第19話 テスト終わり、放課後
青空の下。
「やったぁあああ!! テスト終わったぁああああ!」
生徒玄関を出たところで、夏元が喜びを隠さずに両腕を上げる。
時刻はついさっき午後になったばかり。まあテストも今日までで終わり。開放感も一入よ。それを感じてるのは夏元だけじゃない。
「…………わたし、は」
「美月さん、お疲れ!!」
夏元が冬野に抱きつく。
女子同士のスキンシップって良いよね。
「陽、毬…………?」
「テスト終わったんだよ?」
「でも……不安、で」
「大丈ー夫っ! ボク言ったじゃん。美月さんが勉強できなくても良いって」
夏元が冬野の頰をもにゅ、と引っ張り上げた。
「ひふぁり……」
「ボクは美月さんの友達だよ」
冬野の不安が解けていってる気がした。
夏元が冬野の頰から手を離す。
「そうだよ、冬野さん。それに不安で寝れないって言うなら僕がいくらでも話聞いてあげるよ」
「……いいの?」
「えっ、あ。うん。もちろん?」
ちょっと予想外な反応。
「夜とか、電話でね」
「うん、お願い。燿」
春木との長電話で随分と鍛えられてね。お互い、眠くなりながらも適当に話してたりしたこともあって。
僕の記憶の三割くらいが抜け落ちてる。どんな会話してたっけ。ブレザーとか、セーラーとか。他にも何か色々話したような。
でも、たしかに覚えてるのは女子とするような会話ではなかった気が。
「ボ、ボクは!?」
「夏元さんも?」
「うんっ! ボクだけ仲間はずれ嫌だもん!」
「それは……冬野さんも三人の方が楽しいかな」
僕が冬野に目を向ければ「そうだね」と晴れやかな顔をしてるのが見えた。
「にへへぇ、燿くんと美月さんとずっと話せる」
そんなに嬉しいのか。夏元は口元の緩みが隠しきれてない。
「夏元さん。流石に僕も二十四時間対応するほど、コンビニエンスではないからね?」
春木にはメッセージとかで出れなくなった時は連絡しよう。何回も掛け直しとかさせるのも大変だし。
「ねえ、燿。それって月々いくら?」
「いや、無料だよ!?」
僕と話すだけなんだし。友達なんだし。そんなサブスクみたいなことしないから!
「最初の一ヶ月間てオチとかでは?」
「しないからね? 僕を何だと思ってるのさ、冬野さんは」
僕は今までそんなことしてきた覚えないのに。
「────ともだち」
高解像度の笑顔を僕に向けてくる。
ああっ、本当。
僕の推しが今日も可愛い。可愛くて可愛くて、本当に推せる。
「……友達だから無料なんだよ」
夏元が「ボクもそのサービス欲しい!」と必死にアピールしてくる。
「そこまで必死にならなくても。あ、でも申し訳ないんだけど。僕にも体力の限界があるからね?」
さすがに、ね。
そんなワンオペでできる事なんて限度があるんだよ。
「限界超えて、燿」
「燿くんっ、頑張って?」
「燿?」
ぐっ、ぐぬぬぬぅ。そんなに言われちゃったらさ。どんだけ大変でもさ。
「ま、まあ……うん。頑張ってみるよ」
美少女に、押されたら弱いんだ。それはそう。
「燿……ごめん。やっぱりそんなに頑張らなくていい」
「ええっ……!?」
「体調崩しちゃって、一緒に登校できなくなるのは困るから」
なるほど。
「そう? じゃあ、ほどほどにね」
僕が無理するのはナシの方向で。
「ボクも燿くんいないと寂しいからさ」
「ありがとう、夏元さん」
その後も話は盛り上がって、冬野は僕に録音に興味ないかとかを聞いてきたりして。夏元も興味津々で。まあいつも通り、実に楽しい下校時間だ。
「テスト終わったし……次は体育祭かな?」
「そうだったね」
夏元に言われて思い出した。
そういえばもう六月になるのか。次なるイベントは体育祭。
「まあ……」
僕はみんなのこと眺めてよ。
美少女たちが頑張ってるのは目の保養になるからね。




