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アフター1-4 交渉のテーブルへ

 

「ふっ……半年ぶりくらいかな」

 

 我が母校、栄聖学園よ。

 僕は帰ってきたぞ!

 

「こっちですよー、平坂くん!」

 

 生徒玄関……ではなくて、職員来客用の玄関前で春木が大きく手を振ってる。

 

「久しぶり、春木さん」

「お久しぶりです」

 

 ニコニコと笑顔で挨拶を返してくれた後で「それにしても酷いです……あんなにメッセージ送ったのに無視するなんて」とやや……いや、あからさまに演技だとわかるようなそぶりを見せてくる。

 

「結局受けるなら最初からイエスって言えば良いじゃないですか」

「そのことなんだけどさ……あのね、春木さん。美月に協力を持ちかけるのは卑怯じゃないかね?」

 

 そんなことされたら僕が断るなんてほぼほぼ無理になるじゃん。

 

「私は別に無理強いはしてませんがね?」

「…………」

 

 こ、こいつ。

 

「…………はぁ。まあ、それはもう置いといて。とりあえず中入らない? 結構暑いし」

 

 セミの声が響くくらいの夏真っ盛り。しかも今は真昼間。僕も春木も確かに汗をかいてる。

 

「まあ、今日はちょっと大人な話をしにきたので……そういうのに詳しい専門家の方も呼んだんですよ」

「専門家って……春木さんにそんな伝手があったなんて。大学での付き合いってやつ?」

「いやいや。大学での付き合いじゃないですよ」

 

 なら、どこで。

 

「…………あら? 私が一番最後だったのね」

「秋山さん!?」

 

 芸能人だけどさぁ!? 納得の人選ではあるんだけどね?

 

「さあ、強力な味方も来てくれたことですし……いざ行きましょう、交渉のテーブルに!」

 

 春木が先に入っていく。

 僕はチラリと秋山を見て。

 

「仕事とか忙しくないの?」

「あなたに心配されることはないわ。彼女と爛れた生活を送ってるだけのあなたには」

「なんかとんでもなく鋭いトゲがある気がするんですけど」

 

 たしかに昨晩は楽しみましたが、一応節度はある……と思ってます。

 

「美しいバラにはなんとやらっていうでしょ?」

「秋山さんは自認美しいバラなの?」

「…………」

 

 僕から顔を逸らして玄関に入っていってしまう。

 

「ちょ、待って!」

「言葉には気をつけなさい」

「いや悪いとは一言も言ってないんですけど!?」

「……言葉には気をつけなさい。私が性格の悪い女だったら冬野さんに『平坂くんに口説かれた』って伝えるわよ?」

 

 な、なんて恐ろしいことを!

 

「それだけは……それだけは勘弁してください」

「冗談よ。私、そこまで性格の悪い女じゃないと思ってるわよ、自分のこと」

 

 僕も、秋山は良い性格してるってことを知ってる。

 

「あのー! 二人とも、何してるんですか?」

 

 春木が僕らを見て呼びかける。先に校舎に入ったのに僕らがなかなか追いついてこなかったから不思議に思ったんだろう。

 

「ごめんごめん」

 

 僕と秋山は少し先にいる春木の方に向かう。

 

「それにしても、せっかく秋山さんもいるなら女神と秋谷凛のコラボレーションを企画しても良かったのでは……?」

 

 春木さんがぶつぶつと呟いてると「私と彼じゃレベルが違うのよ」と少し勝ち誇ったように秋山が鼻を鳴らした。


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