209話 ディネのスパルタ教育
ミリルナの街を出発し、目的のクーラの街へ向かってから数日がたった。
私たちの旅は、特に大きなトラブルもなく超順調に進んでいた。
鬱蒼とした森を抜け、視界が一気に開ける。
どこまでも続く青空と、風に揺れる緑の草原。
「ん~っ! もう、完全に山を抜けたね!」
私が大きく伸びをしながら言うと、隣に座っていたリアが風になびく髪を押さえながら頷いた。
「そうね。この調子だと、予定通り明日にはクーラに着きそうね」
「でもさー、こんなに開けた土地にオークなんて出るのかな?」
マニカが周囲をキョロキョロと見渡しながら首を傾げる。
「ねー。これだけ見晴らしがいいと、どんなに遠くても、あんなバカデカい魔物なんて直ぐに見つかるよね」
オーク。ミリルナの冒険者ギルドで、受付嬢のお姉さんに半ば強引に押し付けられた討伐依頼のターゲットだ。
「オークって、そんなにデカいの? 私のイメージだと豚の獣人みたいな感じなんだけど」
「えっとね、大きさはオーガを横に一回り大きくした感じかな? 筋肉と脂肪の塊って感じ」
「うわ、ゴツそう」
「でも、動きはノロマだからね~。格好の的だよ、あんなの」
マニカは余裕しゃくしゃくといった感じで笑う。
「それは、マニカの規格外な攻撃力があるから言えることだよ?」
ブルーナがツッコミを入れると、テミスも同意するように頷いた。
「そうだよ。普通はあの分厚い皮膚と脂肪のせいで、剣が急所まで届かずに倒すのを苦労するって聞いた事あるし」
「まあ、そうかもね。でも、、」
チャキッ。
リアが腰の刀の鯉口をわずかに切って、刃を輝かせた。
「私も早く、この刀でオークを斬りたいわ。ふっふっふ、、」
「リア? だから危ない人に見えるから、ニチャアって笑いながら刀を抜くのやめてね? 」
私が慌てて止めに入る。
ホント、ウチのパーティーは戦闘狂が多くて困る。
そんなワチャワチャしたやり取りをしていると、不意にパーティーの引率役(?)でもある精霊のディネが、スッと前方を指さした。
「試し斬り、できそうだよ」
「ん?」
「いるよ?」
「何が?」
「オーク」
「えっ?」
ディネが指差した遥か彼方の地平線。
目を凝らすと、そこには土埃を上げながら蠢く、巨大な肉の壁のような集団の姿があった。
「本当だ」
「ってか、なんか思ったより多くない!?」
「二、三十匹ぐらいいるわね」
「しかも、真ん中にいる一匹は他よりさらに一回り大きいね。レアタイプかな?」
「いやいや、いくらなんでもこんな見晴らしの良い場所に、あの数のオークが群れでいるのは異常でしょ?」
しかしディネが嬉しそうな、いや、底知れぬドSな笑みを浮かべてオークの群れを見つめた。
「フフフ……確かに良い的ね?」
嫌な予感がする。ディネ先生のスパルタスイッチが入った音がいま、明確に聞こえた。
「テミス、メティナ。あれで練習しようか」
ディネの言葉に、名前を呼ばれた二人がビクッと肩を震わせる。
「えっ!? で、でも! あの魔法、まだ完成してないですよ!?」
「そんなの実戦で完成させるものだよ? ほら、早く準備して」
「「…………っ!」」
テミスとメティナが、子犬のような涙目で私に助けを求めてくる。
ごめんね。
私はそっと目を逸らし、顔を横に振った。
「頑張れ~」
「「…………っっ!!」」
二人の絶望に満ちた無言の抗議が突き刺さる。
「仕方ないわね。ここはメティナ達に獲物を譲るわ」
リアが残念そうに刀から手を離した。
「うん、そうだね。私設応援団に回るよ」
涙目のテミスとメティナは、覚悟を決めたように前へと進み出たのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
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また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
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