203話 完全武装と、ざわつく男たち
宿の部屋に戻った私は、さっそく今回の岩登りに向けた装備一式を作る事にした。
普通のローブじゃ岩に引っかかって危ないからね。
まずはズボン。
激しい動きにも耐えられる黒色で七分丈のトレッキングパンツ。
うん、絶対にこれだよね。伸縮性も抜群で、動きやすさも完璧!
上着はどうしようかな。
本当はスポーツブラのみにするとプロのクライマーっぽくてカッコイイんだけど、さすがにその格好で町を歩き回る勇気は私にはなかった。
だから、スポーツブラに似たデザインをベースにして、通気性の良い白色のキャミソールを作ることにした。
ただ、身体のラインがハッキリ出すぎるのは恥ずかしいから、少しゆったり目のシルエットに調整。
でも、カッコ良さはどうしても捨てきれなかったから、背中側は大きく開いたデザインにして、クロスストラップでバックスタイルをスタイリッシュに決めてみた。
ついでに丈も少し短くして、おへそがチラッと見える絶妙な長さに。
靴は、ゴツゴツした岩肌の僅かな出っ張りをしっかり捉えられるように、足先に力を込めやすい白色の専用クライミングシューズを作成。
最後に、手汗を防ぐ滑り止めの粉末チョークを作りたかったんだけど、あいにく材料が上手く揃えられなかった。
仕方ないので、代わりに摩擦に強い頑丈なクライミンググローブを作って両手に装着した。
全てを作り終えて、完全武装した私は鏡の前に立った。
うん。完璧! めっちゃカッコイイ!!
え? お前は魔法使いだろって? そんな細かいことは気にしないの!
郷に入っては郷に従え、岩に登るならクライマーの格好をするのが礼儀ってものだよ。
そして約束の時間になり、自信満々の完全武装のまま商業ギルドに乗り込んだ私だったけど……なぜかギルド内ではすれ違う人たちからめっちゃ白い目で見られた。あれ? 何で?
「えっと、、冒険者ギルドから紹介されたユイさんで、お間違いないですか?」
「はい」
「あの、、魔法、、使い、、ですよね?」
「そうですが、何か?」
通された応接室には、困惑顔のギルドの職員さんと、今回一緒に薬草採取へ行く男の冒険者たちが四人いた。
でも、部屋の中はなんとも言えない微妙な空気が漂っていた。
皆、私の格好をジロジロと見てはヒソヒソと話し合っている。
冒険者ギルドからの太鼓判での紹介のはずなのに、これ、完全に信用されてないよね?
どう見ても気合を入れ過ぎた痛い娘にしか見えてないっぽい。
「・・・証拠を見せますね?」
言葉でダラダラ説明するより、実力を見せた方が早いと思った私は、無詠唱で周囲に数個の『ファイヤーアロー』を発動させ、空中にピタリと待機させてみせた。
部屋の温度が一気に上がり、炎がパチパチと音を立てる。
「「「おおおおおっ!?」」」
「凄ぇっ! !」
「おい、今無詠唱だったぞ!? しかも一瞬で複数展開だと!?」
ざわめく男たちに向かって、私は指を鳴らして炎をふっと消しながら質問した。
「これで、信用してもらえました?」
「は、はい! 大変失礼いたしました。こちらこそ、よろしくお願いいたします!」
――その頃、男たちの間では、私の魔法とは別の意味でざわめきが起きていた。
『おいトミ、トミ』
『何だよゲル? 今マキさんが今後の打ち合わせをしてるだろ?』
『そうだけどよ、あの子の格好、よく見てみろよ』
『何がだよ? 気合を入れ過ぎな気がするけど、岩を登るならああいう身軽な格好の方がいいのは確かだろ?』
『ちげぇよ。あの服、背中から見る限り、下着は着けてないよな?』
『当たり前だろ? 何言ってんだ、ああいう背中が大きく開いた服ならよくあるだろ』
『でも普通、あの手の服ってのは、胸の所にパッドみたいなのが入ってるだろ?』
『だから、そんなの当たり前だろ?』
『……多分、入ってないぞ? あれ』
『え!?』
トミはユイに気づかれないよう、顔の向きは変えずにそっと視線だけを彼女の胸元へと移した。
『うわっ! 本当だ!! 』
『な? な?』
『ああ、間違いない。動くたびにヤバい事になってる……』
『俺もさっきから、視線を逸らすのに必死なんだよ……』
そんな男子中学生みたいなやり取りがあった事など露知らず。
地形やルートの事前説明を受け終わった私は、馬に乗って彼らと共に意気揚々とヘリーカの現地へと向かった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
私事で大変申し訳ありませんが、今後の投稿(更新)間隔に関する予定を活動報告に記載しておきます。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
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