75話 ミナの涙と、救済の決意
「はあ、最悪だね私は」
私は、少し頭を冷やす為に外に出て、行く当ても無くぶらぶらと街中を歩いていた。
あの時、ミナさんは泣いていた。
本当は身体を売るなんてしたくないのに、グッと我慢して信念を貫いていたんだと思う。
それを他人に罵倒されて、心の均衡が崩れてしまったのかもしれない。
はああ、本当に最低の事をしてしまった。
ユイは歩きながら、どうしてこうなったのか、何がいけなかったのか自問自答した。
うん、やっぱり、明日もう一度ミナさんの店に行こう。
そして自分の価値観と理想をミナさんに押し付けてしまったことを、ちゃんと謝ろう。
そう決心して前を見た時に、またあの男を見つけた。
そうだよね。ミナさんがいるんだから、いてもおかしくないよね?
私は小走りでその男を追いかけて、声をかけた。
「こんにちわ、キーゴさん」
驚いて振り向いたキーゴは、ユイを見て首を傾げた。
「えっと、先週ぐらいに買った子かな?」
「違います!!」
ちょっと本気で魔法をぶっ放そうとかと考えてしまったじゃない!
本当、失礼な!
「お久しぶりです。 ユイです。 ミリルナで会った事がありますが、覚えていないですか?」
「!!! あああ、あの時の! あ! ゴメン、本当にごめん。娼婦と間違えるなんて・・」
「それはもういいです(怒)」
その後、キーゴさんと少し話をしてから宿屋に戻った。 (キーゴさん、何やら重労働をして金を稼いでいるらしい。)
翌日、開店前のミナさんの店に向かった。
店に着いて扉をノックした。
「ミナさん、ユイです。開けてもらえませんか?」
すると、店内からドタバタと音がして、駆け寄って来る音がした。
そして勢いよく扉が開いた。
「ユイちゃん!?」
私の顔を見たミナさんは驚いた表情をして、直ぐに笑って迎え入れてくれた。
「さあさあ、入って入って」
「ありがとうございます」
私はお礼を言って店内に入り、奥の従業員室に通されて、そこには丸いテーブルと椅子が2脚あった。
ミナさんは私に、そこに座るように勧めてきた。
ただ、その部屋には横幅が2メートルはありそうな大きなベッドが置いてあったから、いやが上にも、その存在感が視界に入ってきた。
ミナさんは私の視線に気づいたのか、チラっとベッドを見て「ごめんね」と言った。
うん、わかってる。
このベッドが何を意味するかは。
「いえ、すいません。仕事前の忙しい時間に押しかけて」
「いいの、いいの。今日はどうせ店はお休みにして休息するつもりだったから」
多分、それは私の為についた嘘だと思う。 ミナさんからはお風呂上りの様な匂いがしてたし、昨日と同じ直ぐにでも仕事が出来る服を着ていた。
わかりやすく言うと、**「娼婦」**の格好だった。
「ミナさん、ごめんなさい。 ミナさんの気持ちを考えないで勝手な事ばかり言って、本当にごめんなさい」
私は立ち上がって頭を下げて謝罪した。
そんな私を見て慌てて寄ってきて止める様に言われた。
「ユイちゃん! ユイちゃんは悪くないから! 謝らなくていいから! お願い、普通にして?」
私は促されるまま再び椅子に座った。
「私はわかってるの、自分がいかに後ろめたい事をしてるか、まわりから見たら、どれだけ汚い事をしてるか。
でも最初は本当にそんな事にすら気づかないままハマって行って、いつのまにか戻れないところまで来ていたの。
ユイちゃんと初めて会った時に既に私は汚れていたんだよ?
懐いてくれたユイちゃんが妹みたいで可愛かったから、それを悟られない様に嘘をついて隠していたんだよ?
だからずっと隠してたのがバレたと思って、私も動揺しちゃったの」
「私は・・」 そして私は自分の思いを伝えた。
ど田舎出身だから、ずっと同世代の友達がいなかったこと。
数日とはいえ誰かと旅に出たのは、あの時が初めてだったこと。
初めての依頼で何もわからなかった私に、親身になって教えてくれたり、あれこれと世話を焼いてもらった事が嬉しかったこと。
そして歳も近かった事から、お姉ちゃんがいたらこんな感じなのかな?って甘える事が出来きて嬉しかったこと。
最後に母が殺された時の事。
それが引き金になって男性が苦手なこと。
男性が欲望に赴くままの姿を見るのはもちろん、想像するだけでも虫唾が走ること。
その自分の価値観と理想をミナさんに押し付けてしまったことを話した。
そしてもう一度、立ち上がってミナさんに謝罪をした。
ミナさんも立ち上がって私の傍まで来て、私をギュッと抱きしめた。
そして涙を流しながら「ありがとう、ありがとう」って言ってくれた。
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
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