73話 番外編Ⅴ ~錬金術師ミナ:茨の道の始まり3~
私は契約して得た薬草を使って薬を作っている。
レベル2に上がってからは一度も失敗をすることが無くなった。
だから作れば作る程、利益になったけど、それでもレベル3になる為の修練に必要な素材を買いそろえるには1ヶ月かかった。
でもこれだと時間がかかり過ぎる。寿命が尽きてしまう。
そんな時、ひょんなことから知り合ったユイとマルルナの町に行ける事になった。
マルルナの町には同じ女性でレベル3の錬金術士がいると有名だった。
答えを見つけられなくても、何かしらのヒントぐらいは得られるかも知れないと期待していた。
しかし、運が悪かった。
レベル3の錬金術士ウルナさんは出張中で会う事が出来なかった。
私は旅の目的が無くなって意気消沈していたけど、ウルナさんの弟子だと言うティカが私の悩みを解決してくれた。
「ではミナさんは、師匠がどのようにしてレベル3に至ったか知りたかったわけですね?」
「そうなの。 セオリー通りの高級素材でレベル上げなんて絶対に無理だから、ウルナさんはどんな裏技を使ったのかなって思って」
「セオリー通りですよ?」
「え?」
「高級素材を使って、何度も何度もスキルの修練をやったのです」
「え? 高級素材を? ウルナさん、もしかして貴族もしくは大商人の娘とか?」
「違います。自分で稼いでです」
「でも、レベル2でそんなに儲かる物は作れないよね?」
「違います。自分の体を売って、です」
「え?」
「ミナさんは昔からの習慣で**『錬金術の闇』**って聞いた事がありますか?」
「闇? なにそれ?」
ティカはその闇について詳しく教えてくれた。
「それでおじいちゃんや、私の両親は私が錬金術士になるのを嫌がったんだね」
「そうですね。間違いないと思います。可愛い娘に身体を売る事が前提の職業になんてついて欲しくないでしょうから」 ・・・もう遅いけどね?
「でも、これをするなら自分の店を持たないとダメって事だよね?」
「はい。 それが冒険者に対する『合図』みたいなモノですから」
「そっか」
「店を持つ事が出来ない時は、弟子になって仕事をまわしてもらうしかないです」
「え? じゃあティカも身体を売って稼いでいるの?」
「いえ、私はまだ師匠の許可が下りてないので」
「許可が下りたら・・するの?」
「はい。 その覚悟は出来てます。 実は師匠が出張から帰って来たら許可が下りる予定なんです。 デビュー戦はその時からかな」
「・・ティカ、経験は?」
「無いです」
「大丈夫?」
「大丈夫です。 何もしなくても勝手に終わるんですから、何て事ないです」
「そう。でも最初は辛いよ? 特に妊娠しておろす時は精神的に・・・」
「・・ミナさんは、客を取っていたんですか?」
「うん。素材を買う為に個人的にね。 結局7回妊娠しちゃった。全部おろしたけどね」
「・・そうなんですか」
「うん、でもこれで私も目標が出来たよ」
「お互い頑張りましょう」
「ええ、頑張ろう」
その後、ティカと別れてミリルナに帰ってからの事をシミュレーションしていたんだけど、いきなりポキって折られてしまった。
何と私が頑張る為の目標だった薬を、あっさり作って私に譲ってくれたり、さらに錬金術のレベルが5だとか、それが納得できてしまう程の結界装置を自作したとか、高級素材を難なくサクッと集めて来るとか、更にはレベル上げの概念を詳しく教えてくれた。
本当、ユイは恐ろしい子だったけど、私に妹がいたらこんな感じかな~って思えるほど可愛かった。
ミリルナに帰って、まず一番に貰った薬を飲ませた。
すると劇的に症状が回復して、その日のうちに元気に走りまわれるようになった。
そして、この結果を踏まえた上で、もうレベル上げは目指さない事を伝えると、おじいちゃんはあっさりと私に店を譲っておばあちゃんの故郷へ帰って行った。
そして私が1人で店を切り盛りしだすと、聞いていた通り何度か素材提供の話を何度ももちかけられた。
それから数週間後、本格的に素材の買い取りを始めてスキルのレベル上げに挑んだ。
無遠慮に私を見る人だらけだったけど、売り上げは確実に上がっていた。
素材集めは順調で、1日に5〜6件の買い取りをする事もたまにあったけど、基本的に身体の負担を考えて欲張らずに1日3件で買い取り終了するようにしていた。
そして、ユイちゃんに言われていた通りに数をこなすのでは無く、どうしてこうなるか理解しながら修練をしていると、半年もたたずにレベル3になる事ができた。
続けてレベル4への挑戦もしようと思ったんだけど、さすがに指定した素材の持ち込みが全然無くて修練をする事が出来なかった。
だから私は、もっと大きな街に移住する事にして、何とか親も説得出来た。
その時にキーゴもついて来ると言い出したけど、キーゴにはちゃんとした人と結婚して幸せになって欲しかったから、いつも以上にキツイ言葉で断った。
でもなぜか今回は珍しくキーゴも引き下がらなかった。
だから私は正直に話した。 身体を売って素材を集めている事。
それに伴って何度も妊娠しては堕胎剤を使っているから、今後、副作用で子供が産めない体になる可能性がある事。
自分は汚れ過ぎてるから、他の女性と幸せになって欲しい事を伝えた。
だけどキーゴの答えは私の想像と違った。
「わかっていたよ。ミナが身体を売って錬金術に打ち込んでいた事は。 だから許せなかったんだ」
「そんなミナを金銭的に援助する事も、素材を採取しに行く力も無い自分に!」
「だけど俺はミナを支えたいんだ」
「俺は昔からミナが好きだ! そしてその気持ちは今もこれからも変わる事は絶対にない!」
「だから、だから一緒について行かせてくれ!」
私は涙が出そうになるのをグッと我慢した。
キーゴと一緒に幸せな未来を想像してしまった。
でもダメだ。それは絶対にダメだ。
後戻り出来ない程、汚れた私と一緒になっても、キーゴは幸せになんてなれない。
だから私は精一杯の虚勢を張って、キーゴを突き放した。
「それはもう無理なの」
「この2年間でどれだけの男としてきたと思うの?」
「私は快楽を知ってしまったの」
「だから私の身体はもう快楽無しでは生きて行けないの」
「今後、もし私が目標を達成できたとして、身体を売るのを止めたとしても、キーゴが私を満足させてくれるの?」
「絶対に出来ないよね?」
「悪いけど、下手な人と一緒にはなれないの」
キーゴは目を見開いて驚いた表情をした後、落胆した表情になった。
そして、「わかった」とひと言だけ言って帰って行った。
それを見送った私は、感情を抑えられなくなり、嗚咽をあげながら泣き続けた。
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
最後に投稿へのモチベーションを維持する為にも、コメントや評価、ブックマークをして頂けると執筆を続ける励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。




