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戦極結承 ◇◇ ~バッドエンドへ向かう少女の物語~  作者: 空斬しゅう


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85話 番外編Ⅵ ~あの日、私が失ったもの2~

お母さんは、周りに聞こえない様に、収納スペースの隙間から私に話しかけてきた。



「ユイ。いい? よく聞いて」


「これから先、何があっても……絶対にそこから出てきては駄目よ」


「お母さん……?」


「本当は、まだまだいっぱい喋りたいことはあるけど……時間がないから」


「お母さん、死んじゃ嫌だ!」


「ユイ。あなたは自分の思うまま、好きなように生きなさい」


「ユイならいつかきっと、綺麗な色をいっぱい作れると信じているから。頑張ってね」


「あなたの夢が叶う事を、ずっと見守っているからね」


「それと……今回の事を、決して自分のせいにしない事」


「大好きよ、ユイ。私の子供に生まれてきてくれてありがとう」



そしてお母さんは、皆と一緒に馬車から降りて行った。

遠ざかる足音。私を置いて。



「ユイちゃんは見つかっていないと思うか?」


「ああ、あの馬車は特殊だから、あそこに収納スペースがあるのはわからないはずだ」


「そうか、じゃあ出来るだけ、ここから遠くに離れるぞ」


「ああ、わかっている」


「私がおとりになります。その間に反対側に逃げてください」


お母さんの声だ。



「バカを言うな!」


「どうせ死ぬなら、俺は誇れる死に方をする」


「そうだ」


「……わかりました。ごめんなさい」


「じゃあ行くぞ」


「オヤジ」


「何も言うな、わかってる」


「ああ、そうだな」


「わしが絶対に道を開ける、二人はユヅキさんを護衛しながら走り抜けろ!」


「わかった!」



無駄な事だと誰もがわかっていた。

戦った経験すらないおじさんが、武装した盗賊を倒す事なんてできないだろうと。



「うおおおおおおおお!!」



両手に鎌を持ったおじさんは盗賊に突っ込んでいったけど、相手に触れる事無く斬られた音がした。

でも、おじさんは倒れなかった。

倒れる事無く、盗賊の群れの中に入って行った。

目的の為に命を捨てる覚悟をした人は、簡単には死ななかった。


斬られても、刺されても、腕をもがれても……動ける限り鎌を振るった。

結果、そこでおじさんは油断していた5人もの盗賊を道連れにして、一瞬の道を開いた。



「今だ! 走れ!!」



3人で走り抜けたけど、盗賊の数が多すぎて直ぐに追いつかれてしまった。

でも二人の息子も父親と同じように、出来るだけ多くの盗賊を道連れにしようとした。

腕を斬られても、足を斬られても、這いつくばってでも盗賊に噛みつき、武器を振るった。


最終的に20人程いた盗賊は、10人以下にまで減っていた。

農民の捨て身の特攻は、盗賊たちを恐怖させるに十分だった。


けど、さすがにそれが限界だった。

リーダーらしき盗賊が出てきて、二人は首を跳ねられてしまった。



「ちっ、こんな雑魚に何手間取ってんだアホが」



お母さんは捕まり、リーダーらしき男の前に連れて行かれた。

私は隙間からその光景を見ていた。

お母さんは、魔法を使わなかった。

いや、使えなかった。魔法の触媒を装備していなかったお母さんは、ただの無力な女として捕まった。


そして、大勢の男達に……犯され続けた。


獣のような声と、下卑た笑い声。

でも、お母さんは表情ひとつ変えず、声も全く出さなかった。

痛みに耐え、屈辱に耐え、ただ一点を見つめていた。

もし「助けて」と叫べば、もしそれを見て私が悲鳴を上げれば、私が気づかれてしまうかもしれないから。



泣き叫び、命乞いをする姿を期待していたのか、盗賊達は苛立ち始めた。



「なんだこいつ、つまらねえ女だ」


「声ひとつ上げねえぞ?」


「気味のわりぃ」



リーダーが刀を抜いた。



「つまらねえ」



ドスッ。



お母さんは、最後まで私を守り抜いて、死んでしまった。



「おい、馬車の中も探したか?」


「ああ、荷台は空っぽだ」


「ちっ、引き上げるぞ!」



そして盗賊達が去った後。

私は這い出して、変わり果てたお母さんの横に座り込んで泣き続けた。

声が枯れるまで、涙が枯れるまで。


それから数日後。 街からの捜索隊の人が来て、衰弱した私とお母さん達の遺体を馬車に乗せて街へ戻った。


それが、私の記憶。

私が男を憎み、強さを求め、そして……**「復讐」**を誓った原点。

読んでいただきありがとうございます。

基本は一週間ごとに更新するつもりです。

ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。


また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。


最後に投稿へのモチベーションを維持する為にも、コメントや評価、ブックマークをして頂けると執筆を続ける励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。

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