アフター1-5 三年間で溜め込んだ財
大人なお話をし終えると、時刻はもう三時過ぎ。むしろ四時に近いくらいだ。学園から提示された金額には秋山も驚いていた。
僕は思った。
この学園は一体僕がいた三年間にどんだけ溜め込んだんだ、と。
「…………ふふ」
拝啓、お父さんお母さん。
一人暮らしをしてからしばらく会っていませんね。僕はちょっとダメな子になってしまうかもしれません。
「おか、おかしいわ……そんな」
ギャラ交渉に付いてきた秋山がなかなかにショックを受けてる。いや、提示された金額的に交渉をするまでもなかったわけなんだけど。
「二人とも大丈夫ですか?」
「あはははは。春木さん……僕はちょっとマズいかもしれない」
一回の女装で学生のアルバイトなどと比べ物にならないほどの金を受け取るなんて。
「私の、私の芸能人としてのプライドが……」
なんだか深い傷を負ってる、今をときめく現役女子大生芸能人が一人。その姿に若干申し訳ない気持ちが込み上げてくる。
「秋山さん。大丈夫です! たまたま栄聖学園だけでは平坂くんが人気だっただけで全国で見たら圧倒的に秋山さんの方が人気ですから」
「……ふふ、そうよね。私の方が仕事貰ってるし、総合的にはお金稼いでるし」
あの、僕は一応一般人なんですよ?
芸能人と比べられるほどの収入なんて本来あるわけないんですよ?
「平坂くん、良いですか?」
「はい、なんでしょう」
「お金を貰う以上、これは仕事です」
右手の人差し指を立てて、春木が言う。
「……そうだね」
栄聖学園に通ってた時以上にちゃんとしないとダメだ。あの時の僕はこの学園の一生徒でしかなかったけど、今回はお金を払ってもらって呼ばれた側なんだ。
「な・の・で! 平坂くん、これまで以上に頑張りましょうね!」
「そ、そうだね」
今年は何を着させられるのでしょうか、僕は。
「衣装についてはこれからちょっとずつ考えていきましょう」
とりあえず今日のところは解散ということで、僕らはまたねと言い合って別れた。
「学園祭が成功したら……まずは美月と一緒に美味しいご飯を食べに行こっかなぁ」
あとは……まあいろいろ。
そうだなぁ、遊びに行くのも良いかも。旅行とか良いなぁ。そう、旅行だ。これだけお金があれば美月と一緒に旅行を楽しめるぞ!
そのためにはやっぱりまずは学園祭を成功させないとだね。僕にこれだけお金を出してくれるっていう話なんだから。
「頑張る、かぁ……はは」
僕のスマホが震える。
「ん?」
画面を確認すると一件のメッセージが届いていた。
「あ、日織さんから」
内容は会える日に関しての連絡だ。
僕と美月の予定が合う日は伝えてたから、そこで日織さんが都合のつく日を探してくれたのだ。
「美月に伝えないとね」
僕はスマホをポケットに戻して、歩く速度を少し早めた。




