207話 ミリルナの宿と、部屋割り抽選
のどかなナルイラの町を出発してから数日。
私たち一行は、目的の経由地である『ミリルナの街』に到着した。
初めての旅は一人ぼっちの異世界サバイバルだったけど、今じゃ心強い仲間が五人もいる。
リア、マニカ、メティナ、ブルーナ、テミス。私を含めて、総勢六名の女子旅だ。
前世の記憶を持ってる私からすれば、女子高生の修学旅行みたいなテンションでめっちゃ楽しい! って、浮かれていた時期が私にもありました。
「じゃあ、この街で一泊するね?」
「うん、それでいいよ~」
「じゃあ、まずは宿屋だね」
和やかに作戦会議をする私たち。
「あっちに、前に来た時に泊まった宿があるんだけど、食事は結構美味しかったから、そこでいい?」
「うん、いいんじゃない?」
「いいよ~」
満場一致で宿が決まり、街のメインストリートを歩き出す。
ミリルナはナルイラよりは都会で、石畳の道にたくさんの露店が並んでいて活気がある。
前回ここに来た時は一人だったから、結構ビクビクしてたっけ。
でも今は六人。しかも全員、自分で言うのもなんだけど顔面偏差値高めの美少女揃いだ。
当然、街行く人たちの視線を集めるはずなんだけど?
「ねえ、なんかおかしくない?」
「何が?」
「いや、なんか、道、空きすぎてない?」
そう。私たちが歩く先々で、すれ違う人たち――特にガラの悪そうな冒険者の男たちが、私たちの顔を見た瞬間に「ヒィッ!?」と短い悲鳴を上げて、蜘蛛の子を散らすように逃げていくのだ。
まるでモーセの十戒みたいに、人混みがパックリと真っ二つに割れて道ができている。
なんだこれ。ヤバイ覇気でも漏れてるの?
チラリと隣を見ると、リアとマニカが涼しい顔で歩いていた。
あ、原因これだ。
どうやらなぜか、この街ではリアとマニカの顔が変な意味で売れているらしい。
うん、もう何があったかは深く聞かないでおこう。
前回来た時に、タチの悪いチンピラどもを物理的に再起不能にしたとか、そんな血生臭い武勇伝があるに決まってる。
触らぬ神に祟りなし、だ。うん。
そんなモーセ状態のレッドカーペット(石畳だけど)を悠々と歩き、特にトラブルもなく目的の宿屋に到着した。
カランコロン、とドアベルを鳴らして中に入る。
「こんにちわ~! 六名で泊まりたいのだけど、部屋は空いてますか?」
カウンターの奥から出てきた恰幅の良い女将さんが、私を見るなり目を丸くした。
「いらっしゃい……ん? あんた、ユイちゃんかい?」
「はい、お久しぶりです!」
「まあ、大きくなったねぇ~!」
「えへへ、おばちゃんも元気そうでよかったです」
「大きくなった」というのが、身長のことなのか、それとも胸部の発育のことなのかはあえて突っ込まない。
「今日は一泊だけなんだけど、友達と泊りにきました」
「あら、ありがとね。でもごめんなさい、今は三人部屋しか空いてないのよ」
「三人部屋を二部屋でもいい?」
「はい、全然大丈夫です。お願いします!」
「はいよ、じゃあこれが鍵ね」
「はい。あと、夕食は食堂に行きますので、六人分お願いします」
「わかったわ。腕によりをかけて作っとくよ!」
女将さんから木製の重たい鍵を受け取り、私たちは軋む階段を上がって二階の客室へと向かった。
さて、ここからがある意味、本日のメインイベントだ。
「部屋割りはどうする?」
私が尋ねると、テミスがドヤ顔で懐から紙の束を取り出した。
「ふっふ~ん、こんな事もあろうかと、クジを作っておきました」
「相変わらず用意がいいわね」
というわけで、厳正なるアミダくじの結末。
私、メティナ、リアが同室。
テミス、ブルーナ、マニカが同室となった。
ブルーナは私と離れてしまって、あからさまに犬耳が垂れるような感じで残念そうにしていたけど、クジ引きだから仕方ないよね。
ごめんねブルーナ、明日は一緒に歩こうね。
一方、私と同じ部屋になったメティナはというと。
「テミスと離れて寝るのは初めてだね」
ちょっと不安そうに呟いていた。
「あれ? 私がいなくて寂しいの? 仕方がないね~メティナは」
同室になれなかったテミスが、からかうように笑う。
するとメティナの顔がボフッと赤くなった。
「ぶ~っ! そんな事ないもん! 全然大丈夫だもん!」
顔を真っ赤にして、両手をブンブンと振り回して抗議している。
か、可愛い。なんだこの生き物。ツンデレ小動物かな?
気がつくと、私の体は勝手に動いていた。
ぎゅっ。
「え? ……にゃ、何?」
「動きが可愛すぎて、思わず抱きしめてしまった」
「ぶ~っ! 私はそんな子供じゃないもん!」
「わかってる、わかってるよぉ。よしよし」
「わかってるって言いながら、頭なでて抱きしめないでよぉ~!」
じたばたと暴れるメティナがまた可愛くて、さらに抱きしめる力を強める。
うーん、柔らかくていい匂いがする。
「ユイ? 宿の中とはいえ、ちょっと注目を浴びてるわよ?」
冷静なリアの声で、私はハッと我に返った。
「え?」
振り返ると、通路の奥や階段の下から、他の宿泊客や宿の従業員たちが、私たちのワチャワチャしたスキンシップを、生温か~い目で見守っていたのだ。
「っ……!!??」
マジか。公開イチャイチャを見られてたの!?
一気に顔から火が出そうになる。
「もう~、ユイのバカぁ」
「ごっ、ごめん、ごめん! 早く部屋に入ろう!!」
私はメティナの手を引いて、逃げるように客室へと駆け込んだ。
あーもう、完全にやらかした!
その後、部屋のベッドにダイブしてしばらく身悶えしたあと、気を取り直して六人で夕食を食べた。
女将さんのご飯はやっぱり美味しくて、私のすり減ったメンタルを大いに癒してくれたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
私事で大変申し訳ありませんが、今後の投稿(更新)間隔に関する予定を活動報告に記載しておきます。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
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