170話 言霊召喚
私が犯される、まさにその瞬間、大きな音を立てて扉が吹き飛んだ。
そして飛び込んできた人影は鬼神と化したマニカだった。
マニカは既に体中に傷を負っていたけど、その圧倒的な力で幹部4人を瞬殺した。
私の所までたどり着いたマニカは私を押さえつけていた男達を一瞬で屠った。
だけど限界だったのかマニカは倒れ掛かった。
そこにダンモが襲い掛かったけど、リアがその剣を防ぎ更にベンモの首を跳ねた。
残りの幹部と副官もいっせいにリアへ襲い掛かったけど、全て返り討ちにしていた。
でも、さすがに二人とも限界に見えた。
このままだと、物量に押されてリアとマニカが死んでしまう。
「リア! マニカ!」
「「 ユイ!? 」」
「大丈夫? ・・その、私達は間に合った?」
「うん、ありがとう。 お陰で犯されずにすんだよ」
「そっか、よかった」
「じゃあ、もう少し我慢してね? ユイを守りながら入口へ移動するから」
「カイン達が退路を確保しながら、待っているからもう少しの辛抱だよ?」
私はマニカとリアを見た。 無理をしているのがよくわかった。
「私は大丈夫だから、私を置いて先に逃げて?」
「そんな事するわけないでしょう?」
「そうだよ、助けに来たんだから」
私は流れそうになる涙を我慢しながら2人に伝えた。
「このままだと、二人が死んじゃうよ」
「大丈夫よ?」
「二人に戦う力がもう無いのは私でもわかるよ? だから逃げて!」
2人の傷は致命傷とまではいかなくても、相当深い傷なのはわかった。
「血が、血が流れ過ぎだよ。 本当に死んじゃうよ」
「ユイ?」
「リーニ達がいる所まで頑張れば良いだけだから、私達を信じて?」
「そうそう、ユイのピンチを知ってエルフの二人も助けに来ているよ? メティナとテミスって言ってた」
「メティナとテミスが・・」
「うん、友達を助けたいってついて来た。それは私達も同じ。 だから一緒に帰ろう」
「マニカ、リア。 うん、わかった」
私は、リアとマニカに守られながら、ゆっくりと出口へ向かって移動を開始した。
でも、敵の攻撃も激しさを増してマニカ達は満身創痍だった。
魔法の触媒があればマニカ達を即座に癒して戦えるのに。
魔法が使え無いと、私は何も出来ない。
力が欲しい。 私に戦う力があれば友達を救えるのに。
力が・・・・ 私にも**【彼】**の様な武の力が欲しい。
そして、私は無意識に**「言霊召喚」**で【彼】を呼び出した。
前にブルーナと二人で実験をした時は私以外にも見える生前のシルエットが浮かび上がった。
そして、10分ほどの会話が可能だった。
私は【彼】の知識で、この場をしのぎ切る何かを期待した。
でも、言霊召喚に失敗した? 今回は何も起こらなかった。
何で? 何でよ?
すると、頭の中で声が聞こえた。
『君が俺の魂を継承したんだね?』
私は心の中で返事をした。
『はい、そうです、 **大蓮 結真**さん。 私の名前はユイです』
『ああ、わかっているよ。 俺も呼ばれて、君の人生を一瞬で理解したから。君が俺の人生を理解したようにね』
『だったら、この場をしのぎ切る知恵を下さい』
『ここで必要なのは知恵では無くて武の力だよ?』
『わかっています。でもあなたは、あの世界で何でもできた天才だったじゃないですか。その知識から何か無いですか? 私は友達を助けたいの』
『君の力で助けれるハズだよ?』
『今の私には無理なんです。魔法を発動する為の触媒がない』
『それは、本当に必要なのか?』
『え?』
『あれは、歩き方を知らない赤ちゃんに使う歩行器みたいな物。君に本当に必要か?』
『そんな事をいきなり言われても・・』
『君なら直ぐに感覚をつかめるはずだ。最初は君が一番適している光魔法で感覚を掴めばいい。初級の回復魔法を使って、彼女達の傷を癒してあげるんだ』
『もし、本当にそれが出来たとしても今のピンチは変わらない』
『・・俺を信じる事は出来るか?』
『私もあなたの人生を知っているのですよ? 嘘をつく人じゃない事ぐらいわかります』
『わかった。 では・・・』
私は意識を現実に戻した。
やれる。 私なら出来る。 自分の魔力を感じるんだ。
私は集中して体中に流れる魔力を感じ取った。
「回復!」
見慣れたエフェクトが現れてマニカとリアの傷を癒した。
「これは? 回復魔法?」
「ユイ? ユイが使ったの?」
「うん、そうだよ。 後は私が殺るから二人は安心して休んでて?」
「ふふっ、魔法が使えるユイに敵はいないもんね?」
「そっか、じゃあ、ちょっと休ませてもらおうかな」
「うん、任せて」
2人は壁にもたれて眠りについた。
ごめんね、二人にはちょっと嘘をついちゃった。
本当は、まだ回復と強化以外の魔法は使えないから。でも、
『じゃあ、お願いしますね?』
『わかった』
『身体強化の魔法は使えたか?』
『はい、既にかけています』
『よし、後はまかせろ』
彼が私にした要求は、2つ。 自身への身体強化の魔法の付与。
それができたら、私の体を一時的に【彼】に引き渡す事。
それで彼の武力をもって盗賊を殲滅してくれるとの事だった。
「さて、やるか!」
いつも読んでいただきありがとうございます。
私事で大変申し訳ありませんが、今後の投稿(更新)間隔に関する予定を活動報告に記載しておきます。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
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