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第18話 ヒロインたちの連絡先を知るモブ

 

 

 ホールに向かってるけど、今日の僕は購買を目指してない。

 別にお腹が満たされてないってわけでもないし、飲み物を買いたいってわけでもないんだ。

 

「あ、居た居た。大丈夫?」

 

 よかった。

 秋山居た。

 今回の目的は彼女だ。ここしばらく姿を見せてなかったから。そんな秋山が今日、ホームルーム前教室で小説を読んでるのを見たから。

 まあ、秋山はクラスじゃ交友も特になかったからか、学校を休んでても、久しぶりに来ても話題に取り上げられることもなかった。

 

「…………平坂くん? 久しぶり、かしら?」

 

 見たところは、疲れがすごいって感じではなさそうだ。

 

「うーん……まあ、そうかな? そうだね」

 

 何ヶ月もってわけではないけど。

 

「もうテストだけど、そっちは大丈夫そう?」

 

 ここ最近、学校には来れてなかったし。仕事が忙しかったんだろう。それでテストなんだから、秋山の事が心配になる。

 

「そうね……なんとかするわよ」

 

 秋山が鼻で笑い捨てる。

 

「ノートとかなら貸すけど」

「……それは嬉しいけど、借りても中々返せないかもしれないわよ? それは困るでしょ? だったらコピーを取るか、写真を送ってくれたらいいのよ。……もらう立場だとすると変な言い方な気もするけれど」

「うーん……コピーか写真なら、写真の方が手っ取り早いかな」

 

 僕は別に今、この場にノート持ってきてるってわけじゃないけど。

 

「と言うか、テストの直前も直前すぎて付け焼き刃とか、一夜漬けって感じにならない?」

「それでもひとまずはいいのよ。ノートがあれば復習もしやすいから」

「まあ、それもそうだね」

 

 教科書を読んで必要な情報を自分なりにまとめるのもアリだとは思うけど、情報が多すぎる。

 それに学園でのテストは教師が作ってるわけだから、テストはノートに取った範囲だろうし。

 

「平坂くん。さりげなく私の連絡先を知ろうとした……って感じかしら」

 

 スマホを取り出した秋山に僕もスマホをポケットから出して連絡先を交換する。

 

「あ、気がついたら僕のところに有名人の連絡先が」


 秋谷凛のプライベートな連絡先とか、ほとんどの人が知らないんじゃなかろうか。


「平坂くんだから大丈夫だと思うけど、悪用しないでちょうだい」

「す、するわけないでしょ?」

 

 僕たちはノートだけの関係なんだっ。


「そうよね」


 こうしてまた秋山との秘密が増えるなんて。でも、そもそもの根底は一つなのかな。

 

「まあ……とりあえず範囲のところ適当に送るからね? もしかしたら秋山さん出てたかもしれないけど」

「ありがとう……平坂くん」

 

 僕はスマホをしまう。

 僕はこうしてまた、ヒロインたちの連絡先を偶然にも手に入れてしまったのだ。思い返してみれば、そうだね。たぶん、僕は全員のを知ってる気がする。

 

「私も、あまり迷惑はかけたくないけど」

「僕の労力はノートの写真撮って送るだけだから、そんなに大変じゃないよ。それに秋山さんは休みたくて休んでるんじゃないでしょ?」

 

 僕がそう返せば、秋山は黙り込んでしまう。

 

「だからさ。秋山さんが誰かを頼らないといけないのは仕方ないよ」

 

 僕も前世とかでノート見せてもらう事はあったけど、ここまでの事情ではなかったし。でも、友達は見せてくれた。

 そういうもんだよね。

 

「全教科ってなるから相当な量だけど。そこらへんは覚悟してね」

「……そうね。仕方ないわね」

 

 秋山は長く息を吐き出した。


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