冬野が「わかった」と言ってくれた。これでも拒否されたら僕もさすがにだけど、よかったよ。
「ごちそうさま。体育祭、それぞれで頑張ろうね」
僕は片付けを終えて、席を立つ。
テストが終わって以降、秋山にどうだったか聞いてなかったし。
「や、こんにちは。秋山さん」
「ええ、こんにちは。平坂くん」
いつも通りにホールに。
本当に決まった場所にいるね。まあ、僕としてもここに来ればって感じがして良いんだけど。
「秋山さん、テストどうだった?」
「おかげさまで、何とかなったわ。平坂くんは?」
「僕も大丈夫でした」
まあ、平均程度だったけど。
「ふふ。中々わかりやすいノートだったわ」
「なんか……嬉しいね」
ノートとはいえ。
「テストが大丈夫なら良かったよ。それで体育祭は参加できそう?」
いや、僕は分かってるんだけどね。
だってゲームの体育祭には。
「ええ、問題ないわ」
秋山は出てたんだから。
「そっか。よかった……それで競技は?」
「私は二百メートルよ。まあ、それなりには走れるわよ?」
さすが女優。
体力にも自信があると。
「頑張ってね。応援しても?」
「ええ、構わないわよ」
今から見どころいっぱいだ。
「あ、そうだ……平坂くん」
「うん?」
「もう少しで読み終わるわよ、あの本。やっと貸せるわね」
ゴールデンウィークに買った本、読み終わったんだ。
「平坂くんに借りた方はまだだけど」
「そっか。気長で良いよ」
僕は急かすつもりないし。
「じゃあ、僕戻るね」
「ええ。ありがとうね」
「いやいや、僕も秋山さんと話せて楽しいから。お互いウィンウィンだよ」
「そう? ……そうね」




