第20話 そこにある天国
「おはよ、燿くん!」
集合時間、集合場所に行くと夏元と冬野が既にいた。
「おはよ、燿」
テストの結果も出て、色々あっただろうに冬野の顔はそこまで鬱屈としてないように思える。
「夏元さん、冬野さん。おはよう。もしかして待たせちゃった?」
夏元はパーカーにジーンズとボーイッシュさを感じる装いだ。そして冬野はニットにロングスカート。
「ううん、時間通り…………燿。すごいシンプル」
「いやぁ、これが楽で良いんだよね」
とか言っておきながら、僕も色々迷った挙句のこれなんだけど。あまり気合い入れすぎてもどうかとか考えたり。普通に、僕そんなにオシャレ人間じゃないから、服がなかったりとか。
だから、この白の長袖Tシャツにチノパンというね。
「冬野さんも夏元さんも、制服の時とやっぱり違うね」
私服もいいなぁ。
制服を見慣れてるからこそってのもあるんだろう。
「燿も」
顔をじっと見てどうしたんだろう。
「うん。これくらいが良いのかも」
それから足先まで。
「どういう事?」
僕の疑問には答えてくれないし、夏元も何だか納得してるみたいで冬野の発言に「そうかも」と頷いてる。
「とりあえず、僕の私服は外してないってことで良いのかな?」
「大丈夫だよ、燿くん」
よかった。
壊滅的なセンスって思われたくなかったし。
「まあ、私服の感想戦はここまでにして。どっか行きたいところある? 冬野さん?」
僕が聞けば冬野は考え込む。
「うーん……そんなに行きたい場所とか」
夏元が元気よく手を上げる。
「はいはいっ」
「では、夏元さん」
先生気分で夏元を指名する。
「はいっ。ボク、服見に行きたい! 六月くるよ? 制服も衣替えだし! 買っとこうよ、夏服!」
「なるほど。服かぁ……良いかも」
美少女二人が服選んでるの見られるとか何それ天国? この大船に乗らない手はない。
「陽毬、それは名案だね」
映画の吹き替えみたいな喋り方。
「ははは、それじゃ早速行こうか!」
「夏元さんまで。当然僕も賛成だ」
まあ楽しそうでなにより。
「────よ、燿くん……これとかどうかな?」
夏元がショートパンツを持ってきた。
これを履いてる夏元を想像してみる。褐色の健康的な太ももとか。それは大変魅力的ではあるんだけど。
「夏元さん、大丈夫?」
「え? だ、大丈夫って?」
「外でこれ履ける?」
「うっ、うう……無理です」
「うん。他のにしようね?」
「はい」
買っても履けないのはダメだよ。お金が無駄になっちゃう。
「冬野さんはどう?」
僕はチラリと近くにいる冬野を見る。
「わたしはTシャツ何枚か買えたら良いから」
もう何着かが腕の中に。
「燿は?」
「そうだね、僕も似たようなものかな」
なんか気に入ったの買えたらそれで良いんだけど。
「制服とか買わなくて良いの?」
「僕はそこまで変態じゃないよ!?」
家の箪笥に女子の制服とか入ってないし。
「というか、冬野さん。僕は制服フェチじゃないって説明したでしょ?」
「うん。でも制服好きでしょ?」
「ま、まあ……いや、買わないよ!?」
いくら制服好きでもそれは違うよ。僕は制服単体が好きなんじゃなくてね。可愛い子が制服を着てるからであって…………。
「燿……これとかどう?」
「あっ……えーっと。どれどれ……良いね。これならシンプルでいつでも着れそう」
特に変なデザインってこともない。
「うん。ちょっと一回試着してみよっかな。サイズ大丈夫だと思うけど」
「なら陽毬も呼んでくる」
「え、冬野さん?」
あれー? 僕試着するの二人にも見せる感じなのかな。別に全然良いんだけど、僕は試着したの見せるよりも見たい派なんですが。
「燿くんが試着するって聞いたからっ」
「二人にも見せてもらうからね?」
交換条件として成り立ってるのか不明だったけど、夏元も冬野も受け入れてくれた。
やったぜ。
「それで、どうかな?」
試着室のカーテンを開けて、僕は夏元と冬野に見せる。
「おおっ……燿くん似合ってる!」
「……似合う」
すっごいシンプルな黒のTシャツなんだけどね。
「そうかなぁ? なんか照れるなぁ……よし、でもこれは買いだね」
女の子に褒められて悪い気はしないんだ。男の子だから。
なんかチョロい気するけども。
「どう、燿くん……?」
「ん、どう?」
二人もそれぞれ試着したのを僕に見せてくれる。ああ、なにこれぇ……?
「────────天国はここにあったんだ」
どうしてか、僕はそう呟いていた。
「良い買い物だったね!」
「そうだね、夏元さん」
冬野も嬉しそうな雰囲気を醸してる。
全員それぞれ楽しんで満足してる。
「お昼にしよ。燿、陽毬」
「あ、ボク……お弁当持ってきたよ?」
冬野は陽毬の言葉を聞いて「わたしも」と。
「え? え? ごめんなさい……僕持ってきてないです」
報連相が大事だと思います。
僕だって聞いてたら買ってきたのに。
「わたし、三人分あるよ?」
「い、いただいても良いでしょうか?」
「ふっふっふ。よかろう」
「ありがとうございますっ」
ちなみに夏元も三人分用意してるらしかった。それに二人とも手作りだったみたいで。




