181話 目覚めと、殺意の理由
「先生、ユイは大丈夫ですか?」
「大丈夫です。脈も落ち着いているし、しばらくすれば起き上がれるでしょう」
「何があったのでしょうか?」
「過度な緊張からくる過呼吸でしょうね」
「そうですか……ありがとうございました」
医師が出て行き、部屋に静寂が戻る。
「緊張? そんな風には見えなかったけどな?」
「ああ、のんびりと王族達を眺めているだけに見えたよな?」
「そうね、私もユイちゃんが緊張しているようには見えなかったわ」
「私は緊張って言うより、抑えきれない殺意を感じたけど、リアはどう思う?」
「そうね、今にも魔法を放つんじゃないかと思ったわ」
「私には物凄く悩んでいる様に見えた。 前にも一度、同じような事があったし」
ブルーナは言霊召喚の事だけを隠して過呼吸を起こした時の事を話した。
「そんな事があったのね」
「でも、今回はいったい何が・・」
何となく皆の声が聞こえて、私は起き上がった。
「んん……」
「ユイが起きたみたいだっ!?」
「ユイ!」
「ユイちゃん!」
「前! 前がはだけているから!」
え? 何? 私は自分をみた。
「きゃあああああああああ!!」
自分で緩めたブラもドレスもはだけていて、上半身を隠すものが何もなかった。
「悪い!」
「すまない!」
再び、男性陣は慌てて後ろを向いて謝罪を口にした。
「見られた? 見られたよね?」
今すぐ逃げ出したいのをグッと我慢して、ブラのフックを止めてドレスも着直した。
「もう大丈夫です」
「そうか?」
「大丈夫か?」
「ごめんなさい、ご迷惑をおかけしたみたいで・・」
「そんな事はいいのよ、体はもう大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「・・ビオラさん」
「どうしたの?」
「二人だけで話がしたいです」
「「 ユイ!? 」」
「ごめん、今はまだ話せない。ビオラさんに判断してもらうよ。 皆、心配してもらっているのに、ごめんなさい」
「うん、わかった」
「じゃあ私達は外で待っているね」
「ビオラさん、後はお任せします」
「ええ、わかったわ」
申し訳ないないけど、全員外に出て行ってもらった。
それを確認してから、私は**「結界装置」**を作動させた。
「これは結界?」
「はい、結界の外からは、この中を見る事も聞くことも出来ない結界です」
「そう、それほどの内容って事ね。じゃあ、話してくれる?」
「はい」
私は震える声で、さっき見た光景と記憶の照合結果を伝えた。
「この前話した2人目のヴァントス盗賊団の幹部を倒した時の事ですが……洞窟を出て、その幹部と親しげに話していた騎士っぽい人が、王様の右側に立っていた第二王子でした」
「なんですって!?」
「あと、その王子の横にいた騎士ですが・・」
「第二騎士団長ゲネルね」
「その騎士は・・・」
私は再び流れ出た涙を拭いながら、その事実を口にした。
「その騎士は、お母さんを犯して殺した、盗賊の団長だと思っていたヤツでした」
「!!!」
私に近づいてきて、ビオラさんは私を抱きしめた。
「ごめんね? 私の為に、魔法を放つのを我慢してくれてたのね。ありがとう。 私に教えてくれて。ありがとう」
ビオラさんの体温と優しい言葉に、少しだけ心が落ち着いた。
「黒い噂は数えきれない程あるけど……ここまでバカだったとはね。絶対にあのバカ王子と騎士団達を裁いてやるわ!」
「はい、お願いします。もし、戦闘になるなら私にやらせてください。 お母さんの仇を討ちたい」
「ええ、わかっているわ」
「それに気づいた事もあります。最近、盗賊を殲滅することが多かったけど、何か凄く違和感があったんです。その正体があいつらでした」
「お母さんを殺した盗賊団のヤツらは、それっぽい服装だったけど、汚れていないし、統一した格好だった」
「本物の盗賊団は統一した服なんて着てないし、薄汚れていた」
「それに、あの場所に盗賊団が出るのがおかしいってマティルダさん達が言ってましたし、お母さんが狙われたんじゃないかとも言ってました」
「なるほど、そういう事ね」
「やっぱり第二王子も関わっているんですか?」
「ええ、間違いないわ」
ビオラさんは深刻な顔で語り始めた。
「前に教えた通り、この国の王様の血筋で継承権を持っているのは二人の王子のみ。それぞれに子供がいたけど、両方とも殺されているでしょ?」
「証拠はないけど、それぞれの王子がやったのはわかりきっている事。その殺し合いの連鎖はいまだに続いているから、両陣営の有力者は軒並み死んでいるわ」
「昔から国王様もそれはわかっているけど止められない状態なの」
「それで、一度、国王様が王家の血筋以外の者に国を譲ろうとした事があったの」
「それが国民的な人気と実力のあったユヅキさんなのよ」
「え? お母さんが?」
「正確には、まだ他に理由はあるんだけど、ごめんね? これ以上は言えないの」
「いえ、大丈夫です」
「まあ、ユヅキさんは、それを断って故郷に帰っちゃったんだけどね?」
「え? 父が死んだからじゃないんですか?」
「まあ、他にも色々と複雑な事情があったのよ」
「そうだったんですね」
「まさか! お母さんは実は国王様の隠し子だったとか?」
「・・・ユヅキさんのご両親は故郷にいるでしょう?」
「そんな事を言ったら怒られるわよ?」
「ごめんなさい、冗談です」
「ふふふ、でも少し元気が出てきたみたいで安心したわ」
「はい、もう大丈夫です。後の判断はビオラさんにお任せしますね?」
「ええ、わかったわ」
私は結界装置を解除して、皆を呼びに行った。
いつも読んでいただきありがとうございます。
今後の投稿(更新)間隔に関する予定を活動報告に記載しておきます。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
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