アフター1-7 変身への憧れ
僕が床に座って秋谷凛出演のドラマを見てると、美月が思い出したように。
「燿。姉さんも学園祭来るって」
そうなんだー……って、なんで?
「あ、もしかして日織さんも栄聖学園出身だったり?」
「ううん」
美月が僕の方に近づいてきてすっぽりと僕の足の間に納まった。ふむ、実に柔らかくて素晴らしいクッションですな。
「わたしは冬野家唯一の栄聖学園出身者」
得意げに美月が言う。なぜ得意げかはわからないけどかわいいからなんでもいいや。
「姉さんのこと、兄さんにも話したら『息抜きとか大事だよ』って言われて」
たしかに。ずっと張り詰めたままだとしんどいもんね。たまには羽を伸ばさないと。心を休めないとね。
「『栄聖学園の学園祭とかに誘ってみたら?』って。わたしも大いに納得」
「うん。そこで、なんで一番に栄聖学園の学園祭が出てきたんですかねぇ?」
僕は美月のお腹に両腕を回して尋ねる。
「んー……と、わたしも兄さんも楽しいから?」
「なら、日織さんも楽しい、と……?」
美月が小さく頷いた。
兄妹姉妹なら感覚が通ずるところがあるかもしれない……という感じかな。
「そうだったらいいなって、わたしは思ってる」
テレビの方をまっすぐに見て、美月が呟いた。
「……大丈夫。きっと楽しめるよ」
僕が小声で言うと「……そうだね」と僕を見上げてから同意を示してくれる。
「それで衣装は決まったの?」
「あははー……どうなるかな。今はまだ決まってないんだよね」
いろいろあるんだよ。
三年の時は白いドレスだったけど、そのインパクトを超えるぞっていう気概がとんでもなくてさ。春木がすっごい悩ましそうな感じなんだよね。
「…………そうだ。わたし、舞台の早着替えみたいなの見てみたい」
ほうほう。
「なら春木さんに伝えておくよ」
「うん、よろしく。もし採用してもらえたら一粒で二度美味しいみたいな感じだし……我ながら良いアイデア」
鼻を鳴らすその姿も愛らしい。
「…………」
僕は大好きな彼女の頭を見つめて少し考えた。もしかしたらこれは日織さんに何かを伝えようと思っての提案なのかもしれない。
「それに一気に衣装が変わったら変身! って感じでカッコいい」
目をキラキラさせて見上げてくる。
「おお。おおー。いいね! すっごいいい! 実を言うとさ僕も変身……! ってやってみたかったんだよね!」
僕だって男の子なんだぜ? 知ってると思うけど。スーパーヒーローに憧れることだってあるさ。オリジナルのヒーローとか考えたこともありましたよ、そりゃ。




